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大好きなエロゲ(Key編)

何度かちょくちょく発信したことがありますが、過去の数年間エロゲにたいそうハマっていた時期があります。当時、まだSNSやスマホが全く普及せず、今とはエンタメの形態が大きく異なる頃には『とりあえずHシーンさえ入れておけばどんな表現も許される土壌がある』『大量の情報感度の高いプレーヤーがいる』『一山当てれば大金が稼げる可能性がある』ということで多くのクリエイターがエロゲ業界に参入し、今振り返ればほんの一時期ですしもはや信じられないかもしれませんが、サブカルの頂点に位置したと言っても過言ではない時期がありました。

で、そんな時期と感受性が豊かな時期がピッタリ合っていたこともあり、こちらも短期間ですがエロゲに深くハマってました。完全に回顧厨的な感じではありますが、当時を懐かしみつつ名作の数々を複数回に亘って振り返りたいと思います!

今回はエロゲ業界の泣きゲー志向を決定付けたKeyについてです!!


はじめに

『Key』というブランドは2023年時点での知名度で言えばエルフ、アリスソフト、F&C、シーズウェア、リーフのような四半世紀~20年前の超一線級を軽く凌駕している知名度を誇るブランドと思われます。Kanonの発売後はエロゲ界全体のトレンドを萌えや泣きゲーに一気に傾けるほど話題を独占しました。SNSがなかった頃は全ジャンルのオタク(芸能、野球、マンガ、政治、経済、本当になんでも)が2chで情報収集を行い、アクティブユーザーは感覚的には全板合わせれば軽く1千万人くらいはいたであろう時期に、「エロゲ板」から独立して「葉鍵版」ができるほどの人気でもありました。同時期に両板をROMりまくっていた自分の感覚的に、葉鍵というたった2メーカーだけの板の方がむしろエロゲ板よりも賑わっていた印象です。

というわけで、若者置いてけぼり過ぎる回顧話が続きそうなので、個別に思い入れのあるゲームについて自分が認知した順に語っていきます!


①ONE ~輝く季節へ~

本作は後にそのままKeyの主要メンバーとなる樋上いたる、麻枝准、久弥直樹、折戸伸治、みらくる☆みきぽん、しのり~らが製作に名を連ねているため、Key作品に準じて語られることが通例なのでこちらに含めました。エロゲ業界の動向につき、様々なメディアに目を通してアンテナはそれなりに高かったはずの自分ですが、本作はじわじわと評判が高まるまで存在につき全く知りませんでした。不覚です。どうやら名作らしいと認知したのは、スタッフがビジュアルアーツに移ってKanonの発売が公表されて以降だった覚えがあります。初回限定版を購入してプレイしたのはKanonより後だったような気すらしないでもないです。さて、本作の世界観を象徴するものとしては「永遠の世界」が挙げられます。「永遠の世界」とは何なのか。そこに行くとどうなるのか。具体的なことを直接的に表現せずに、遠回しに想像・考察させる手法は当時ではそれなりに珍しかったこともあってか、本作はシナリオ面で非常に高い評価を得ました。自分は、というとそこまで深く理解できたかどうかは定かではないですし、萌え全開な女性キャラの造形は当時からあまり好きではなかったのですが、シナリオに特化したゲームもあまり多くなかった頃だったのでかなりハマった記憶があります。ノベル版も全巻購入してしおりを大事に取っていたのが懐かしいです。キャラクターでは、というかシナリオからして茜ルートが一番好きでした。根が単純なので分かりやすい話の方が好きなのかもしれません。ちなみに当時から今まで原画のクオリティは散々突っ込まれていますが、絵はただ上手ければ良いだけでなく、パッと見て誰の絵だか分かるようなオリジナリティが大事だと思うので、樋上さんは唯一無二の素晴らしい原画家なのだと個人的には思っています。が、それにしても本作の七瀬が転んで立ち上がろうとしている原画だけはさすがに擁護できないレベルでデッサンが狂っていると今でも思っています。


②Kanon

エロゲ業界としては同級生、to heartに続く大バズリゲーと言っても良い超有名作品です。コンシューマに移植されて声が付いた版も大ヒットでした。元々マリ姉の大ファンである自分は名雪のCVがマリ姉と聞いてテンションは上がったものの、厄介なエロゲ至上主義のオタだったので購入したもののプレイは今日に至るまでしておりませんし、ゲームも未開封のまま手離しました。「あさー、朝だよー。朝ごはん食べて学校行くよー」なんてセリフがマリ姉ボイスで聴けるチャンスを逃した自分はアホです。発売前からビジュアルアーツはかなり宣伝を打っていて、あゆに羽が生えた見開き広告絵をどれだけ見たことでしょう。発売日にはメッセサンオーの購入特典の通称Kanon砲(Kanonのショップ特典の大きなポスターとそれを入れる筒)を持って移動するオタクの群れが秋葉原で多数観測されたらしいですし、2chに葉鍵版ができたのも確かKanonの発売後、人気が尋常じゃなかったことを受けてだった気がします。当時はSNSもなく、今ほどオタクのジャンル・メディアの多様化も進んでいないので、Kanon旋風はかなり凄かったです。コミケはあまり詳しくないのですが、Kanonジャンルでかなりの面積を取っていた記憶がうっすらありますし、本作の素材を使ったMADムービーは流行るわ、『カノソ』など二次創作の同人ゲームも東方前の時点では最上級だったはずです。ちなみに私はやっぱりアンテナがあまり高くなかったのか、Kanonの初回版は後に中古で、Kanon砲も後にK-Booksで購入しました(Kanon砲はたぶんまだ実家のどこかにあるはずです)。
とまあここまでガワの話ばかりですが、ゲームそのものが良くできていたからこそ人気が炸裂したのも間違いありません。テキストのクオリティ、かなり個性的だけど泣きゲーにはピッタリな原画、確かな塗り、素晴らしいBGMと印象的なOP&キャッチ―なEDのボーカル曲で日本中のオタクを泣かせまくりました。自分も各シナリオで泣きまくりでした。一番好きなのはシナリオもキャラクターも真琴でした。今でも草原でヴェールを頭に乗せた真琴の絵やラストの一枚絵は脳裏に刻まれており、もしかすると死ぬ前の走馬灯で流れる可能性すらあります。なお、AIR以降はKeyの屋台骨はシナリオ面では完全に麻枝氏、作曲面でも徐々に同じく麻枝氏が担っていくことになりますが、Kanonまでは本作でKeyを退社する久弥氏の方が評価は高かった気がします。麻枝氏もかなりコンプレックスを抱いていたと後に話してました。
さて、本作の爆発的な人気により、エロゲは萌え系の泣きゲーと抜きゲーの二択化が進んだ印象があります。萌えでもなくエロだけでもない、アダルトなシナリオが好みの自分にとっては振り返ると困ったムーブメントでした。テキスト容量が売りになるような、プレイ時間の劇的な増加もこの頃が起点だった気がします。


③AIR

個人的にエロゲが人生の中心だったピークの時の作品が本作なので、思い入れは非常に強いです。大ヒットしたKanonは冬を舞台にした作品でしたが、今作の舞台は夏。寡作気味なメーカーだったことや、リーフを中心とした別のメーカーはシナリオ特化ゲーを作らなかったこともあり、発売情報が出た瞬間から期待値は他の全ての作品と比較にならないほどでした。変な口癖の萌えヒロインにも多少の違和感を持ちつつすっかり慣れた自分もAIRへの期待は留まるところを知りませんでした。当時は一軒家の3階に家族と距離のあるところに自室があったこともあり、物欲MAX系オタクとして特典やポスターなど、バイトで貯めたお金を全てはたいて好みのエロゲグッズを集めまくっていました。と、そこでAIRの登場です。当時はエロゲ全盛期で専門ショップが全国に多数あったこともあり、日本中のオタクが漏れなく注目するキラータイトルだった本作は恐らくショップ特典の種類で上回る作品はないんじゃないかという勢いでした。正確な数は憶えていませんが、ありとあらゆる秋葉原のショップで予約を行い、公式サイトでも専用の外箱に荷札を貼られるのが嫌なので3本購入した結果、発売初日に私の手元には20数本のAIR初回版がありました。更に、名古屋や大阪、確か福岡のショップに至るまで、5千円前後でヤフオクでショップ特典を購入したのが人生最大級の無駄遣いの教訓として良い思い出です。覚えているものでいうと、テレカ、麦わら帽子、時計、ハンカチ3種、タオル、マグカップ、タペストリーと言ったところでしょうか。当時ネットで確認できた特典は全て持っていたので、ことAIRのショップ特典に関しては日本一のオタだったと胸を張って言えます(AIRのショップ特典が全国40種くらいあるとなれば日本一の座は誰かに譲らざるを得ませんが)。お金の使い方としては愚の骨頂でしたが、その反省から社会人になって得る給与の桁が増えてからは無駄遣いをしなくなったので人生トータルで見れば素晴らしいイベントだったと今では言えます。
さて、肝心のゲームですが期待を裏切らないデキでした。ゲーム単品だけでも十分に素晴らしい作品ですが、少しずつ情報が公開される中で期待がどんどん盛り上がるムーブメントの中にいて、その流れの中でプレイできたのも本当に良い思い出でした。テーマ曲とOP動画が公開された時の熱狂と言ったら凄かったです。私は発売日の翌日だか2日後くらいには完全にクリアしたのですが、2chの盛り上がり方も尋常ではなかったです。ストーリーを過去作と比べて更に難解にしたのも、インターネットで考察や議論を白熱させるのに相当プラスに働いたように感じました。個人的にはシナリオそのものよりも、タイトル画面が変わる演出だったり、素晴らしすぎるBGMだったりの方が感動した覚えがあります。ちなみに、うぐぅまでは許せてもがおはちょっと許せませんでした。こんなに素晴らしい作品なのに、どうしてわざわざ一般人を締め出してオタクだけ喜ぶような設定をわざわざ入れるんだと憤慨していた記憶があります。考え方が若いというか青かったですね。


④CLANNAD

泣きゲーのエロはおまけ、Keyのゲームにエロは不要、などと言われ続けていましたが、新作が全年齢対象で出ると聞いた時は非常に驚きました。結局物流の都合やらなんやかんやでエロゲだから売れている部分はあると思っていました。新作情報が出た当時の自分はと言えば、なぜかエロゲであるということに強いこだわりを持っていたため、CLANNADが全年齢と知った瞬間にKeyは裏切り者、育てた恩を忘れやがって的な感じで一切興味を失っていました。エロゲそのものが社会に受け入れられるようになってほしいという良く分からない気持ちをこじらせていました。
というわけで本作をプレイしたのはだいぶ年が経って2015年頃。中国に単身赴任している頃に余暇のおともに購入しました。というわけでここまでの作品とは異なりゲームにまつわるエピソードはほぼ何もないのですが、本作は素晴らしく良かったです。『CLANNADは人生』という言葉がありますが、一人の男の青春時代から親になるまでの、まさに人生を描いた作品でした。そして、確かにどうせあっても薄すぎるエロシーンならあってもなくてもどちらでも良かったですし、その後に麻枝氏の作品を広く大衆に広めていくことを考えると、全年齢対象で出した英断は正しかったのだと思います。それと便座カバー。


⑤智代アフター

CLANNADをプレイした直後に本作をプレイした自分にとっては間違いなく本作は神ゲーでした。自分の中ではCLANNADは渚がメインヒロインであって、渚と結ばれるお話がCLANNADのメインルート。他のキャラとのエンディングはマルチエンドの派生した枝の一つという位置付けでした。従って、智代アフターという本作はマルチエンドのうちの1つをピックアップして話を膨らませたものである、というのが自分のそもそもの認識です。公式から正式に発売されたとはいえ、本作は正史でもなんでもないというのが自分の受け止めです。智代と結ばれる結末を選んだ場合、こんな行く末が待ち受けていたかもしれませんね、程度で捉えていました。誰に言われるでもなくそういった認識だったので、本作のwikiを見て相当数の批判の声が届いて麻枝氏が長らくショックで休職していたという話を見た時は非常に驚きました。え?本作に批判する要素あった?シナリオも演出も素晴らしいし、申し訳ないけど絵もいつもよりレベル高いよね?という純粋な気持ちです。これを読み、かつ本作未プレイでプレイする可能性のある方が一人でもいると思ってネタバレは避けておきますが、本作のラスト近辺の演出はメチャクチャ好きです。ツッコミどころはなくはないですが非常によくまとまった話であり、麻枝氏の能力が間違いなく素晴らしいと自分が感じたのは本作をプレイした直後だったりします。


⑥リトルバスターズ!エクスタシー

大変申し訳ないのですが、私は本作を中途半端にしかプレイしていません。本作を購入した上でプレイを進めていたのですが、あまりのプレイ時間の長さに途中でプレイを断念してしまいました。残念ながらネタバレを食らってしまったこともあり、そして確か既に本作は既に手放してしまったこともあり、残りの人生でプレイすることがあるかどうかはかなり怪しいところではあります。それなのになぜ本作を挙げているかというと、OP曲がメチャクチャ好きだからです。CLANNADや智代アフターや本作をプレイしていた頃、私は中国に単身赴任していました。当時はPM2.5の問題などもあり外を走ることに抵抗感がありました。従って、ホテルのジムのランニングマシンで走りまくるのが特に休みの日の日課だったのですが、その時に一番聞いていたのがリトバスのOPでした。当時の生活を思い返すと月に確実に100回(滞在は1年半なので総数だと×18)くらいは聴いていたはずです。リーフやエルフなどのボーカル曲も聴ける状態にしていましたし、ジャンル的に話題がずれてしまいますがJ-POPは相当好きで詳しい方(SPACE SHOWER TVを観た時間なら負けることはほぼない)なのですが、それらと比べてもKeyの曲は素晴らしく、特にリトバスのOPは自分の好みのど真ん中ストレートでした。bpmの面からも歌詞の面からも、ジムで走る時にピッタリというのも大きかったのでとにかく聴きまくってました。今ではあまり聴かなくなりましたが、久々にこの駄文を書きつつ本曲を思い出したので曲を流してみたところ余裕で直ぐに泣けてきました。涙腺が弱すぎる。
麻枝氏は多方面に能力がありすぎて常にシナリオライターとしての能力と作詞作曲家としての能力とどちらが優れているかと話題になっていますが、リトバスOPにハマりまくった自分は後者に一票を入れたいと思います。ゲームをちゃんとプレイしていないのに、アップテンポな曲なのに、この曲を聴いただけでいつでも冒頭1分でAメロが終わったくらいで泣けるほど、私はこの曲に心酔しています。作詞作曲をどちらもやっているということが大きいのでしょうが、詞の曲へのハマり方が異常だと思ってます。


おわりに

ここまでで上げたゲームは特に思い入れや面白かった印象が強いゲームになります。Key作品で他にプレイしたゲームで言えば以下となります。

MOON(タクティクス)
planetarian 〜ちいさなほしのゆめ〜

MOONは割と良作という評判もありましたが、初回限定版を保有していた癖に結局途中までしかプレイせず。Planetariumは小ぶりなゲームなのでサクっとプレイしました。良くできた作品で十分に面白かったですが、項目に含めるレベルの印象は特になかったです。

さて、直近でビジュアルアーツはテンセントに株式譲渡を行うことを発表しました。今後の活動についてどうなるかは誰にも分かりませんが、引き続き積極的な活動を続けてもらえればファンとしては有難い限りです。


以上、富井サカナでした。
次回はその他メーカーの思い出作品編です!


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