見出し画像

【ADVゲームレビュー】パラダイスキラー / Nintendo Switch(2020)

パラダイスキラー / Nintendo Switch

オープンワールド殺人ミステリーと銘打たれたイギリス発のインディーゲーム。


あらすじ



舞台は、数千年ごとに再生するパラダイス島。
エイリアンを崇拝するシンジケートたちは、いつの日か神々を復活させるべく完全なる島の構築を目指しているものの、24号島も悪魔による腐敗が進んでいた。
今度こそ完璧なものになると思われるパーフェクト25への移住計画を遂行する彼らであったが、再生の前夜に議員が殺害されてしまう。
犯人捜しのために亡命先から呼び出されたのは、"捜査オタク"のレディ・ラブ・ダイ。
彼女は、殺人犯を見つけ出し、パラダイスを蘇らせることができるのだろうか。



概要/感想(ネタバレなし)


あらすじを見たところで、まったくピンとこないストーリー。
神や悪魔が実在する世界らしいのだが、自分たちが人間なのか別の何かなのかもわからない状態でオープンワールドに放り出される心細さといったら。
チュートリアル的な指示があるわけでもなく、完全に手探りでどうやって物語を進めていくのかを考えていかなければならず、最初の数時間は世界観を理解するのに必死。
この辺りは最後まで完全に理解できたわけではないものの、気が付いたら受け入れているから不思議なものである。

メインテーマは、議員の大量殺人の犯人捜し。
それに加えて容疑者として捕まっていたヘンリーの脱走にはじまるいくつかの謎や事件があり、それぞれに犯人と証拠を紐付けていく。
証拠は関係者からの証言や現場捜査で見るかるものも多いが、マップを探索する中で拾うものも存在し、たまたま視点を変えなかったら見つけられなかったというものもしばしば。
二段ジャンプを駆使しないと辿り着けないポイントがあるなど、アクション要素も含まれていて、ミステリーゲームとしてはかなり異質な作品と言えそうだ。

何かをどうかすれば割とどこでも行けてしまう自由度と、アパートや住宅が単なる背景でなく探索可能な領域になっている作り込みは圧巻。
散々探索し尽したと思っていたポイントにも、まだまだアイテムが隠されているから気が抜けない。
それでもシステム上のネックとして挙げるなら、マップの使いにくさには言及しておきたい。
ざっくりしたエリアマップしか提示されないので、目的の場所に目印を置いたり、未踏の領域はどのあたりなのか等の確認は不可能。
車で移動できるポイントはあるものの、アイテムを消費しなければいけないので、基本的には歩き回る以外にやり残しを調べる術がないのは、それが本質ではない以上、不便と言わざるを得ないか。
そこさえ改良できれば、謎解きミステリーゲームの新境地として、めちゃくちゃポテンシャルを感じるシステムであったのは間違いない。



総評(ネタバレ注意)


ストーリーが全然頭に入ってこないのに、犯人当てって出来てしまうのだな、というのが率直な感想。
ローカライズが時折怪しいのは仕方ないとして、事件ごと、容疑者ごとに収集した情報をまとめて、推理のサポートをしてくれるシステムは極めて優秀だった。
証拠の集まり方によって、物量的に犯人候補が絞られ、かといって、そこからの判断には迷う余地も残されている。
推理モノとしてのバランスが、尖ってはいるが、なかなかどうして絶妙なのである。

もったいないのは、裁判における適当さ。
裁判の開始タイミングがプレーヤーに委ねられている=必ずしも材料が揃ってなくても良いというのは画期的で、先に見つかった情報に偏りがあれば、ミスリードしてしまうこともある。
これを上手く使ったシナリオ作りなんかも出来た気がするのだが、すべての事件の裁判を最後にまとめて行ううえに、一度スタートしてしまえば、証拠が不十分でもなんとなく次に進んでしまうシステムの制約によって、結局は画一的なエンディングへ。
せめて、すべての謎への答えが合っていたら、トゥルーエンドぐらいは用意してほしかったというのは僕だけではないはず。

とはいえ、攻略サイトが溢れている現代においてもヒントがあまり落ちてこない海外発のインディーゲーム。
ノーヒントで目的を達成できたときの爽快感や、ふらっと入った横道で未開のルートを発見したときのワクワクは、クリアまでの導線が引かれた現代型の新設設計では味わえない魅力なはずだ。
それにしても、探索中は実質的に不死身のキャラクター。
上空の世界から落ちても平気なのにも関わらず、うっかり建物の屋上から足を踏み外したときにドキッとしてしまうのは何故なのだろう。

#全力で推したいゲーム


この記事が参加している募集

#全力で推したいゲーム

13,678件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?