【マンガ感想文6】世界の歴史、文化、社会を知るマンガ五選
漫画はときに世界の情勢を知ることができる、優れた教科書となる。そのなかでも、私にとって重大な情報源となっている国際的漫画を5つ取り上げる。
1.ゴルゴ13
いわずとしてた超人気超長編マンガであるゴルゴ13は、世界各国に飛び回って依頼を執行する殺し屋である。彼の行くところは常人では行かないような危険地域やローカルな国も多い。南極にも数回行っている。もし彼のパスポートがあれば(多分いつも偽造パスポートを使い捨てているだろうが)、ぜひ何国行っているか見てみたい。
彼の依頼の裏には必ず世界経済と裏社会の対立が存在する。政府、テロリスト、マフィア、国際企業、軍隊、麻薬組織など様々である。それらはときにゴルゴ13の依頼人となり、ターゲットともなる。その対立は現代社会の裏と表に関わる重要な情報が関わっている。
ゴルゴの仕事は極めて慎重で、彼自身自分を臆病だと表することがよくある。常に自分が生き残るために幾重にも重ねたバックアップを用意し、依頼人すら全く信用しない。そんなゴルゴの仕事観は個人的に尊敬に値するとすら考える。
2.勇午
勇午はプロのネゴシエーター(交渉人)として世界の紛争の交渉にあたっている。その交渉内容は常人なら不可能と言えるどころか、依頼の意味すら抽象的で意味不明なものが多い。例えばオーストリアでは処女受胎した少女の父親を探せと依頼されたり、香港で子犬の像を譲り受けろという依頼だったりする。
しかしその依頼は一国はおろか世界全土を危機に陥れるような極めて影響力の大きい依頼である。その依頼を達成するために勇午は平然とマフィアの抗争を引き起こしたり、テロリストの作戦に協力し、核兵器の発射で軍を脅迫したりする。
勇午はいわば銃を持たないゴルゴ13なのかもしれないが、ある意味その影響力はゴルゴ13を超える。その国の情勢を理解し、協力者を探し当てて交渉を実現してきた。しかしそれによってその国の内情に深く関わり、その世界を知るきっかけを作ってくれる。アンダーグラウンドの世界の奥深さを知るにうってつけのマンガである。
勇午も世界中に行っており、バングラディッシュ、インド、香港、アメリカ、イギリス、フランス、ベトナム、ロシアなど様々である。毎回その国のマフィアやら軍やテロリストに捕まって拷問を受けるのが典型的パターンになっている。
3.島耕作シリーズ
日本一有名な島耕作であるが、最近とうとう会長を辞職して相談役に退いた。課長時代から結構海外で仕事もしていたが、取締役に就任したときに中国担当役員となり、その後インド、アメリカなど海外担当業務を歴任する。それに伴って作中で海外情勢について詳しく説明される。
社長になってからはBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)のうちブラジル、ロシアにも歴訪している。こちらでも各国の簡単な情勢や国民性、経済情勢について解説がされている。もちろん各国の情勢は日々変化しているので今読んでは少し古い情報であるかも知れなが、それでも国民性や地理や宗教はあまり変わっていないので大いに参考になる。
もちろん最新のビジネスや国際情勢、技術的情報についてもわかりやすく書かれている。ビジネスを学ぶ上で最も適したマンガと言える。
4.マスターキートン
英国人の母と日本人の父を持つ平賀=キートン・太一は保険調査員兼考古学者で、元英国特殊部隊(SAS)の軍人という特殊な経歴を持っていた。彼は仕事でもプライベートでもなぜかトラブルに遭うコナンくんのような存在だった。しかし元軍人としての身体能力と経験、そしてとっさの閃きによって生き残ってきた。
舞台となるのは東西冷戦が集結して間もない、ヨーロッパを中心に活動している。そこにはまだ東西冷戦の傷跡が各所に残されていた。東西の経済格差、それに伴う怨恨、未だ再会できない家族、冷戦時代に残された悪しき遺産などは解消されていなかった。その現状がリアルに描かれている。
これ以外の作品と違って、マスターキートンの主題は人々の生活と感情であると思う。過酷な環境で生きる人々がいかに生き残り、自分たちの幸せと生活を守る姿が健気であったりする。
5.沈黙の艦隊
日本初の原子力潜水艦シーバットは試験航海中に脱走し、独立国家やまととなることを宣言する。世界が困惑と嘲笑をするなかで、世界各国はやまとを巡って動き出す。やまとはアメリカ海軍の包囲網を抜け出し、深い海の底に潜伏する。
世界の軍事的緊張と駆け引き、核という絶対兵器の取り扱いの困難さによって、たった一つの原子力潜水艦に世界は混沌に包まれ、変革を迫られる。その背景にはやまとの絶対的軍事力があった。誰もやまとを撃沈できないことが最大の問題でもあった。
国際政治の難しさ、核兵器の行く末、各国の政治的思想の違い、国際連盟の必要性などを深く考えさせる作品である。
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