これって片思いだったのか委員会
このまえ、SNS上で高校同期のひとりのアカウントを見つけた。察した感じ、彼女はアカウントを作りたてのようだ。
所謂「友達かも」のリストの一番上に彼女の顔が突如出てきてから一週間、フォローリクエストを送るかすごくすごく迷っていた。
向こうからリクエストが来ればいいのになあなんて思いながらも、そんなことは無く、そのことがなぜだかもどかしかった。
結局、意を決して自分からリクエストを送信した。
何年も同じ学び舎にいたのに 久しぶりのやり取りが「友達リクエスト」ってなんだか変な感じ...なんて思いつつ、リクエストの承認を待ってる間はずっとそわそわしてたし、自分から送ったにも関わらず恥ずかしくなって、1日に5回くらいはリクエストを取消しちゃおうかなんて思ったりもした。
それくらいびくびくしてたものだから、通知ボタンがポップアップして彼女からリクエストが承認されているのに気づくと、私は思わず足をばたばたさせながら「ヴワ〜!」と訳わからない喜びの悲鳴を上げた 。
◆
高校の頃、私は彼女に、特別な思いを持っていた感覚がある。いや、頭はまとまってないけど、この際だからきちんと言葉にしてしまおう。
私は彼女に、特別な思いを持っていた。
親友として?残念だけど親友では無かった。毎日話すかどうかくらいの関係だったから。仲の良い友人と呼ぶのも危うい。
仲間として?たしかに同じ学校で過ごした同期という意味では仲間、なのかもしれない。でも卒業から何年も経った今になってまで、仲間と言えるほどの付き合いだったかな、とは思ってしまう。
憧れとして?クラスでもワイワイする人たちと一緒にいる方だったし、それなのに人当たりはいいし自分には無いものを持っているように思えて、気にはなっていた。
そう、気になっていた。
◆
彼女のことを仮にNとする。
Nは、クラスでもワイワイした人たちと一緒にいる方だった。
クラス内で盛り上げタイプの子達が大きめのグループになって固まる場面があるとしたら、Nはだいたいその中にいることが多かった。
ただし、その中心の人物ってわけではなく、あくまでもそのメンバーの一人。校内で評判の問題児とかでもなかった。
Nは、人当たりが良かった。
比較的誰に対しても余計なステレオタイプを持たずに話していたと思う。「グループ意識」をやたらに持っている印象はほとんどなかった。
趣味が合う人と話し、誘われたら一緒に楽しむし、面白いと思った人と楽しそうに話す。傍から見た感覚だが、そんな人だと感じていた。
在学中、私とNとは2回同じクラスになったことがあった。でも、あくまでもNにとって私はクラスメートの一人で、私もNをそのように思って接していたと思う。
実際、自分はクラスのワイワイには乗れないことが多かった。Nと趣味が合うことはなかったし、何か誘った覚えもない。
何をきっかけとしてか忘れたけれど、同じクラスになったとある日に私のことをNが面白がるようになって、そこから校内での会話数が少しだけ増えたように記憶している。たしか、私が友人と話していた時の言葉のかけ合いをNは時々見ていて、たまに声を掛けてくれたように思う。
ただ、「会話が増えた」といっても、劇的に増えたわけではない。
例えば登校時に交わす「おはよう!」とか、帰りがけにすれ違った時に言う「バイバイ!」をレベル1と設定して、
レベル2の「挨拶以外の会話」、例えば自分が何かしたときの「ありがとう!」とか、さらにはレベル3の「その日の授業までにやらないといけない宿題を確認する」、なんてフェーズに入れたらもうそれでその日はもう大優勝、って感じだ。
いやはや、低いレベルのコミュニケーションすぎる。
そもそもこのレベル1・「挨拶」が毎日できるかどうかで脳内のポイントカードにある「デイリーチャレンジ」達成がかかっている。
ほかにも、自分からNに挨拶や会話を促せたり、会話の中で笑顔を見ることができたり、さらには別の友人とふざけてる時にNが通りかかってきて笑顔とツッコミを引き出せたらボーナスポイントを自分に与えていた。
ボーナスポイントが加算された日の帰り道は、心の中でガッツポーズを高らかに上げながら、心の中なので上げ続けたまま、ルンルンで通学路を歩いていた。
そんなわけで、私がNに関して何かする(か、しない)こととしては、
「ただ見てるだけor気にしない」が7割、「Nと話すこと」が2割 くらい だった。
じゃあ残りの1割はというと、Nに対する自分のスタンスを、心の中で考えていた割合となる。
具体的にどんなことを考えていたか。
例えば、このnoteはじめの方で、「Nのことを『憧れ』だと思ってるのだろうか」と書いた。
辞書的意味での「憧れ」ってなんだったか、ふと気になって検索する。
私にとってNって、辞書の定義通り「理想とする人物」なんだろうか。
誰にでも分け隔てなく接しているように見えるNに対して、すごく良い人だな、流石だな、と思うことはあった。色んな人と話せて、その時の顔が自分も相手も楽しそうで、幸せな気分になる。
またNは部活もやっていて、その姿もかっこよく感じていた。同期とはすごく仲が良さそうで、その団結力というかチーム性は、ただ教室内にいる私にも見えるくらいのものだった。Nが持っている(ように見える)部活仲間との友情や絆のようなものを、自分の入っている部活では当時全く見いだせなかった。
これらを踏まえると、Nの人との接し方、またNと同期たちとの関係は、自分にとって間違いなく「憧れ」だったと思う。
でも、Nの存在、またNに対する思いが「憧れ」、つまり「Nのようになりたいという理想」だという感情はそこまでなかったような気がする。
というか、憧れるって「思い焦がれる」っていう意味もあるの?知らなかった。思い焦がれるってなんだ。
ま~た曖昧な言葉だ。
でもまさかこれって要するに、あの、あいうえおで言うとカ行の5番目とア行の2番目にある二文字のこと?
えっほんとに?そんな訳なくない?私がNのことを?
元々Nのことは、クラスメートとして、友達としては、気になる存在だった。教室にいるか目で追っちゃうし、いるとちょっと視線がそっちによっていた。見ててかっこいいし、笑った時かわいいし、みんなに愛されてて素敵だし。ほかの友達やクラスメートと比べて、確実に目で追ってしまうなにか不思議な力。
…
いやいやいやいやいや。そんなわけないでしょう。
きっとあれだ、ビビりな自分があまり話せないと思ってたタイプのクラスメートと話せて勝手に嬉しがってるって、それだけのやつだよね。
思い上がり思い上がり。うんうん。わかる。たしかに。そうそう。同感。
自分の思いつくすべての肯定ワードを出し尽くしたところで、この脳内のシンキングタイムは終わる。
そして次の日また学校に行って、脳内の「Nポイント」への加算がされたとたん、帰り道に友達と別れてからNについてまた考える。
この
「Nと学校で何かしら関わる」
→「Nポイントが貯まる」
→ 超嬉しい
→「『えっ、こんな嬉しがる私って何....?』という葛藤」
→「まあとりあえず放っておこう!気にしない!」
→「翌朝、Nと学校で何かしら関わる」
…というループは、その感情の濃淡はあれど卒業までずっと行われた。
◆
◆
このように、逃げ腰・自分の気持ち分からず分かろうとせず・一歩間違えればストーカー目線まっしぐらな私だったが、一気に自分の思いを改めて考えさせられ、辛くなった出来事がある。
それは宿泊行事で、たまたま、本当にたまたまNと同じ部屋になった時のことだった。学校の振り分けによって、私の友達と、Nが仲良くしている友人3人くらいと一緒だった気がする。
その日の夜、私は慣れない宿泊場所ということもあって眠れなかった。
消灯時間を過ぎ、さっきまでこそこそ一緒に話していた友達からは声が聞こえなくなった。私は布団をかぶったまま、目を開けてじっとしていた。
「N、起きてる?」
Nの友人が、ささやき声でNに声を掛ける。あ、起きてる人もいるのね。
「起きてるよ」
Nの声。あ、N、起きてるんだ。
自分も起きてるってここで言ってみようかな。でも、ちょっとここはやめとこうかな。なんかこの場の雰囲気よく分からんし。
というか消灯とともに忘れかけてたけど、ここにいるメンバー構成、なんかすごいな。珍しい人たちがみんなで一つの部屋にいる。
「夜っぽい話しようよ。恋バナしようよ」
まじか。夜だしってことで恋バナ始まるんか。
なんだかこのまま黙って聴いていると、盗聴してる人みたいで気まずいな。
N「いいよ。●●(Nの友人の名前)の話聞きたい」
□「私も起きてるよ」
N「あ、□□!やった~」
●●「私の話~?いやいやみんなで話そうよ。ね??」
まずい。なんか盗聴の度が増してゆく。ていうか気づいたら、Nとその友達のみんなが起きているっぽい。
この時に私がこの場を乗り切るための選択肢は2つ、
①思い切って会話に参加する か、②すべてを無にして気合で寝る である。
よし、②でいこう。参加したい気持ちもあるけど、私からできる恋バナとか無いし、経験話すのとかも無理だし、Nの友達とかNにそれを話したところで、みたいなとこあるし。ここはすべてを無にして気合で寝よう。
…てかこの部屋にいる●●は恋愛の話とかすきそうだな~ 。 授業中、この子がマンガ読んでて怒られてるの見たことあるような気がするな。
きっと本人も色々恋愛してるのかな、あ~でも●●の好きな人ってどんな人なんだ? 恋愛漫画読んでる人ほど純度の高い恋愛してるのかな、それは気になる。
ところでNは恋人なんていないよな、なんかそんなこと誰かが言っていたような気がするし。校内でも噂とかきっと無いものね
――あ"ぁ" だからそんなことどうでもいいんだって。ムシムシ。
布団を深くかぶって、目を閉じ、羊を数えた。いち、に、さん、よ
…寝れない。まずい、完全に寝るタイミングを逃した。
えーーどうすればいいんだ?ここで起きてるって食いついたらなんかどうなの?仲良しな友達同士の話として確立されてないかこの空間?
とはいえ深夜の消灯後の部屋で、迷いは許されない。気づけば私は、禁断の選択肢である ③布団をかぶって耳だけ参加する をアンロックしてしまった。
●●「Nの話が私は聞きたいな」
N「え!やだよ~」
●●「もうこの際だからこうしない?彼氏いる人、いたことある人はせーので手挙げよう(にこにこ)」「いくよ?せーの」
ーー
N「いるんだよね、彼氏」
◆
掛け布団の端をぐっと握りながら、布団の真ん中に自分の頭を入れたまま、私はじっとしていた。Nのひとことを反芻するので精いっぱいだった。
その後の彼女たちの数分間の会話も、聞こうという気はないのに勝手に自分の耳が取り込んできた。
勝手に聞いていてしまってごめんなさいという気持ちもあって、この時ほど自分が地獄耳であることを反省し、後悔したことはなかった。
そして、Nとその友達さえも寝静まったころ、私は布団の中にくるまって目から出てきた涙を拭いていた。
どうして涙が出てきたのか、自分では全く分からなかった。
心ではわかっていたけど、言葉にはしたくなかった彼女への思いが、目から涙という形で溢れたのかもしれない。
私が脳をフル回転させて考えていたNとの関係値の理想形は、「Nの恋人」というポジションだったのだろうか。そうなの? こんなに憶病になってたのに?そんな関係値でもないのに?解決することのない疑問が止まらずに湧き出る。
でもNの彼の話を聞いて、なぜだか知らないけれど、悔しい気持ちになった自分がいた。これは紛れもない事実だった。
その時の私には、音が出ないように、同じ部屋の人にばれないように、ただ泣くことしかできなかった。ぐちゃぐちゃに入り混じった感情の中で我慢できずに目から出たしょっぱい涙が、そっと頬を伝っていく。
心臓がずんと重くなった感じがして、その日はずっと眠れなかった。
◆
私の圧倒的に一方的な思いは、その後卒業までこじらせ続けた。
あの一夜のできごとから少しだけイベント休止していた脳内スタンプカードキャンペーンも、少し経つとまた復活していた。
以前ほどに強い思いは持たなくなったけど、それでもNと話したり、目が合うとうきうきするし、何かしら関わる時間ができると楽しかった。
でも卒業式ではたぶん特に話さなかったし、成人式は「久しぶりー!」とお互い言ったくらい。いや、言ったっけな。
今回久しぶりにネット上でNの存在を感じて、胸がざわついた。ざわつきとともに、色んな記憶が蘇ってきた。
高校の時のひとりで勝手に作ってた淡い思い出。あの夜の涙。その後のあっさりとした日常。
今、Nに対する思いは止んでいる。どんな状況でも受け入れられる。
そのうえで振り返ると、当時の私は、Nに対する自分の思いは「定義するものじゃない」と考えていたんだと思う。定義しようと思えばできるかもしれない。けれど、踏みとどまっていた。
なぜ?
小さなコミュニティで、はじめから結末が知れていたから?
この一件で自分のセクシュアリティを規定しちゃうことになるんじゃないかと怖かったから?
若気の至りだしこの感情もいずれ消えるだろうと自分を客観視してたから?
23歳も半ばになって、なぜだか高校時代のことを思い出すことが増えた。
自粛中でいろいろと暇だからなのかもしれない。でも、Nのことまでは頭に出てきていなかった。
そんな時に、SNSでのNの登場だ。いろいろ思い出しちゃうじゃないか。
私はNに、特別な思いを持っていた。
当時の私にはこの感情が何かは分からなかったけど、今は少しだけわかるような気もする。
だけど今はあえて、10代の私を尊重して、まだこの感情を言葉にはしないことにしておこうと思う。きっと、これからも。
◆
<今日のひとこと、というかつぶやき>
自分自身のことをテーマにしたnoteのなかでも、珍しくすぐに書き終えてしまいました。でもこれって共感が生まれるものなんでしょうか、今のところ自分自身の羞恥と、文章化しきったという少しの思いしか残ってません。
好きでは無い言葉ですが、自分語りにしては「隠キャ」感がすごい話になってしまいましたね..........。そんなことを思っていたら「書き終えたまま投稿日を延ばす」という自分のなかでは珍しい状態になりました。
”これって片思いだったのか委員会”会員のみなさん、次回の全体会議までにこの件のとりまとめのほうよろしくお願いします。
これからもサイコーな音楽を聴いてnoteにします!よろしくお願いしますᕦ(ò_óˇ)ᕤ