人に歴史あり―― というのは介護をしていると、よく感じる。 今はご老体で身体が思うように動かず、認知症であったり、おむつが必要であったりするわけだが、そりゃあ諸…
認知症の方との会話はなかなか難しい。 ――このひとは一体何をいっておるんだ?? と思うことがよくある。多々ある。その連続である。 そういうとき、どう対応するか? …
こうやって介護日記を書いてると、周りの芸人さんやら、知り合いの方から 「僕も介護やってるんですよ。僕も実はこんな話があって」 と教えてもらえる事がある。 これ…
2021年7月23日。東京オリンピック開会式。 みなさんご覧になったろうか? 視聴率56%っつう、なんか昭和のテレビみたいな 力道山とか、8時だよ全員集合の停電のやつと…
エロじじい、なんて言葉がある。 文字通り、エロい老人のことを言う。 ただ、このエロじじい。 漫画の中の世界ではよくいたりするけども、例えば亀仙人がエアロビクスの映…
昔、白石夫妻という、ご夫婦で入居されていた方がいらっしゃった。 奥さんをチヨさん、旦那さんをトシオさんといった。 トシオさんは地蔵のように寡黙だったが、素直で、…
靴下を何枚も重ねて履いているおじいさんがいた。 コンスタントに4,5枚は履いていた。 と唐突に書き出してみたけども、とにかくそういう方がいた。 「え、冷え性すぎな…
お年寄りは好き嫌いをしない。 というイメージが自分にはけっこうあった。 その背景はお年寄りイコール『戦争をガチ体験した人達』という印象が強いからだろう。 「好き…
自分も介護職をやって初めて知ったのだが、介護界には 『介護しすぎてはいけない』 という鉄則がある。 例えば、ごくゆっくりではあるが歩くことができるお爺さまがいる…
「今日から新しい人がいるから」 ある日出勤したら先輩スタッフにそう言われた。 「あそこで寝てる人。ハルさんって女性の人なんだけど」 ベッドを覗き込むと、小柄でピ…
「ねえ父さん、こういう施設なんだけど……そんな悪いところじゃないみたいだし……週に一回は会いにいくよ……どうだろう。試しに一回入ってみない?」 なんて。 こんな…
ドラマ『俺の家の話』は、 介護をあつかったTBS系の人気ドラマで、つい先日最終回を迎えた。 皆さんご覧なったろうか? 介護芸人ということで、坂巻さんはどんな感想を…
「ここはどこなの??」 と思って生活している利用者さんはけっこう多い。 もちろん施設へ来所するときに、家族に見送られ、車に乗り、 よろしくお願いします、つってスタ…
あるとき高木さん(仮)という、お爺さんが新たに入居した。 ふつうは何日か前から新しい人が入る、などの情報があるものだが、高木さんという方は急遽の受け入れということ…
「飯はまだかぁ?」 「おじいちゃん。さっき食べたでしょ?」 「あーそうか。で、飯はまだかぁ?」 執拗なまでにループするこのやり取り。 巨匠志村けん氏の「飯はまだか…
介護施設で夜勤を始めて、もう10年近くになる。 夜に出勤すると5~10人くらいのお年寄りが眠っている。 仕事内容は、下のお世話。安否確認。 朝になると着替えを手伝い、…
介護芸人の日記|さかまき。(マッハスピード豪速球)
2021年10月31日 08:12
人に歴史あり――というのは介護をしていると、よく感じる。今はご老体で身体が思うように動かず、認知症であったり、おむつが必要であったりするわけだが、そりゃあ諸行無常、世の常ってやつなんで仕方ない。そんなお爺さまお婆さまにも、必ずみな若き日があった。青春と言い換えてもよい。これまでにもこちらの日記で、帰国子女のお婆様だったり、元一流インテリアデザイナーのお爺様だったり、いろいろ利用者さ
2021年10月11日 02:27
認知症の方との会話はなかなか難しい。――このひとは一体何をいっておるんだ??と思うことがよくある。多々ある。その連続である。そういうとき、どう対応するか?これは介護のワザの見せ所。解読困難なことをおっしゃったお爺さんに対し何いってんの、まじイミフー。やばみざわと返してしまって介護失格なのである。数年前。小野さん(仮)いうお爺様がいらっしゃった。足腰、身体はしっかりして健
2021年9月1日 18:10
こうやって介護日記を書いてると、周りの芸人さんやら、知り合いの方から 「僕も介護やってるんですよ。僕も実はこんな話があって」 と教えてもらえる事がある。これはとあるライブスタッフの(Aさん・男性)から訊いた話で、なかなか強烈だったので、せっかくなのでちょっとお伝えしたい。 Aさんが働く施設に吉田さん(仮)という新しいお爺さまが入居なさった。もの静かなお爺様で、特別なにかの疾患があ
2021年8月6日 17:43
2021年7月23日。東京オリンピック開会式。みなさんご覧になったろうか?視聴率56%っつう、なんか昭和のテレビみたいな力道山とか、8時だよ全員集合の停電のやつとか、そんな数字を叩き出したとの事なので、きっと観た人も多いだろう。家族で観た人。1人で酒飲んで観た人。友達とわーわーツッコみながら観た人。いろんなパターンがあるだろうけども自分はというと、この歴史的瞬間をヨシコさん(仮)
2021年6月29日 23:33
エロじじい、なんて言葉がある。文字通り、エロい老人のことを言う。ただ、このエロじじい。漫画の中の世界ではよくいたりするけども、例えば亀仙人がエアロビクスの映像を見て鼻血出すだとか、らんま1/2で八宝菜が下着泥棒の常習犯だとか。ま漫画のチョイスの古さはイジらないでほしいのだけど、兎に角、現実世界の介護施設で、認知症だったりするご老人に「エロ」はさすがに無縁だと思っていた。そこでご紹介
2021年6月14日 15:26
昔、白石夫妻という、ご夫婦で入居されていた方がいらっしゃった。奥さんをチヨさん、旦那さんをトシオさんといった。トシオさんは地蔵のように寡黙だったが、素直で、物分かりもよく、手のかからない方だった。チヨさんの方は、これがなかなか大変な方で、とにかくすっごくネガティブで、一言でいってしまえばメンヘラであった。夜な夜な「ああああー、怖い。怖いの。ねえ!ねえねえ!そこにいる人、ねえ怖いの!」
2021年6月1日 20:05
靴下を何枚も重ねて履いているおじいさんがいた。コンスタントに4,5枚は履いていた。と唐突に書き出してみたけども、とにかくそういう方がいた。「え、冷え性すぎない? 分厚い一枚でよくね。マジやばたにえん」と言う女子がいるかもしれないので説明すると、認知症の方の特徴に「ひとつの行動に固執する」というのがある。例えば、机をずーっとティッシュで拭いてみたり。もってきた鞄の中身を繰り返し出
2021年5月22日 22:56
お年寄りは好き嫌いをしない。というイメージが自分にはけっこうあった。その背景はお年寄りイコール『戦争をガチ体験した人達』という印象が強いからだろう。「好き嫌いせず食べなさい!戦争中は食べ物がなくてみんな大変だったんだよ!」というお母さんの説教は常套句。ご老人への敬意でもある。え、ストップっ!それ言うならさ、好き嫌いせず食べなさい!アフリカには食べられない子供がいるんだよっ! じゃ
2021年5月11日 15:33
自分も介護職をやって初めて知ったのだが、介護界には『介護しすぎてはいけない』という鉄則がある。例えば、ごくゆっくりではあるが歩くことができるお爺さまがいる。これをどこからともなく職員が飛んできて「はーい大丈夫?さあこの手に捕まって。歩くよ、ワンツー、ワンツー」なんて毎回やってしまうとこのお爺さまは「おん?こりゃ楽でいいや。マジ癖になる。次歩くときもシクヨロ」て感じになり、次
2021年4月30日 04:29
「今日から新しい人がいるから」ある日出勤したら先輩スタッフにそう言われた。「あそこで寝てる人。ハルさんって女性の人なんだけど」ベッドを覗き込むと、小柄でピンク色のパジャマを来た実にかわいらしいお婆様がすやすや寝息を立てていた。ひと通り食事量がどうだとか、トイレ介助の仕方がどうだとか、申し送りを伝える中に「あと、なんか帰国子女らしい」というちょっと気になることを言った。「
2021年4月19日 11:16
「ねえ父さん、こういう施設なんだけど……そんな悪いところじゃないみたいだし……週に一回は会いにいくよ……どうだろう。試しに一回入ってみない?」なんて。こんな台詞、ドラマや映画で訊いたことがあるだろう。意を決して、実の父親に介護施設を進める――大抵は緊張感のあるシーンで、じっさい現実、かなりデリケートな部分かと思うのだけど、といって、別に自分みたいないち夜勤介護職員のお笑い風情がこんなシビ
2021年4月3日 22:36
ドラマ『俺の家の話』は、介護をあつかったTBS系の人気ドラマで、つい先日最終回を迎えた。皆さんご覧なったろうか? 介護芸人ということで、坂巻さんはどんな感想を持ったんですか?気になります! ぜひ聞かせてください!と誰にも言われてないのだが、一応感想を述べようかと思うのだけども。いやあ、さすがクドカン。もう最高だったね。西田敏行も長瀬くんも演技やばいし。あと戸田恵梨香はやっぱ可愛い
2021年3月16日 15:49
「ここはどこなの??」と思って生活している利用者さんはけっこう多い。もちろん施設へ来所するときに、家族に見送られ、車に乗り、よろしくお願いします、つってスタッフに挨拶とかしてるんだが、そこはやはり認知症。ぜんぶ忘れてしまう。普通に教えてあげればいいじゃん。それな。と思う女学生もいるかもしれないが、そう一筋縄ではいかない。「ここはお年寄のための施設です。〇〇さんはご高齢なのでご家族が
2021年3月6日 20:39
あるとき高木さん(仮)という、お爺さんが新たに入居した。ふつうは何日か前から新しい人が入る、などの情報があるものだが、高木さんという方は急遽の受け入れということだった。「高木さんてどんな感じの方ですか?」新しい利用者さんが入ると、その人となりや性格、以前のご職業、トイレ対応のやり方、食事量など、いろいろ情報を知っとくもんである。「んー、すごい礼儀正しい感じの人で、いい人そうな爺さんな
2021年2月22日 16:34
「飯はまだかぁ?」「おじいちゃん。さっき食べたでしょ?」「あーそうか。で、飯はまだかぁ?」執拗なまでにループするこのやり取り。巨匠志村けん氏の「飯はまだかぁ」の名セリフが脳裏に刻まれてる世代はきっと多い。子供のころ何も考えず、鼻垂らして、しむけんサイコーげらげらげら、と笑っていたんだろうが、介護の現場に入って知ったことがある。実はあれはまったく、デフォルメされた世界ではない。介護
2021年2月17日 18:56
介護施設で夜勤を始めて、もう10年近くになる。夜に出勤すると5~10人くらいのお年寄りが眠っている。仕事内容は、下のお世話。安否確認。朝になると着替えを手伝い、朝食を作り、薬を出し、布団を畳み、書類を書く。かれこれ100人以上のお年寄りに出会ってきた。そのほとんどが、認知症の方である。認知症と聞くと、大変そうな仕事だねー、えらいねー、といやに褒めてもらわれがちだが、実をいうと自