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2021年下半期ベストトラック大賞(前編)

「ゴーストシップ・アクアリウム的 ベストトラック大賞」として上半期も20曲を紹介したが、もちろん、下半期もたくさん名曲が届けられた。
作品単位での名作、名盤は、ブログのほうで後ほど公開する「安眠妨害水族館的CD大賞」で発表するとして、こちらでは楽曲単位で紹介したい名曲をいくつか挙げてみたいと思う。
紹介する基準は以下のとおり。
余興として、便宜上ランキング形式にしているが、個人の好み、主観が多く含まれているので、あくまで参考値としてご了承いただきたい。

① 2021年7月~12月に発表された楽曲であること
② 2021年12月20日時点でサブスクリプションサービスで配信されていること
③ V系シーンをメインフィールドとして活動しているアーティストの作品であること

なお、過去リリースされた作品のサブスク解禁や、ベストアルバムのリリースによって過去に発表されていた楽曲がサブスク化された場合も、ここでは対象外とさせていただく。(ヴァージョン違いや新緑の場合は除く。)


第20位

業 / mama.(「業」より)

ライブ会場で配布された音源を、その翌日にデジタルリリース。
コア層とライト層へのアプローチを使い分け、徐々に知名度を伸ばしつつあるmama.であるが、この「業」で音楽的にも一皮むけた感覚。
王道から邪道まで、なんでもこなす幅の広さに加えて、深み、奥行きを与えることに成功していた。
過激な表現が見られることから、表現の自由に背いて自主規制されたMVも話題になっており、ランダム配布されるDVDも注目である。


第19位

RIVER / 団長×広末慧(「RIVER」より)

コンスタントに楽曲をリリースする、団長×広末慧による4thデジタルシングル。
そろそろ、メタル以外の音楽を歌う団長にも慣れた頃ではあるが、だからといって楽曲が色褪せるわけではなく、むしろ違和感がなくなり、より自然体で聴けるようになった印象だ。
感傷的な歌詞、メロディ。
切ないハイトーンヴォイスは、ソフト・ヴィジュアル系の文脈でも十二分にその魅力を発揮していると言え、大人が聴くV系ソングとして、かなりグッとくるものに仕上がっているのでは。


第18位

令和2年4月24日、19時アルタ前 / gaizao(「東京アジテーション4」より)

Vo.江戸川長一郎の誕生日にゲリラリリースされた"東京アジテーション"シリーズの第4弾。
リードトラックとなるのが、この「令和2年4月24日、19時アルタ前」である。
初のデジタルシングルとなるが、ある意味ミスマッチとも言えるレトロフューチャーなサウンドが痛快。
マイナーコードで疾走する王道感と、ケバケバしくケレン味のある電子音が絶妙にマッチ。
ニューウェイブ経由、ピコピコ系好きにはたまらない仕上がりになっていた。


第17位

「いつかは死んでしまう僕らは」/梟(「梟の森」より)

DADAROMAのVo.Yoshiatsuを中心に結成。
ギターを置かず、ピアニストを擁する編成は、現在のシーンにおいては異色と言えるのだが、彼らの勢いを見るに、近い将来、ピアノロックという選択肢を選ぶバンドは、もっと増えていくのだろう。
そんなピアノの旋律を主軸とした梟の楽曲の中でも、特にエモーショナルに響く楽曲を選ぶとしたら、クリックなしで一発録りをしたという「いつかは死んでしまう僕らは」以外に考えられない。
リードトラックに据えるのも頷ける表現力の高さは、生演奏こそ完成形というスタンスに説得力を与えていた。


第16位

Winter Moon Winter Stars/GLAY(「FREEDOM ONLY」より)

GLAY史を象徴するように、名曲揃いだったアルバム「FREEDOM ONLY」。
収録された楽曲は、どれもがGLAYを知るリスナーであれば笑みが零れてしまうであろう王道っぷりで、彼らの魅力がぎゅっと凝縮されているのだが、もっと広くヴィジュアル系のファンに刺さるとしたら、「Winter Moon Winter Stars」に勝るナンバーはないのではないか。
古き良き、という言葉も使い古されてしまったが、当時から第一線で活躍する彼らが鳴らす古き良きは、歴史を背負っているバンドの重み、深みが感じられ、胸が熱くなる。
GLAYらしい冬っぽさやポップなメロディも包含して、初期衝動を見事に昇華していた。


第15位

MONSTER GIRL/MIMIZUQ(「MONSTER GIRL」より)

MIMIZUQというバンドに加入した二代目ヴォーカリストが、森 翼という名前の時点で運命的なのだが、少し癖のある甘い歌声は、それ以上に彼らの音楽性にハマっていた。
メルヘン色が強い、ファンタジックなポップチューン。
ギターソロが入ってきそうなところに、バイオリンの柔らかい旋律を挿入するアレンジも、柔軟性の高いMIMIZUQだからこそ。
スマホで聴くことを想定して、音数をあえて減らしているという音楽観のアップデートも、プロの仕事といったところである。


第14位

Feather/DazzlingBAD(「Feather」より)

Vo.iTの中性的な歌声が、中毒性を高める武器となっているDazzlingBAD。
ハードなサウンドにも強みを持つ彼らではあるが、届けられた2ndデジタルシングルは、透明感のある正統派の白系チューン。
ミディアム調で世界観を重視した展開は、地力が如実に出そうなところではあるが、見事に最後まで聴かせ切ったと言えるだろう。
この歌声があれば、何をやっても個性的になるからズルい。


第13位

ロックのせいにしないで/生憎の雨。(「洗脳」より)

始動から1周年というタイミングで発表された2ndミニアルバムより、関西弁を含む生々しい歌詞が特徴的な歌謡ロック。
カラオケ風のMVも、世界観としてはぴったりである。
スタイリッシュな楽曲の中に、突如として放り込まれた場末感がアクセントになっていて、結果的に作中で一番耳に残る楽曲に。
"ロック"を、音楽ととるか、お酒ととるか。
解釈の余地を与える歌詞も上手いな、と感心させられる1曲。


第12位

蜃気楼Girl/Nicori Light Tours(「蜃気楼Girl/コマンド疑似恋愛」より)

ex-Janne Da ArcのGt.you、Key.kiyoを中心に結成。
ツインヴォーカル編成での新鮮な切れ味と、これを待っていたという狙い撃ち感。
アグレッションの高いギターと、様式美的なキーボードによるアンサンブルを耳にすれば、一瞬であの頃に引き戻されてしまうのだ。
単体ではそうでもないふたりの声が、コーラスワークで重なると、まるでyasuが歌っているような錯覚に陥るのが不思議。
地続きの延長線上を見せてくれたようで、たまらないのである。


第11位

赤春の林檎/ダウト(「赤春の林檎」より)

ヴィジュアル系×ジャズ。
「化學反応-BAKEGAKU REACTION-」シリーズの第一弾として、サックス奏者のユッコミラーとのコラボレーションを果たした1曲。
青春の甘酸っぱさを、パンキッシュなアッパーチューンで表現。
そこにサックスを加えることで、ブラスバンド風のゴージャス感が出た一方で、かえって切なさが増幅されたのが、まさに化學反応だったなと。
ジャズとの融合を意識すると大人びたサウンドを目指したくなるところ、ヴィジュアル系において、このアプローチを選択したのが斬新かつ効果的だったのでは。


トップ10は、後編に続く。


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