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フットボールのダイヤモンド・オフェンスにおける攻撃サポートの構造化 17 2.2.5 ダイヤモンド・オフェンスは自己組織化オフェンス


2.2.5 ダイヤモンド・オフェンスは自己組織化オフェンスである

フットボールはチームスポーツであり、プレーヤー間で相互作用をしてプレーしている。各プレーヤーを部分として考える還元主義的な方法で分析するのではなく、フットボールを全体論的(ホーリズム)な方法で観察して、プレーヤーは全体の一部であると考える必要があるだろう。

同時にプレーヤーのパフォーマンスの最適化は、フランシスコ・セイルーロが(2002)が提唱するように、各プレーヤーの能力に応じて「異なる最適化」をする必要がある。人間は誰一人として同じではないので:

各プレーヤーが遺伝的および能力の差異によって様々な最適化を実行することを「異なる最適化」と言います。

フランシスコ・セイルーロ(2002)は、アスリートの動的な相互作用を探すダイナミック・システムとしてのプレーヤーのトレーニングを実行するためのチームスポーツの前提条件を提案している:

チームスポーツのための前提条件:
直感的、統合的、全体論的(ホーリズム)、非線形、協力による、質的

フットボールのトレーニングをする時に、上記6つの要素が入っていることが望ましいと考える。ただ、個人的にどのトレーニングにおいても6つの要素全てを入れる必要性があるのではなく、できれば6つの要素が入っているとフットボールのトレーニングとして望ましいという認識で良いのではないかと考える。

フットボールを全体論的(ホーリズム)スポーツ、プレーヤーをダイナミック・システムとして考えると、フットボールには、個人戦術(1対1、2対1、1対2)やグループ戦術(2対2、3対3)というコンセプトは存在するが、集団戦術、集団プレーとしてのフットボールであると考える必要があるのではないだろうか。

フットボールは非常に複雑なスポーツであり、プレーをする環境とプレーヤー間の相互作用によってプレーが成り立っている。非線形で複雑なスポーツであるフットボールは、連続する複雑なプレー状況に適応するために、プレーヤー同士の直感と協力、プレーをする環境とプレーヤー間の相互作用、それらすべてを統合することが必要不可欠であると考える。

プレーヤーは、各プレーヤーの遺伝および能力の差異、プレーをする環境、相手プレーヤーがいる複雑な状況が連続する中で相互作用をしながらプレーしなければならない。相手チームを分析して、プレーヤーとチームのプレー傾向を知ることはできるかもしれないが、その情報だけで試合に勝つことは難しいであろう。

フットボールのダイヤモンド・オフェンスが「自己組織化オフェンス」であると考える理由は、フットボールの試合において同じ状況は2度と存在しないからだ。プレーヤーの前には常に新しい状況(類似な状況であるが)があり、プレーヤーはその状況に素早く適応していかなければならない。人間は過去の記憶から類似した状況を思い出し、未来を予測する力がある。これはプレーを記憶し学習することができることを意味している。フットボールは過去の記憶から類似した状況のプレーを瞬時に選択し実行してプレー状況に適応する。そのプレーをした経験を記憶し学習する。私はこれが自発的秩序形成「自己組織化」であると考える。

フットボールは全体論的(ホーリズム)な特徴を持っている。別々に部分(プレーヤー)を理解することでは、チームというシステム全体を理解することはできない。もしかすると、フットボールは集団戦術、集団プレーしか持たないスポーツなのかもしれない。


参考・引用文献

Seirul-lo, Vargas, Francisco. La preparación física en deportes de equipo, Entrenamiento estructurado. Valencia 2002.

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