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【ミステリーレビュー】ミステリなふたり/太田忠司(2001)

ミステリなふたり/太田忠司 

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2015年に連続ドラマ化された、太田忠司の短編ミステリーシリーズ。

愛知県警の捜査一家に所属する敏腕刑事・京堂景子は、職場では冷静沈着な態度と辛らつな物言いで「鉄女」や「氷の女」と呼ばれながらも、的確な現場指揮で難事件を次々と解決。
しかし、実際に推理を行っているのは、イラストレーターである年下の夫、新太郎であった。
景子の絵にかいたようなツンデレぶりと、安楽椅子探偵的に物事の真相を瞬時に見抜く新太郎の推理力を、アットホームな食卓の風景の中で堪能する、一話完結型の短編集だ。

ずっしり重い長編が続き、ライトな短編集を、と挟んでみた作品。
その見立ては間違いではなく、ひとつの事件あたり30頁強で完結。
短時間で簡潔に読めるミステリーとしては、確かに質が高いのだと思う。
朝に読んでも、必要以上に心が重くなることもない。
通勤中や通学中、時間制限がある中で読む分には最適であろう。

一方で、その反動で一本道のストーリーになっているものも多く、すぐに結末に辿り着いてしまうがために、続きが気にならない。
一気に読もうとすると、ある種、作業的な読書になってしまった感があって、自分の読書スタイルとは合わなかったかな。


【注意】ここから、ネタバレ強め。


強いて言うなら、最後に収録された「ミステリなふたり happy lucky mix」については、事件の本筋とは別に、読者に向けた仕掛けが施されている。
事件の設定も、本格ミステリー的なギミックになっていて、いよいよ一歩踏み込んだ作風になるか、と思うのだけれど、結局、本作らしい着地を見せていく。
仕掛けも、そこまで意外性はなく、慣れていれば容易に見抜けるレベル。
ライトなものを、と選んでおいて恐縮だが、もう少し骨のあるミステリーが読みたかったというのが本音だ。

また、新太郎の家庭的な一面の象徴として、毎回、違った料理が出てくるのも特徴なのだが、上手く事件に関わらせることが出来ていないのに加え、食レポ的な記載がそこまで凝られていないので、あまり惹かれもしない。
ラブシーンについても唐突なものが多く、どの層に向けてのサービスなのかもよくわからない感じ。
ツンデレな女刑事という設定も、キャラ付けとして悪いとは言わないが、外から見て面白い会話に育っていかないのが、なんとももったいないというか、会話でオチをつけられないから、強引にラブシーンに移行して話を終わらせているように感じてしまったかな。

もっとも、ドラマ化されるほどの人気シリーズ。
少し定まっていない部分もあるやには聞くので、続編では洗練されていたりするのかも。
これだけで判断してしまうのは尚早か。

#読書感想文

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