ブロックチェーン/仮想通貨/ICOをデザイナー視点で勉強してみた(初心者編)
こんにちは。のっちです。
先週末2日間、ブロックチェーンを中心としたビジネスを理解・実践するワークショップに参加しました。
「ビットコインってブロックチェーンっていう意味ですか...?」という意味不明な質問をしていた程度の僕が最終的にブロックチェーンを使ったビジネスモデルを考えるというところまでやりました。めっちゃ頭使いました...。
デザイナーの中でもまだこのあたりの知識が整理できていない方は多いのではと思ったので、そこで得た知識のまとめと、デザイナーがどのようにブロックチェーンビジネスに関わるのかを書いていきたいと思います。
今回はデザインはあまり関係ない記事なので、ブロックチェーンに興味ない方はスルーしていただけるとありがたいです。
今回の記事を読めば、たとえば最近のこの辺りで「なんでindiegogoが?」「なんでセキュリティトークンなんだ?」「なんでホテル不動産なんだ?」みたいなことは理解できるようになると思います!
(参加する前の僕の知識レベルは酷いものでしたので、違っていることありましたら指摘いただけると嬉しいです)
目次
1. ブロックチェーン基礎知識
2. ICOについて
3. ブロックチェーンを利用したビジネスで考えること
1. ブロックチェーン基礎知識
ブロックチェーンとは
ブロックチェーンとは、「みんなのすべてのやりとりをみんなで管理するデータベースの仕組み」のこと。
これまで、多くのシステムでは、中央に管理者がいて、人は管理者とやりとりをしていた。その場合、管理者とそれぞれの間でデータベースが蓄積される。
銀行で考えると、銀行と人がそれぞれやりとりをしており、銀行と人との間で「通帳」という形でデータベースが蓄積されている。
それを中央を置かない仕組みにするとしたら?
最も効率的なやり方は、「全てのやりとりをひとつのデータベースに統合して、それをみんなで管理する」というもの。
ブロックチェーンでは、それぞれのやりとりを『ブロック』に格納し、それを『チェーン』で繋げることで、ひとつのデータベースとしてみんなで管理する仕組みをとっている。
何がメリットなの?
色々あるけど、主には以下の2点。(デメリットはあとあと触れます)
①『中央が圧倒的なパワーを持つ』ということがなくなる
ブロックチェーンの仕組みとして、中央管理者を持たないようにしているから。
②中央の悪意によって、データが改ざんされることがなくなる
これは①から受ける恩恵。
でも誰かが改ざんするかもしれなくない?
そう。
だから、開発されたブロックチェーンがいかに優れているかは、この「みんなで管理するみんなのデータベース」を「正しい!」と認証する(合意形成という)仕組みづくりにかかっている。
この合意形成する仕組みはいろんなやり方がある。
誰が合意形成に参加するの?という問いについてはこんな感じ。
まずは誰でも合意形成に参加できる『パブリック』型。これはこの後触れるビットコインが典型例。
「誰でも『このやりとり正しいです!』って判断するなんて無理じゃない?限られた専門家がやったほうがいいでしょ」という考えで特定の人(企業)のみが合意形成に参加できるのが『コンソーシアム』型。
もっといくと「一番早いのは1社で許可するのがいいよな...」という考えのもと、1社のみが合意形成するのが『プライベート』型。
「え?プライベート型ってさっきのブロックチェーンのメリット享受できてます?」と気づいた方は鋭い。もはやこれは中央集権型に近い。この辺りはブロックチェーンの問題点として考えられているし「そもそもこれってブロックチェーンなんですか?」という議論を呼ぶところ。
こういった合意形成の形としてとても優れているのがビットコイン。
ビットコインとは
ブロックチェーンの技術を利用して作られた仮想通貨がビットコイン。
(『ブロックチェーンの技術を利用して』と書いたが、厳密には逆で、ビットコインを作るために、ブロックチェーンの技術が生み出されており、そのブロックチェーン部分が暗号通貨以外にも使えるのでは?と考えられ、ブロックチェーンのビジネスが生まれているのが今)
ビットコインはブロックチェーン上で生み出され、ビットコインを持っている人の間で取引される。その取引記録はすべてブロックチェーン上に記録されている。
ビットコインの場合、その取引が「正しい」と合意形成するためには、超難しい計算式を解く必要がある。この計算式のアルゴリズムがビットコインの優れているポイント。Proof of Workと呼ばれる。
そして超難しい計算式を解いてそれが「正しい」と証明した人にはインセンティブとしてビットコインが渡される。
ビットコインがもらえるからみんながこの計算式を解きたいと思う。
→計算式を解く人がいると、「取引が正しい」という絶対的な保証ができるようになる。
→信頼度が高まって使う人が増える。
→使う人が増えるとビットコインの価値が上がる。
→だからビットコインが欲しくなる
この無限ループによってビットコインは急成長した。
(難しい計算についても説明してもらったけどブロックチェーンの本筋とは逸れるので割愛。詳しくはこちらとか)
イーサリアムやネムなど、多くの仮想通貨があるが、要はこの合意形成のプロセスの違いによって生まれている。上に書いたことからわかるように、より優れた合意形成のプロセスが生まれれば、それだけ信頼度が高くなり、流通が増え、その通貨の価値が高まるから。詳しくはこちらとか
しかし多くの通貨はビットコインのパラメータを少しいじったもの。新規ですべて開発する必要がないことも多いので、仮想通貨関係のエンジニアになるのはそこまでハードルの高いものではないことが多い(らしい)。
ブロックチェーンの基礎知識はひとまずここまで。
2. ICOとは
ICOとは、Initial Coin Offeringの頭文字をとったもので、仮想通貨を利用した、新しい資金調達の方法。トークンを発行して投資家からお金を募り、資金を調達する方法。
トークンと仮想通貨の違い
上の図がわかりやすいが、トークンは仮想通貨の一部。(トークンという語源からすると「仮想通貨はトークンの一部」という捉え方もできる)
ビットコインは独自のブロックチェーンを用いて新しく開発された仮想通貨、トークンとは既存のブロックチェーンを用いて作られた仮想通貨のこと。
つまり新しい合意形成の方法から開発しているのがビットコインなどで、すでに開発された合意形成の方法を用いて作られた仮想通貨がトークン。
ビットコインなどは、ブロックチェーンの仕組みを作った時に供給量などがプログラムされているため、供給量を定めることができず、そのため価値の上下も第三者が決めることはできない。
しかし、トークンは既存の仮想通貨を元に第三者が作っているため、供給量や独自ルールを設けることができる。
ICOにおけるトークンの種類
ICOにおいて、トークンは2種類ある。「ユーティリティトークン」と「セキュリティトークン」の2種類。今行われているICOのほとんどはユーティリティトークンをベースにしたICO。
ユーティリティトークンとは
簡単にいうと「需給バランスによって価格が算定される」のがユーティリティトークン。つまり、トークン発行体の業績に連動している訳ではなく、あくまでそのユーティリティトークンを持っている人たちのコミュニティが盛り上がればトークンの価値が上がるというICOである。
良い面としては、「広がりが健全なインセンティブを持つ」ということ。つまりそのトークンを広げれば広げるほどコミュニティが広がり、価値が上がるので、持っている人たちがバイラルでどんどん広げようとして、資金が集まりやすい(良いICOだと思ったら資金がどんどん集まる。)
その一方で構造上ネガティブな側面なのは複数ある。
まずは「理論価格が算定できない」こと。ユーティリティトークンがある程度普及した後は価格を算定することができるが、事前にどれだけこのトークンがバズるかなんてわからないので、ICOを開始するより前に価格の出しようがない。だから事前の予測が困難。
次に、「知らずに大きな損をうむ可能性がある」こと。需給バランスによって価格が決まるということは、会社の業績と連動していないということ(100%リンクしていない訳ではない)。そのため、発行元の事業がなんであれ、トークンのコミュニティが盛り上がればお金を集めることができるので、リテラシーの低い人が購入してその後トークンの価値が暴落したり、場合によっては犯罪の温床になってしまう可能性もある。
最後に「法整備が追いついていない」こと。トークンで集めたお金には現状「こういうことに使わなければならない」という制約がない(なぜなら事業ではなくコミュニティに連動した価値算出だから)。そのため、トークンで集めたお金で海外に別荘買いまくっている人とかもいる。
このようにネガティブな側面も色々あるのがユーティリティトークン。特に「法整備が追いついていない」というのは問題で、現状の資本主義ではおそらく理論価格が算出できないため、法で縛っていくのはかなり難しい。しかもICOは世界中で同時に行える(日本では購入不可)ので、世界で足並みを合わせて規制を敷いていくのは結構無理。
そこで現状価格が認識しやすい/資本主義でも足並みを揃えやすい ことで注目を集めているのがセキュリティトークン。
セキュリティトークンとは
セキュリティとは日本語で「証券」。つまり有価証券と同等の効果を持つものとして使用されるのが、セキュリティトークン。株式や債券、投資信託と同じように考えることができるのがセキュリティトークン。
セキュリティトークンには複数の種類があり、代表的なものは以下のもの(呼び方は色々あるみたい)。
Equity-backed token:会社の業績に応じてトークンの価値が変動し、トークン保持者に見返りがある。株式にかなり近い
Project-backed token:プロジェクトごとの業績に応じてトークンの価値が変動し、トークン保持者に見返りがある。
Property-backed token:不動産などの資産価格の変動に応じてトークンの価格が変動し、トークン保持者に見返りがある。REITにかなり近い
上を見ればわかるように、セキュリティトークンは、現代のお金のルールに近づけて制御されたトークンと言える。
これにより、セキュリティトークンは、ユーティリティトークンが持っていた「理論価格が算定できない」「知らずに大きな損をうむ可能性がある」「法整備が追いついていない」というネガティブポイントを無くした。
セキュリティトークンによるICOは、明確にユーティリティトークンと区別する必要があるので、STO(Security Token Offering)と呼ばれている。
こういう記事も出ている。
もはやSTOの意味があるのか?
セキュリティトークンにより、法整備がしやすくなるので、ICO/STO周りの胡散臭さは解消され、急激に資金調達が行いやすくなると言われている。
しかしセキュリティトークンが既存の株式などと同等の効果を持つのであれば、もはやSTOの意味があるのか?株式を使用すればいいのではないか?という疑問が出る。
株式と比較してSTOの最も異なる点は、「グローバルに、瞬時に資金を集められる」ということ。どうしても株式だとその国でしか資金を調達できなかったり、非公開の投資でも投資できるのは一部の投資家に限られてしまう。それを解決できるのがSTO。
また、株式を希薄化せずに大型の資金を集めることができるという面もある。(ただしSTOで資金を集めると、そのトークン保持者には何かしらの金銭的な見返りを数年内に与えることがルールであることが多いので、希薄化はしないが損失が出るのは事実)
あとは世界中に自分のプロダクトを周知できるなど。ここはKickstarterとかと近い気がする。
ただ、STOって資本主義に合わせようとして仮想通貨としての良さを80%くらい消してるのでは...というのが感じた印象。なんかオトナの都合に合わせた感がすごいあるような。
ICO/STOの今後
最後に、ICO/STOが今後どのように変わっていくのか。
まずは様々な価値のトークン化が進行する。色々なものがトークン化して価値を持つ。今価値がないと思われているものも価値を持つようになるだろうが、その時に現在の価値とのリンクがキーとなる。VALUやタイムバンクなどはその先陣と言える。
次にトークンの流動性の進歩。トークンを実際に使えるところが増えたり、トークン間のやりとりがしやすくなったり。まだセキュリティトークンを扱う取引所がないみたいですが、多分1年しないうちにできるのでは。
最後にICOとSTOの棲み分けがより進む。それぞれに適切なプロジェクトがわかり、それに応じて規制もされていく。
少なくとも多分上場企業はSTOしかできなくなりそう。
デザイナーとしては
最後に、個人的にデザイナーとしてどのように関わっていくことができそうかについて。
おそらくSTOは既存の証券会社のリプレイスなので、そこに絡んでいくことはなさそう。
しかしICOはコミュニティを大きくすることが価値を上げていく源泉になるので、コミュニティをより強く、大きくするデザインはこれから必要になってくるだろうなと感じた。今はプロダクトの最終ゴールは「コンバージョンをあげること」「売り上げを伸ばすこと」などが多いと思うが、近い未来に「プロダクトに愛着を持つコミュニティが大きくなること」というゴールが入ってくる可能性が高いので、それをビジュアルとどう絡めて考えていくのか、というところは考える必要があると思った。
以上がICOについての話。
3. ブロックチェーンを利用したビジネスで考えること
最後は、ブロックチェーンを応用したビジネスプラン構築のワークショップを実施しました。そこで学んだことを書いていきます。
中央集権によってマイナスな側面がある場所がポイント
ブロックチェーンの根幹にあるのは「中央集権」が「非中央集権」になるということ。
世の中には中央集権であるために非効率になっている場所がたくさんある。その非効率が世の中の多くの人のペインとなりコミュニティが生まれる場所が、ブロックチェーンでビジネスになりやすいポイント。
最終プランで上がった例だと、
『入国審査に関する情報が中央集権的になっているために、世界中で空港ではめっちゃ待たされるし、その割に危険な人入ってテロとか起こってる。→個々が情報を分散化して所持し、改ざんできないように設計すれば、入国がスムーズになる&危険な人は入ってこなくなる』など。
すごくでかいことだが、ゆくゆくは確実に誰かがするのでは... ?
情報の改ざんのリスクが高い場所がポイント
ブロックチェーンのメリットは情報改ざんができないところ。中央集権的に情報が集められているために情報改ざんのリスクがあり、それによって多くの人が損失を被るところは、ブロックチェーン技術で解決できる可能性がある。
昨今自動車の部品の不備のためにリコールが一斉に起こったりするものは、どこかで情報が改ざんされている可能性が高い。そういうことは解決できるかも...?
大規模な社会実験に向いている
ブロックチェーンのビジネスは、どうしても大規模なものとなる。なぜなら非中央集権にしてメリットを受ける人が多い部分がブロックチェーンのビジネスになるから。
だからMVP作ってリーンに進めていく...みたいなのはかなりスキルがいるイメージ。
ブロックチェーンのビジネスのヒントはすでに当たり前だと思われている制度や価値観に含まれているので、「そもそもこのルールって正しいんだっけ?」という問いを持って、破壊的イノベーションを起こしにいくビジョンが必要となる。
インセンティブ設計は難しいがデザイナーの出番かもしれない
ブロックチェーンは分散化して情報の改ざんリスクを劇的に減らすことができる一方、「これは正しいです」と合意形成する人が必要であり、その人にインセンティブを与える必要がある。
ビットコインの場合はそのコインがもらえることでうまくいくが、他のビジネスにおいてはそうはいかない(ビットコインはそれ自体に大きな価値があるから欲しいけど、ビットコイン以外だったらそんなに価値がないかもしれないから)。
適切な人に「合意形成に参加したい」と思わせる合意形成へのインセンティブ設計、そして「不正をしても意味なさそうだ」と思わせる不正に対する負のインセンティブ設計が、ブロックチェーンビジネスを設計する上でとても重要。
実際、インセンティブ設計がうまくいっているビジネスは多くない(特に日本では)が、どのようにインセンティブ設計を行うのかという点は、先ほどあげたICOと同じようにデザイナーの役割になる可能性はあると思う。
以上です。これでブロックチェーンや仮想通貨周りのビジネスの良し悪しを少しは判断できるようになる..はず!
これを読んだ方もそうなってくださると嬉しいです。
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