【ADVゲームレビュー】イヌワシ~うらぶれ探偵とお嬢様刑事の池袋事件ファイル~ / Nintendo Switch(2020)
イヌワシ~うらぶれ探偵とお嬢様刑事の池袋事件ファイル~ / Nintendo Switch
2015年にスマホ向けに配信されていたコンテンツを、2020年、コンシューマ向けに再構築した推理アドベンチャーゲーム。
あらすじ
池袋にて、ウサギの被り物をした犯人による連続通り魔事件が発生。
世間を騒がせる中、元刑事のうらぶれ探偵・狗神エイジの事務所に、刑事だった頃に相棒だった鷲宮ツカサの妹・鷲宮ヒナが訪れる。
人の心や物に残った思念を読む"サイコ・レゾナンス"を使うことができるヒナは、通り魔事件が兄の死と関連していると考え、狗神に捜査協力を依頼しに来たのだった。
執事喫茶に勤める元カラーギャング・美馬ハルカと、高校生のスーパーハッカー・狐塚チヒロらも巻き込んで、事件の影は池袋全体に広がっていく。
概要/感想(ネタバレなし)
「探偵 神宮寺三郎」シリーズのスタッフが制作し、「ログ・ホライズン」、「ガンダムビルドダイバーズ」などのハラカズヒロがキャラクターデザインを担当。
17の事件、30時間以上遊べるボリュームで、1,500円という価格設定も魅力だろう。
もっとも、1時間前後でクリアできるメインシナリオ7本、それよりコンパクトに設計されたサブシナリオ10本という構成なので、実際のプレイ時間は15時間~20時間程度。
少し誇大広告的ではあるものの、それでも安いことには違いない。
さて、内容だが、キャラクターの個性を深掘りしながら、ハードボイルドテイストのシナリオを突き進むノベルゲーム+α。
一応、選択肢を選んだり、アクションゲームがあったりはするけれど、前者は推理というよりもこれまでに出てきた内容を整理するだけというのが大半。
後者についても、バトルシーンという大義名分のもと、タイミングよくボタンを押すだけというシンプルさ。
推理ゲームとしてひらめきを促されたり、選択肢によってエンディングが個別ルートに分岐したり、といった要素はなく、正直、このレベルだったら割り切ったノベルゲームにしてしまっても良かったかな、と思わなくもない。
ソシャゲ出身だからか、1章あたりがやたら短く、事務所から一歩も出ていないのに次の章に突入していたりと、テンポを阻害する要因になっているのももったいないかな。
ただし、シナリオ運びは確かに面白い。
推理の難易度は、率直に言って相当低いのだが、結末が明らかなのにダラダラと茶番に付き合わされるという感覚はなく、流れに身を任せていれば、解決シーンに辿り着くことができるという意味での易しさである。
必要な情報が揃ってから、次のステップに進む敏捷性はむしろ優れていて、小学生でもわかるパズルに、警察がよってたかって頭を悩ませているような苦痛を伴う描写はないのでご安心を。
サブシナリオも、本編のストーリー性から外れているというだけで、キャラの立て方にしても、シナリオの充実度にしても、本編と遜色はなし。
名作と手放しで褒めるにはベタすぎる感はあるも、サクっとプレイできるシリーズ探偵モノと思えば。
総評(ネタバレ注意)
ゲームシステムについては改良の余地あるも、総合的には面白い作品。
シナリオが1話完結的に細かく分かれているので、毎日寝る前に1シナリオずつ、と区切りよく進行できる。
徹夜でがっつりやり込みたい派には馴染まないけれど、まとまった時間がとれないときに少しずつプレイするゲームの候補に入れておくのはアリだろう。
シナリオに不満があるとしたら、ひとつだけ。
本作の背景にある、そもそものきっかけ、ツカサ殺しの伏線回収が雑すぎる。
自殺だと処理されているなら、何らかのトリックがあると思うじゃない。
それを、新・イヌワシコンビで再調査して、結論をひっくり返す動かぬ証拠を見つけ出すというシナリオがあると思うじゃない。
毒入りワインを勝手に信頼して飲んでくれたので、なんやかんや自殺に偽装しました、という真犯人の回想シーンだけで終わらせちゃったのは、さすがに納得しかねるかな。
せっかくモリアーティ的なラスボスを最初の事件のどんでん返しとして提示しているのに、進めば進むほどただのテロリストに成り下がってしまうのが残念。
サイコ・レゾナンスへの知的好奇心と、それ以外の犯罪計画との関係性も見出せず、結局、彼だけキャラクターが深掘りされずだったな、と。
ちなみに、DLCによる追加サブシナリオもあり。
本編のアフターストーリーということで、他のサブシナリオと比較しても本編の空気に近い作風になっていて充実している。
美馬&狐塚の見せ場もあって、キャラクターものとして欲しかった正当続編といったところだ。
ただ、本編が大小合わせて17のシナリオで1,500円に対して、1つの追加シナリオが360円。
DLCとしては妥当なコスト感とは思うものの、並べると割高感が出てしまうのはかわいそうなところである。
#全力で推したいゲーム
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?