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社会福祉士国家試験対策 7割を目指す講義NO.1~3 憲法



権利擁護と成年後見制度についての試験対策について

最近の傾向

第30回試験までは、成年後見制度が中心に出題されていましたが、第31回試験では、憲法、民法、行政法など、各分野から満遍なく均等に出題されています。ただ、最近、また成年後見制度に関する事項の出題頻度が高くなってきているという傾向はあると言えます。これは、ここ最近の成年後見制度にかかわる国の政策動向、つまり、成年後見制度利用促進法、成年後見制度利用促進基本計画などの動向が影響しているものになります。
このような状況にあるので、試験対策としては、まずは、成年後見制度を中心にして学習し、その後、徐々に各分野を万遍なく学習していくのがよろしいかと思います。

相談援助をするにあたって知っておきたい法律関係の知識

社会福祉士、精神保健福祉士等のソーシャルワーカーの仕事は、高齢者、児童、障害者らというクライエントの支援になります。その中でも最大の使命は、クライエントの権利擁護です。ソーシャルワーカーは、責任重大です。常に人権の護り手、支え手としての役割を期待されています。このようなことで、社会福祉士の試験において、法律関係の知識が問われることになります。


1.憲法

憲法とは、国家の統治の組織や原理について定めた最高法規のことを指します。
日本にも、日本国憲法があります。
憲法については、条文としては、103条まであります。ただ、国家試験的には、福祉と関係の深いものが大事なところとなります。
なので、この講義では、福祉と関係の深い事項のみを取り上げていきます。

まずは、憲法の基本原理を説明します。
基本原理には、3つあります。
①国民主権、②基本的人権、③平和主義になります。

これらの基本原理については、日本国憲法の中に、これらを裏付ける規定がおかれています。
ここでは、①、②を説明します。

①国民主権
主権者は国民であること、つまり、国民が国の政治のあり方を決める権利があるということです。

②基本的人権
基本的人権とは、国民が生まれながらにもっている権利であり、侵すことのできない永久の権利を指します(憲法第11条、第97条)。

主な基本的人権の中に、自由権、平等権、社会権、参政権、幸福追求権があります。

自由権には、精神的自由(思想・良心の自由、表現の自由など)と身体的自由(奴隷的拘束及び意に反する苦役からの自由など)と経済的自由(財産権の保障、居住・移転・職業選択の自由など)があります。


(1)財産権(憲法第29条)

憲法第29条第3項に基づく損失補償と呼ばれるものがあります。
第29条第1項では、「財産権は、これを侵してはならない。」と規定されています。
そして、第2項にて、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように法律でこれを定める。」と。
これは一見矛盾しているように見えます。
しかし、人権は、他者の人権と衝突する場合には、公共の福祉による制約を受ける余地があります(なお、この公共の福祉による制限は、第29条第2項のような憲法の条文にその制限の可能性が示されている場合に限らず、制限は可能と解釈されています。)。
その上で、第3項にて、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共の福祉のために用いることができる。」と規定されています。

つまり、第1項で、財産権が人権として保障されているが、第2項で、人権である財産権の内容は、公共の福祉に適合するように法律(判例では、この法律には条例も含むとされている。)でこれを定めることができる。つまり、財産権は法律によって制限ができる。でも、たとえ法律という公権力の行使であっても、何でもかんでも許されるというわけではありません。つまり、法律による財産権の制限は、立法府の判断が合理的裁量の範囲を超えていれば(例えば、制限の目的が公共の福祉に合致しないことが明らかであるとか、あるいは、制限の目的が公共の福祉に合致するものであっても、手段が必要性もしくは合理性に欠けていることが明らかである場合)、憲法に違反し無効となることもあります。

また、憲法の明文上では、適法な公権力の行使が特定の人に財産上の損失を与えた場合には、国又は公共団体がその損失を補償する、と規定しています。
ただ、判例では、憲法第29条第3項については、制限的に解釈しています。つまり、公共の福祉のための私有財産の制限が特定の人に財産上の損失を与えた場合に広く損失補償をする必要があるということを規定しているのではない。私有財産の制限が、財産権に内在する社会的制約(つまり、所有権等の人権の相互の調整に必要な制約)によるものであり、受忍すべきとされる限度を超えない程度であれば、損失補償は不要であるとしています。要するに、損失補償の対象となるのは、所有権等の人権の相互の調整に必要な制約以外の制約であって、受忍限度を超える程度であるということです。
例えば、ガソリンスタンドを経営する者に対して、ガソリンという危険物の保管場所について、保安物件(横断歩道)との間に一定の距離を保つことを求める法律があっても、この私有財産の制限は、財産権に内在する社会的制約(つまり、所有権等の人権の相互の調整に必要な制約)によるものであり、受忍すべきとされる限度を超えない程度であり、損失補償は不要ということになります。

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