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「ヴィジュアル系の、おすすめがしたいの。」を読んだの。

ヴィジュアル系の、おすすめがしたいの。/dagaki

色々な十字架のDr.dagakiによる同人誌。
トークイベント「ヴィジュアル系の、お話がしたいの。」の番外編として開催された「色々な十字架やや公式&同人誌即売会」にて頒布となった冊子で、後にBOOTHでも販売されたので購読することができた。
dagaki氏がセレクトしたヴィジュアル系の名盤20選を書き綴った10Pのコピー本。
オーバー30のギャ男なら、ニヤリとしてしまうこと請け合いのラインナップである。

そもそも、アーティスト本人が同人誌の即売会を企画してしまうのが規格外ではあるのだが、アーティストのファン目線での文章が読めるというのもかなりのレアケース。
大御所バンドに対して、憧れてバンドを始めましたぐらいのコメントをすることはあっても、具体的にどの作品のどういうところが好きかまで掘り下げられる機会はめったにない。
そのうえで、アーティスト被りなしで20組というレギュレーションや、俯瞰して見ることで立体的に浮かび上がる音楽観に、親近感を覚えずにはいられない内容。
強火のファン目線を提示したことで、多くの味方を取り込んだのではなかろうか。

まして、色々な十字架といえば、エイプリルフールの企画で誕生したコミックバンドで、言ってしまえばイロモノ枠。
ヴィジュアル系のファンは、彼らの楽曲が格好良い/面白いと思ったとしても、その背景にあるシーンへの愛情を推し量ろうとする傾向がある。
過去に、特異な文化を茶化されて笑いものにされた経験があるからこそ、ネガティブな印象からスタートするリスナーも少なくない。
それだけに、彼らがこういう企画を打ち出した意味は大きかったはずだ。
もっとも、このイベントじたい、そんな心理も理解しているよ、というヴィジュアル愛の証明なのかもしれない。

少し宣伝を挟むと、以前、「ギャ男が選ぶ名盤BEST50」という冊子に参加させていただいた。(発売前に散々煽っておきながら、こちらでちゃんと告知していなかったことに気付いて今更ながら無理やりねじ込んでいます。)
こちらでは、有志で集まった66名のギャ男が、自分で選んだ名盤50選を淡々と記録するという企画。
上位ランカーについては多少の推薦文も書かれているものの、基本的にただCDタイトルが50枚並んでいるだけと、音楽ファンじゃなければ、何が面白いのかわからないシロモノなのかもしれない。
しかし、自分と近い感性の人を見つけると嬉しいし、自分が入れ忘れていた名盤をピックアップしている人を見つけると悔しい。
選んだ作品がほとんど被らないような人がいたとしても、この人にはこういう作品を薦めてみたいとか、自分ももっとこんな作品を聴いてみようとか、そこに鳴っていないはずの音まで想像できてしまうのがギャ男なのである。

本著は、まさにそんなギャ男をノックアウトさせるには十分。
ステージの上に同志がいると、どうしてかわからないが心強くなって、全力で応援したくなるから不思議である。
さすがにネタバレは無粋ということで、ここで20選の内容に触れるわけにはいかないが、まず大きな共感と納得感があり、細部では、同じアーティストでも、その中で1番の作品が自分とは異なっていたり、それによる新たな気付きがあったりと、コンパクトではあるが味わい深い。

ちなみに「ギャ男が選ぶ名盤BEST50」に便乗して、自分の50選について、本誌では語り切れなかった推薦文を添えた記事をnoteで公開しているので、こちらもお時間があれば。
書いているタイミングの問題で、基準日が2021年3月なので悪しからず。
もし「ギャ男が選ぶ名盤BEST50」の2023年版が出るとしたら、keinの「破戒と想像」は入ってきそうだな、なんて空想をしつつ、色々な十字架の「少し大きい声」を何位に置くべきか悩んでいるところだ。


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