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【ヴィジュアル系】2024年上半期ベストトラック大賞(後編)

上半期最後のnote更新。
お約束ですので、ヴィジュアル系シーンに届けられた楽曲の個人的ランキングをお届けします。
20位~11位までの前編に続いて、いよいよトップ10を発表。
前編を未読の方は、そちらも併せてご覧くださいまで。


第10位 Voice/デミアン(「Voice」より)

CHARLESやBELLESで活動を共にしたVo.MAYAとBa.LUIが再びタッグを組んだデミアン。
ギタリストの脱退がありユニット形式となったものの、精力的にデジタルシングルをリリース。
その第4弾となるのが、この「Voice」である。
以前のバンドでも披露していた美しく繊細なフレーズや切なさを帯びた歌声は引き続き武器として持ちつつ、制約を取っ払った自由な作風が新鮮味も運んでくる。
本作では耽美的なメロディを解禁したとも捉えられるものの、懐かしさだけでなく爽やかな清涼感が上乗せされて、デミアンとしての個性が際立つ1曲になっていた。


第9位 愚かな死守 (feat. ゆーり) / ジュンペロ(「私淑」より)

DOG inThePWOのGt.準々によるソロプロジェクトによるミニアルバムから。
自身の誕生日にリリースされた本作は、影響を受けた6人のヴィジュアル系バンドのヴォーカリストをゲストに招いて制作された。
音楽性としては、良い意味でゲストのイメージに固執しておらず、準々の描くデジタルポップな世界観を踏襲。
新境地を見せた者もいれば、違和感なく溶け込んで歌い上げる者もいるという中で、イロクイ。のVo.ゆーりのハマり方は奇跡的なバランス。
どちらかと言えば後者寄りのスタイルであるも、現在の活動とのギャップも含めてインパクトも大きく、期待値を超えてきた1曲である。


第8位 愛の唄 / MUCC(「愛の唄」より)

MUCCによる3度目のメジャーデビューシングル。
グラマラスな歌謡ロックに仕上がっていて、大人の雰囲気が漂う1曲だ。
ギラついた質感がたまらない。
時代錯誤な90年代感が逆に新しく、ヘヴィーだけどキャッチーさがあり、ダークだけど一緒に歌いたいと思わせるメロディが待っていた。
こんな邪道なメジャーデビュー、彼らがやるからこそ格好良く見えるのだろう。


第7位 FACTION / OLD CIRCUS(「FACTION」より)

魂を削って叫ぶVo.和泉隆宏のポテンシャルを、最大限に引き出す1曲。
詩的な表現をしているわけではないのだけれど、日常とともにある痛みや葛藤は、聴く者の心にグサグサ刺さる。
衝動的に加速度を上げていくパンクスタイルも効いていて、フラストレーションを吐き出すにはもってこい。
音楽ではあるけれど、リアルに限りなく近い生々しさで煽られる衝動。
"ファクト"と"フィクション"を掛けあわせた造語である「FACTION」とは、言い得て妙なタイトルだ。


第6位 九龍 / 孔雀座(「九龍」より)

"視覚的聴覚的刺激"をコンセプトにしていた孔雀座の1stシングルの表題曲。
彼らの強みは、なんといっても中華モチーフを織り込むセンス。
正々堂々、中華料理を歌詞に綴ってしまう豪胆さを持つ一方、サウンド面ではテンプレートに頼らず、ラウドサウンドによって異国情緒を再現。
ヘヴィーなリズムとソリッドなフレーズを混沌としたアジアンフレーバーの中に放り込むと、どことなく中国的な印象になるから面白いものである。
新進気鋭の感性と硬派なスタイルには新たな流行の発生を予感させたが、短命で活動がとまってしまったのは残念で仕方ない。


第5位 絶海色 / 洗脳Tokyo(「絶海色」より)

ソフトヴィジュアル系を通り越して、J-POPでも通用しそうなポップなメロディ。
シンプルなバンドサウンドにほんのり和の要素を加えて、青春時代を思い起こさせるセンチメンタリズムをくすぐってくる。
これだけでもキラーチューンと呼べるのだけれど、重なってくるデジタルサウンドがもうひとつ深みをもたらしているのが面白い。
透明感のある音色を多用しているのに、メロディに覆いかぶさるように重なっていて、必ずしもすっきりは聴かせてくれないのだ。
聴きやすさの中に、聴きにくさをほんのひと匙加えるセンスの良さ。
今後は再びユニット形式での活動となるが、やはり彼らには第一線にいつづけてほしい。


第4位 VR-仮想現実- / シンギュラリティ(「SINGULARITY」より)

Vo.Jekyllは、ソロに続いてバンドでもランクイン。
バンド結成の勢いをコンセプトど真ん中のサウンドにぶちこんで、王道的なナンバーとして再構築。
ハードなバンド演奏とサイバー色の強いデジタルサウンドの融合は、もはや普遍的なアプローチと言えるのだが、世界観で意味付けしたことで演出として機能しているのが上手いなと。
無機質さが押し出される中で要所要所で感情が滲み出る表現力の高さは、他ジャンルでの経験が活きた形。
彼の、こういう楽曲が聴けるというだけで、なんだか嬉しくなってしまう。


第3位 黄昏オフィリア / GrimAqua(「AQUAISM」より)

ここにきて、白系あるいは耽美系としての魅力が開花しつつあるGrimAqua。
楽曲のバラエティは相応に広く持っているのだが、個人的には、Vo.LUM.の艶っぽい歌声を堪能できるストレートな楽曲に惹かれる傾向があるらしい。
ミニアルバムのリードトラックとなる「黄昏オフィリア」は、色々なギミックを取り込みつつも、マイナーコードで疾走するメロディアスチューンとしてまとめられている。
華があるのは当然として、サビのフックでのインパクトも抜群。
囁くようなラストシーンからのアウトロの高揚感がたまらない。


第2位 モンスター / ヘルブロス(「モンスター」より)

3ヶ月連続リリースを敢行。
その最終章となる第三弾となったのが、Vo.夢人が作曲を担当した「モンスター」である。
"ex-ベルとex-Chantyのメンバーによる化学反応"というヘルブロスの音楽に触れる前にぼんやりと期待していたサウンドが、実体としてそこにあるイメージ。
祭囃子のような賑やかさと、ノスタルジックで哀愁のあるメロディの良いところ取りで、これを待っていた、とテンションが上がった1曲。
フルアルバムの完成が楽しみになるキラーチューンに仕上がっていた。


第1位 春色ラプソディ / デミアン(「春色ラプソディ」より)

トップ10に2曲目の登場となるデミアン。
3rdデジタルシングルである「春色ラプソディ」は、彼らなりのサクラソング。
優しくも切ない鍵盤の音色は、キラキラと輝きながら、儚く舞い散る桜の花びらのよう。
淡々と刻むリズムも、穏やかな春の情景を映し出している。
見事だったのは、大きな盛り上がりを意識しすぎると興ざめになる曲調であることを踏まえて、感情の高まりを同じフレーズのリフレインによって表現していたこと。
何度も繰り返されることで増幅していく甘酸っぱさは、何物にも代えられないのである。


なんとなく上半期の後半に気になる音源がドカッと放出された印象で、もっと聴き込みたかったなという楽曲も多数。
実は、本日紹介した楽曲の中にも、まだ安眠妨害水族館では採り上げていない作品もあったりして、時間が足りないのは悩ましい問題だ。

そんな背景もあり、完璧なランキングと言うつもりはないので、お手すきのときによく聴いた楽曲の振り返りや新しい音楽と出会うきっかけとして捉えていただければ。
下半期こそ、今よりも積極的に音楽に触れていくぞ、と気合いだけ入れておく。


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