日記「初夢」
地下鉄に乗っていたら不意に窓が明るくなって、ほんの数秒、地上を走ったんだとわかる。
メトロの丸の内線。茗荷谷-後楽園の間の区間。
山手は丘陵地なので丸の内線はしょっちゅう地上に出る。
でもなんだかそこはちょっと寂れた住宅地のような、保土ヶ谷みたいな雰囲気で、へぇと思って眺めていたら、トンネルに潜る1秒前、三角形のごく小さな畑が現れて、そこに一羽の白いアヒルが立っていた。
見間違いかもしれない。
一瞬、アヒルと目が合った。それに知っているアヒルよりもふた周りほど大きかったような気がする。思い返すたびにでかくなっていって怖いのでもうイメージは思い返せない。
それに、あんな場所に畑があるのも変だ。
夢だったのか。
ここのところ風邪気味で全然夢を見れていないので、夢の方が夜を追いやられて昼に現れたのかもしれない。
そうであればこれは初夢ということになる。
富士、なす、鷹の三つが吉兆とされるが、丘陵地、畑、アヒルで吉兆と言えなくもないのではないだろうか?
だって畑は茄子だって育てるだろうし、アヒルは言わずもがな。
丘陵地がちょっと厳しいが、ちょうどあのあたりの丘陵地は色川武大のエッセイ『門の前の青春』で富士山と対応されて描かれていたし、丘の中ではそうとう富士山に近い丘とみなせるだろう。
丘陵地、畑、アヒル。
いい夢を見たなぁ。夢かどうかわからないという点も、かなり夢らしくてグッドだ。
「わたしはロボットではありません」画像テストのニセ選択肢っぽいラインナップだけど……。
「吉兆をすべて選んでください」で丘陵地、畑、アヒルをセレクトするロボットがいたら、友達になりたい。
そして一緒に丸の内線に乗って、あの畑とアヒルを探しに行きたいです。
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