見出し画像

【ADVゲームレビュー】パラノマサイト FILE23 本所七不思議 / Nintendo Switch(2023)

パラノマサイト FILE23 本所七不思議 / Nintendo Switch

スクウェア・エニックスより発表された、群像ホラーミステリーアドベンチャーゲーム。


あらすじ



オカルトブームに沸く昭和後期の日本では、死んだ人間を生き返らせる「蘇りの秘術」が世間の注目を集めていた。
墨田区に本社を構えるヒハク石鹸に勤務する興家彰吾は、オカルト好きが高じて「蘇りの秘術」に興味を示す福永葉子に巻き込まれる形で、本所七不思議の「置いてけ堀」の跡地である錦糸堀公園を訪れる。
そんな中、突如として本所七不思議の呪いが復活。
「置いてけ堀」の呪いの力を得た興家ら9人の呪主達は、他者を呪い殺し、死者の滓魂を集めることで「蘇りの秘術」が使えるのだと言う。
呪主達の思惑が入り乱れ、呪い合いが幕を開ける。



概要/感想(ネタバレなし)


パラノーマルな世界観と、パノラマを駆使したゲームシステム。
「パラノマサイト」とは上手く言ったものである。
ホラー色が強そうなゲームは優先順位を下げてしまいがちなのだが、あまりに評判が良いのでプレイしてみることに。
もっとデスゲーム感が強いのかと思いきや、駆け引きはありつつも積極的に呪いを行使するキャラクターは限定的。
超常現象があることを前提とした世界観ではあるものの、真相を探っていくミステリーとしての要素、あるいはキャラクターの冒険譚としてシナリオ重視という印象だった。
群像劇としてのテンポが良く、怖さよりも興味が勝り、ぐいぐいと引き込まれる。

昨今は、ゲームであってもアニメーションが当たり前という時代ではあるが、本作においてはキャラクターボイスやCGアニメは排除。
昭和の墨田区というレトロな舞台設定も相まって、古き良きコマンド入力型のADVゲームが下地となっている。
とはいえ、360度の視界を操作できるのは斬新。
自身の背後にある人物やアイテムを確認できたり、後ろを向いて、もう1度振り返ると状況が変わっていたりと、新しいゲーム体験を生み出していた。
これがADVゲームのギミックとして機能するのは言わずもがなだが、何よりホラーゲームとの相性が抜群。
何気なく振り返ったら、そこに誰かがいるとか、明らかにヤバいものがいるから顔を上げたくないのだけれど、スクロールして確かめなければいけないとか、ボタンを押す以外のトリガーで怖がらせてくるから面白い。
呪詛珠を拾うときの"あれがくる"とわかった状態でもびっくりするのに、更に不意打ちがくるとなったら言わずもがなだ。

プレイ時間は10時間程度とコンパクト。
やり込み要素は用意されていて、クリア後の楽しみも作れそうではあるが、まずは真エンドに辿り着くのが当面の目標となる。
ややボリューム不足を感じるところではあるが、その分価格が安いからOK。
コストパフォーマンスという観点では最強なので、ホラー要素がよほど苦手でなければ。



総評(ネタバレ注意)


序盤は興家彰吾が主人公然としているのだが、チュートリアル的に最初のルートをまっすぐ進んだところで、謎を残したまま舞台を退場。
真相が不明なまま、本編である群像劇的なストーリーが進んでいくことになる。
ここでは、志岐間春恵、津詰徹生、逆崎約子のシナリオが解放され、後にもうひとりのルートも追加。
伏線が回収されるたび、バラバラだった道がひとつに交じり合っていくので、ついついに夢中に。
そうこうしている間に、気が付くと取り込まれていた。

また、本作における重要点はメタフィクション要素。
プレイヤーがプレイヤーであるが故の役割を与えられており、音量設定をいじったり、セーブを使ってのギミックがあるなど、正統派からすれば反則だろ、というやり口で呪いと戦っていく。
そして、これが大きな伏線にも繋がっていて、メタだったものがそうじゃなくなる不思議な感覚は、他ではなかなか味わえない。
エンディングがあっさりすぎるきらいはあるが、目的が完了したため、プレイヤーが介入できなくなったという意味を持たせたのだと聞いて、奥が深いなと目から鱗だ。

ゲームの難易度もちょうど良く、シナリオも重苦しいばかりでないので、初心者でも楽しめるだろう。
ひとつ惜しいというか、もったいないなと思うのは、結局ゲーム内で発動しない呪いがあること。
発動条件などを見るだけでもワクワクできる設定で、どうやって相手を出し抜くかという戦略性を期待していたのも事実。
何もアクションを起こすことないまま、真エンドにてなかったことにされてしまう「落葉なき椎」が、なんだか不憫である。

#全力で推したいゲーム


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?