介護芸人の日記|さかまき。(マッハスピード豪速球)

コント職をしつつ介護職もしています。ビートたけし杯優勝。 ここでは「介護芸人の日記」を…

介護芸人の日記|さかまき。(マッハスピード豪速球)

コント職をしつつ介護職もしています。ビートたけし杯優勝。 ここでは「介護芸人の日記」を書いていきます。老人介護の日常。それはファンタジー。 Twitter➡http://bit.do/fNDpd Youtube➡http://bit.do/fNDpd

最近の記事

ギターかき鳴らす西さん

人に歴史あり―― というのは介護をしていると、よく感じる。 今はご老体で身体が思うように動かず、認知症であったり、おむつが必要であったりするわけだが、そりゃあ諸行無常、世の常ってやつなんで仕方ない。 そんなお爺さまお婆さまにも、必ずみな若き日があった。青春と言い換えてもよい。 これまでにもこちらの日記で、 帰国子女のお婆様だったり、元一流インテリアデザイナーのお爺様だったり、いろいろ利用者さまを紹介してみたけど、今回は特に、その経歴に驚かされたお爺さまをご紹介したい。

    • 船を待つ小野さん

      認知症の方との会話はなかなか難しい。 ――このひとは一体何をいっておるんだ?? と思うことがよくある。多々ある。その連続である。 そういうとき、どう対応するか? これは介護のワザの見せ所。解読困難なことをおっしゃったお爺さんに対し 何いってんの、まじイミフー。やばみざわ と返してしまって介護失格なのである。 数年前。 小野さん(仮)いうお爺様がいらっしゃった。 足腰、身体はしっかりして健康な方だったが やはり認知症。これまで出会ったご老人の中でも特に会話がファンタジ

      • 「男の中の男」の吉田さん

        こうやって介護日記を書いてると、周りの芸人さんやら、知り合いの方から 「僕も介護やってるんですよ。僕も実はこんな話があって」 と教えてもらえる事がある。 これはとあるライブスタッフの(Aさん・男性)から訊いた話で、なかなか強烈だったので、せっかくなのでちょっとお伝えしたい。 Aさんが働く施設に吉田さん(仮)という新しいお爺さまが入居なさった。 もの静かなお爺様で、特別なにかの疾患があったりなどはなく比較的健康な方とのことであった。 ――初めて吉田さんがやって

        • 東京オリンピックとヨシコさん

          2021年7月23日。東京オリンピック開会式。 みなさんご覧になったろうか? 視聴率56%っつう、なんか昭和のテレビみたいな 力道山とか、8時だよ全員集合の停電のやつとか、そんな数字を叩き出したとの事なので、きっと観た人も多いだろう。 家族で観た人。1人で酒飲んで観た人。友達とわーわーツッコみながら観た人。 いろんなパターンがあるだろうけども自分はというと、 この歴史的瞬間をヨシコさん(仮)と見た。 ヨシコさんというは、ご想像通り。そう。利用者様のご老婦である。 ――

          ドスケベの赤井さん

          エロじじい、なんて言葉がある。 文字通り、エロい老人のことを言う。 ただ、このエロじじい。 漫画の中の世界ではよくいたりするけども、例えば亀仙人がエアロビクスの映像を見て鼻血出すだとか、 らんま1/2で八宝菜が下着泥棒の常習犯だとか。 ま漫画のチョイスの古さはイジらないでほしいのだけど、兎に角、現実世界の介護施設で、認知症だったりするご老人に「エロ」はさすがに無縁だと思っていた。 そこでご紹介したいのが、 赤井さん(仮名)というお爺さまである。 赤井さんは背が高くて立派

          魔法の大丈夫 白石夫婦

          昔、白石夫妻という、ご夫婦で入居されていた方がいらっしゃった。 奥さんをチヨさん、旦那さんをトシオさんといった。 トシオさんは地蔵のように寡黙だったが、素直で、物分かりもよく、手のかからない方だった。 チヨさんの方は、これがなかなか大変な方で、とにかくすっごくネガティブで、一言でいってしまえばメンヘラであった。夜な夜な 「ああああー、怖い。怖いの。ねえ!ねえねえ!そこにいる人、ねえ怖いの!」 とベッドで言い出すことが多々あった。事務作業していた自分が心配して、駆け寄って

          靴下中毒のキヨシさん

          靴下を何枚も重ねて履いているおじいさんがいた。 コンスタントに4,5枚は履いていた。 と唐突に書き出してみたけども、とにかくそういう方がいた。 「え、冷え性すぎない? 分厚い一枚でよくね。マジやばたにえん」 と言う女子がいるかもしれないので説明すると、 認知症の方の特徴に「ひとつの行動に固執する」というのがある。 例えば、机をずーっとティッシュで拭いてみたり。もってきた鞄の中身を繰り返し出し入れしたり、メモ用紙にずっとなんか書いてたり・・・ 例をあげればキリがないけど

          ミスター偏食の岡爺

          お年寄りは好き嫌いをしない。 というイメージが自分にはけっこうあった。 その背景はお年寄りイコール『戦争をガチ体験した人達』という印象が強いからだろう。 「好き嫌いせず食べなさい!戦争中は食べ物がなくてみんな大変だったんだよ!」 というお母さんの説教は常套句。ご老人への敬意でもある。 え、ストップっ!それ言うならさ、 好き嫌いせず食べなさい!アフリカには食べられない子供がいるんだよっ! じゃない? という人がいたら、そのパターンも確かにあるけど話の筋とアフリカは関係ない

          ファッションリーダーのキヨシさん

          自分も介護職をやって初めて知ったのだが、介護界には 『介護しすぎてはいけない』 という鉄則がある。 例えば、ごくゆっくりではあるが歩くことができるお爺さまがいる。 これをどこからともなく職員が飛んできて 「はーい大丈夫?さあこの手に捕まって。歩くよ、ワンツー、ワンツー」 なんて毎回やってしまうと このお爺さまは 「おん?こりゃ楽でいいや。マジ癖になる。次歩くときもシクヨロ」 て感じになり、次第にひとりで歩くことができなくなってしまう。 ムズめな言葉でこれを 「ADL(日

          帰国子女のハルさん

          「今日から新しい人がいるから」 ある日出勤したら先輩スタッフにそう言われた。 「あそこで寝てる人。ハルさんって女性の人なんだけど」 ベッドを覗き込むと、小柄でピンク色のパジャマを来た実にかわいらしいお婆様がすやすや寝息を立てていた。 ひと通り食事量がどうだとか、トイレ介助の仕方がどうだとか、 申し送りを伝える中に 「あと、なんか帰国子女らしい」 というちょっと気になることを言った。 「へぇ、帰国子女・・・」 「ほら」 と言って、先輩スタッフは経過表を指さした。

          年金合宿の福本さん

          「ねえ父さん、こういう施設なんだけど……そんな悪いところじゃないみたいだし……週に一回は会いにいくよ……どうだろう。試しに一回入ってみない?」 なんて。 こんな台詞、ドラマや映画で訊いたことがあるだろう。 意を決して、実の父親に介護施設を進める――大抵は緊張感のあるシーンで、じっさい現実、かなりデリケートな部分かと思うのだけど、といって、別に自分みたいないち夜勤介護職員のお笑い風情がこんなシビアな家族会議の現場に立ち合うわけが無い。想像の域を超えぬ。 しかし ああ・・

          姿を消した二郎さん

          ドラマ『俺の家の話』は、 介護をあつかったTBS系の人気ドラマで、つい先日最終回を迎えた。 皆さんご覧なったろうか?  介護芸人ということで、坂巻さんはどんな感想を持ったんですか? 気になります! ぜひ聞かせてください! と誰にも言われてないのだが、一応感想を述べようかと思うのだけども。 いやあ、さすがクドカン。もう最高だったね。西田敏行も長瀬くんも演技やばいし。あと戸田恵梨香はやっぱ可愛い。ボクも山賊抱きしたい。あと長州力のシーンぜんぶ笑えたー。 とか そういう、

          侵入者と戦うフサコさん

          「ここはどこなの??」 と思って生活している利用者さんはけっこう多い。 もちろん施設へ来所するときに、家族に見送られ、車に乗り、 よろしくお願いします、つってスタッフに挨拶とかしてるんだが、そこはやはり認知症。ぜんぶ忘れてしまう。 普通に教えてあげればいいじゃん。 それな。と思う女学生もいるかもしれないが、そう一筋縄ではいかない。 「ここはお年寄のための施設です。〇〇さんはご高齢なのでご家族が心配して預けられたんです」 と説明を試みても、 ちょっと何いってるか分かんない

          ゴミ屋敷の高木さん

          あるとき高木さん(仮)という、お爺さんが新たに入居した。 ふつうは何日か前から新しい人が入る、などの情報があるものだが、高木さんという方は急遽の受け入れということだった。 「高木さんてどんな感じの方ですか?」 新しい利用者さんが入ると、その人となりや性格、以前のご職業、トイレ対応のやり方、食事量など、いろいろ情報を知っとくもんである。 「んー、すごい礼儀正しい感じの人で、いい人そうな爺さんなんだけど」 「あ、そっすか。それはよかった」 「たださー」 部屋の奥で、す

          「ご飯はまだか」の青木さん

          「飯はまだかぁ?」 「おじいちゃん。さっき食べたでしょ?」 「あーそうか。で、飯はまだかぁ?」 執拗なまでにループするこのやり取り。 巨匠志村けん氏の「飯はまだかぁ」の名セリフが脳裏に刻まれてる世代はきっと多い。子供のころ何も考えず、鼻垂らして、しむけんサイコーげらげらげら、と笑っていたんだろうが、介護の現場に入って知ったことがある。 実はあれはまったく、デフォルメされた世界ではない。 介護の現場においては超日常茶飯事、通例行事。超あるあるネタだったのである。はじめて、

          動物が見えるキヨさん

          介護施設で夜勤を始めて、もう10年近くになる。 夜に出勤すると5~10人くらいのお年寄りが眠っている。 仕事内容は、下のお世話。安否確認。 朝になると着替えを手伝い、朝食を作り、薬を出し、布団を畳み、書類を書く。 かれこれ100人以上のお年寄りに出会ってきた。 そのほとんどが、認知症の方である。 認知症と聞くと、大変そうな仕事だねー、えらいねー、 といやに褒めてもらわれがちだが、実をいうと自分は認知症の方と接することに、 それほど大変とも感じてなく、そら大変な時もあるん