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【アルバム解説】さよならまでのあまやどり⑨ ~ゆめわずらい。~

咲花-サカナ。-のフルアルバム「さよならまでのあまやどり」。
8曲目に収録された「ゆめわずらい。」を解説します。



難産だった最後のピース


この曲は、全楽曲の中でも一番最後に出来上がりました。
レコーディングとしては「夏草の丘」と同じ日に行っているのですが、ミックスも含めると最後に完成した1曲。
なお、15年前には原曲が出来上がっていた「夏草の丘」に対して、こちらはほぼ書き下ろしのような形になったので、その意味でもラストピースといって過言ではないでしょう。

ある程度、アルバムの完成図が見えてきた中で、こういう音楽性が足りないよね、というのがヴィジュアル系らしいダークチューン。
かつ、歌モノは出揃っていた感もあるので、ハードな曲が良いなと。
それが見えていたので、当初は自分でデモを作ってみたのですが、どうも僕が作ると歌謡曲色が強まってしまって、しっくりこない。
だったらアドバイスをもらっちゃえ、ということで、アレンジをお願いすることになっていたYukiさんにデモをお渡しして、再構築してもらうことになったのですよ。

その結果が収録された「ゆめわずらい。」なのですが、とてもヴィジュアル系な感じになっておりまして。
Aメロ、Bメロはデモを踏襲しているものの、サビの部分はメロディも含めて、ほぼすべて差し替えられています。
メロディが残ったとはいえ、Bメロにしても、こんなに逆ダイが出来そうなリズム感に仕上がるとは。
イントロのフレーズもYukiさんによるもので、もうこれはアレンジの域を飛び越えていますよねと、編曲だけでなく、作曲のほうにもYukiさんをクレジットさせていただきました。
むしろ、僕は作曲したというより、発注しただけに近いです……


咲花-サカナ。-におけるメンヘラ系ナンバー


作詞においても、最後の1曲。
どのような場面を担うかは既に決まっていて、その通りに筆を進めるだけ。
ただし、ストーリーを繋ぐためだけの場面描写が多すぎると、単体で見たときに何の意味もない楽曲になってしまうので、そこは難しいところでした。

この曲は、ふさぎ込んでいる"君"を示す必要がありまして。
事故による死別があり、そこから「夏草の丘」の心境に辿り着くまで、彼女は何をしていたかというと、目的を見失って無為に過ごしているのです。
それでも、時間が経てば心の傷は薄れてしまうもの。
動こうと思えば動けるのだと思うけれど、心を満たすものがないため、動き出すきっかけを持てずにいる、そういう時期のメンタル描写が主になっています。

そんなわけで、大きなドラマは設けず、ひたすら内向的な歌詞。
前向きになろうと働きかける自分もいるのだけれど、途中で考えるのが面倒になって、動き出すには至らない。
それをいかに歌詞っぽく書くかというところで、Bメロの綿菓子のくだりは割りと気に入っています。
空想や妄想に逃げ込むというのも常套手段ですが、置かれた状況に具体性を持たせるならサビ後半しかなかったので、ひとつ踏み込んだフレーズを持ってくることにしました。
心が動くきっかけになる「オナジソラノシタ」を匂わせるポイントを作れたのも、Yukiさんの再構築により落ちサビが追加されたからこそ。
振り返ってみると、なかなかどうして偶然に助けられていますね。


(ネタバレ注意)体は動かない、心はちょっと動く


無気力状態の"君"。
ここにも、"僕"が死んでいるのか、"君"が死んでいるのかで見え方が変わる歌詞をいくつか登場させています。

冒頭の「また眠れないままで、夜が明けていく。」あたりはわかりやすいですね。
まずは、"僕"が死んでしまったため、心がふさぎ込んでいる"君"と誤解してもらいたいので、眠れない夜が続いていることを示唆。
2周目、実は死んでいたのは"君"だった、とわかってから読むと、幽霊だから眠る必要がないのか、と気付くのです。
「胸の傷」が、まさか物理的な傷だとは。

また、「空想」では"あなた"を主語に置き、「妄想」では、あえて誰がを示さずに「生き返ったりはしないのかなぁ?」としたことで、勝手に、"あなたが"を補完して読むように誘導しています。
しかし、それだと「オナジソラノシタ」の歌詞を信じるのに、ちょっと違和感がありますね。
幽霊である"君"は、星にはならず空の下に留まっていることを知っているので、「オナジソラノシタ」の歌詞に希望を見出すようになる、というのが後々わかってくるのです。

そんなわけで、メンタルが死んでいると思っていたら、本当に死んでいるのは体のほうだった、という叙述トリック(?)
そろそろ種明かしに移っていきます。


次は、二度目の劇中歌となった「オナジソラノシタ」を解説します。


さよならまでのあまやどり / 咲花-サカナ。-


【発売日】2024/4/1(mon)

【価格】2,200円(税込)

【収録曲】

4月 さくらの花、咲くころ
  作詞・作曲 遠藤サカナ 編曲 可憐

5月 カゼハレ(風が強く、良く晴れた日)
  作詞・作曲 遠藤サカナ 編曲 新橋朱里

6月 忘れ物
  作詞 遠藤サカナ 作曲・編曲 新橋朱里

7月 黒猫と花火
  作詞・作曲 遠藤サカナ 編曲 新橋朱里

8月 夏草の丘
  作詞・作曲 遠藤サカナ 編曲 可憐

9月 枯花-カレバナ。-
  作詞・作曲 遠藤サカナ 編曲 可憐

10月 野良犬に鎖
  作詞・作曲 遠藤サカナ 編曲 Yuki

11月 ゆめわずらい。
  作詞 遠藤サカナ 作曲 Yuki & 遠藤サカナ 編曲 Yuki

12月 オナジソラノシタ
  作詞・作曲 遠藤サカナ 編曲 可憐

1月 魔法が解ける、その日まで
  作詞 遠藤サカナ 作曲・編曲 新橋朱里

2月 うさぎ のち あめ
  作詞・作曲 遠藤サカナ 編曲 Yuki

3月 あめあがり
  作詞・作曲 遠藤サカナ 編曲 可憐

ジャケットイラスト 酢平☆

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