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【ADVゲームレビュー】AI: ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ / Nintendo Switch(2022)

AI: ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ

「AI: ソムニウムファイル」の続編となるシリーズ第二弾。



内容紹介


最初に【右側】が発見されたのは、今から6年前のことだった。
中心からまっぷたつに切り裂かれた死体……。
当時どれだけ捜索しても、もう片方が見つかることはなかった。

それから6年後、行方がわからなかった【左側】が発見される。
時空を越えて現れた半分の死体……。

それはまったく腐敗しておらず、まるでついさっきまで生きていたかのようだった。
特殊捜査班ABISの新人捜査官であるみずきと龍木は、パートナーの眼球型AI――アイボゥやタマとともに、過去と現在、夢と現実を行き交いながら、この【ハーフボディ連続殺人事件】の真相を解き明かすべく捜査を始める。

スパイク・チュンソフト


解説/感想(ネタバレなし)



警視庁特殊捜査班・先進式人脳捜査部隊(ABIS) には、Psyncerと呼ばれる捜査官がいて、左目を失う代わりに眼球型の自立制御AIを装着。
AIを駆使したチートな捜査ができることに加え、対象者の夢に入り込み、潜在的なヒントから語られない真実を導き出す能力を得る。
捜査パートと、夢の中に入り込むソムニウムパートに分かれて真相に近づくゲームシステムは前作を踏襲。
本作ではPsyncerが増員されていて、ルーキー捜査官の龍木とAI・タマのペア、前作の事件を経てABISの捜査官となったみずきと、前任の伊達から引き継いだアイボゥのペアがW主人公。
子供だったみずきが、左眼を失った捜査官として登場するのは、なかなか衝撃的だ。

本作のテーマになるのは、「ハーフボディ連続殺人事件」。
クイズ番組の生放送中に、とある人物の右半身が出現。
当然、番組はパニックとなるが、左半身が見つかることはなかった。
その6年後、遂に左半身が姿を現すのだが、死亡推定時刻はわずか数時間前で、冷凍等の痕跡もなし。
最初に右半身が発見された時系列と、6年後に左半身が発見された時系列とを行き来する形で調査を進めながら、事件の真相を明らかにするのが最終的な目的だ。

複数のルートに分岐するだけでなく、時間の切り替わりや主人公の交代などもあるので、かなりの情報量になるのはご留意を。
もっとも、この情報量の多さが最終的には面白さに繋がっていくので、むしろ期待に応えてくれているという感覚。
猟奇的な殺され方であるのは前作同様だが、切断面が床と接しているせいか、左眼をえぐり取られていた前作ほどグロテスクな印象は受けないかもしれない。

ゲームシステムについては、ソムニウムパートが大幅に改善。
その中で何をするか課題が示されるようになって、パズルや謎解き、その他色々と仕掛けのバリエーションが増えている。
理不尽な選択問題に答え続け、やってみないと何が起こるかわからない前作のソムニウムパートのほうが混沌とした夢っぽさはあったのかもしれないが、ゲームとして飽きさせないほうが大事だろう。
一方で、QTEはシビアすぎるか。
ちょっと力が入るとスティックを押し込んだと判定されてしまい、ミスに。
ミスしたところからではなく、イベントの最初から何度もやり直すことになるのは、心が折れかけた。
イージーモードも用意されているので救済策は用意されているが、余計なところで躓いてしまっている感が拭えないので、もう少し工夫があれば。



総評(ネタバレ注意)


ネタバレを含むので前半では触れなかったが、シナリオについて。
まず、前作をプレイしていなくても最低限のネタバレを避けるために、序盤にクイズが出題される。
ここで間違えてしまうと、未プレイ者としてネタバレを含む会話がカットされてしまう仕様になっていて、記憶違いでネタバレなしモードでプレイすることに。
自分のせいではあるのだが、どうして伊達が伊達として存在しているのだろう、という疑問符が消せないままでいた。
(途中でやり直して、そういう設定なのね、と納得したけれど。)

さて、これもあれも伏線だったのか、と驚かされる第二弾。
まさか、みずきの怪力に根拠があったとは。
第一弾で人気が出て、主役に抜擢された結果だと思いきや、おそらく最初から構想があったのだろう。
ネタ要素としてデフォルメされた怪力設定だと否定的な感想を持っていたのを詫びたい気持ち。
その意味では、本作から登場した龍木の背景がほぼほぼミスリードのための設定となっており深掘りがされず、第三弾が出るなら、ここにスポットが当たるのかもしれないな。
そのぐらい、伏線回収の凄みが感じられた。
(米治の不自然な立方体型の輪郭だけは、未だに納得していないけれど。)

そして肝となるのが、ゲームにおける叙述トリック要素。
ふたりのみずきがいる、なんて序盤はヒントすらないのだから、引っかからないわけがないじゃない。
龍木が犯人を取り逃がしただけで降格というのはさすがにブラックすぎるだろ、と思っていたけど、民間人に発砲していたのだったらやむなし。
むしろ処分が軽すぎるぐらいで、後から読み返すことで判明する違和感の理由がいちいち納得できるから、この手のゲームではあまりない二週目のプレイを今すぐにしたくなるのよ。

トゥルーエンドから、更にハッピーなエンディングがあるのもご褒美感あり。
救われなかったキャラクターが、すべて救われる世界線。
続編があるとしたら、どちらの世界線を軸にするかで意見が割れそうだが、米治の生死で判別はできそうだな。
フラッシュモブのバカバカしさにも耐性ができ、本当の意味でこのシリーズを最大限に楽しみつくした気がする。
メタ視点が強まる分、前作のほうがミステリーとしての完成度は高いのかもしれないが、併せてプレイすることで満足度が向上するのは間違いなく、もっと早く手を出していればよかった、と後悔している。

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