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【ミステリーレビュー】斜め屋敷の犯罪/島田荘司(1982)

斜め屋敷の犯罪/島田荘司

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新本格ミステリーの祖、島田荘司が1982年に発表した御手洗潔シリーズの第2弾。

今更も今更なのだが、実ははじめてとなる御手洗潔シリーズ。
というのも、第一弾の「占星術殺人事件」があまりにも有名すぎて、読む前からトリックを知ってしまっていたから(「金田一少年の事件簿」世代にとっては、特にそうだろう)。
シリーズものは1冊目から読みたい気質の人間にとって、そこが引っかかったまま、なかなか手を出せずにいた作家であった。
この「斜め屋敷の犯罪」も代表作として知られる作品だが、「占星術殺人事件」の影に隠れて、あまりネタバレを踏んでいないことに気付き、ようやく重い腰を上げたといったところである。

率直に言って、やっぱりもっと早く読むべきだったよね、と。
新本格というジャンルにおいて、新しい・古いはあまり重要ではないというか、むしろデジタル機器をどう処理するかに頭を使う現代的な新本格主義の作品よりも、携帯電話もパソコンもない時代のリアルタイム性のほうが、ジャンルとの相性は良いのだと思う。
その意味では、やはり、自分の中で昭和の記憶が新しいうちに読むべきだったのだ。

さて、内容としては推理小説のためだけに作られたようなヘンテコ館が舞台。
出入りはできるものの、雪で覆われている北海道の年末年始という季節設定もあり、犯人は屋敷の中の人物に絞られる実質的なクローズドサークルで、連続殺人が行われる。
不気味なギミックと、謎の密室。
さすが新本格ミステリーの祖、といった要素が盛沢山だ。

本作における醍醐味は、スケールの大きなトリックに他ならない。
探偵役が終盤まで出てこないため、テンポ感は必ずしも良くはないのだが、最後の解決編で、すっかり魅了されてしまうのだ。
犯人はある程度予想できたとしても、密室をどう破るか、それをどう証明するか、が実に厄介。
あっと驚くこのトリック、「読者への挑戦」はあるものの、果たして、見事に正解できた人間なんて、御手洗潔以外にいるのだろうか。
なお、お初にお目にかかる御手洗潔氏は、想像していたキャラクターとだいぶ違っていたことを書き添えておく。


【注意】ここから、ネタバレ強め。


率直に言って、犯行動機についてはアンフェア。
解決編までに一度も語られていないエピソードが唐突に出てきた感があり、まぁ、フーダニットとハウダニットさえ押さえておけばよい、というスタンスなのであろう。
そう思ったところで、塔と花壇の謎に戻ってくる構成が絶妙。
序盤で登場するこの謎について、何を表現しているのかはすぐにわかったのだが、それと事件とを結びつけて考えられなかった。
ここからメッセージを受け取っていれば、動機が何だったのかはわからずとも、"動機があった"とは読み取れていただけに、少し悔しい。

総括として、トリックも動機も見破れないのに、何故か犯人だけは多くの人がわかってしまうという不思議な作品。
一歩間違えればバカミスだけに、賛否両論はあるのだろうし、非現実的な設定の許容量によってぷっつり好き嫌いが分類される作品なのであろうが、叙述トリックによるどんでん返しに頼らず、密室トリック1本でここまでのインパクトを創出してしまうのだから、そりゃ、夢中になる人も多いわけである。
どれだけコストがかかるんだ、って話ではあるのだけれど、実際にセットを組んで実験してほしい。
骨董品コーナーを抜けるところなんて、エンタメ性抜群だと思うのだけれど、どこかで企画してくれないかな。

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