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世の中に子連れを増やす方法

妻の妊娠が分かってしばらくすると、妻のお腹を撫でれば撫でるほど、世の中に子連れが増えていくことに気が付いた。

最初のうちは意識していなかったので、まるでどこかに隠れていた子連れたちがタイミングを合わせたように、いきなり街中に溢れだして驚いたが、いろいろ試してみると、どうやら妻のお腹を撫でてから寝ると、次の日には街中の子連れが増えていく仕組みらしい。
全ての子連れを覚えることはできないので、単純に目撃した回数を計ってみた結果、少なくとも私の周りでは1日に1,2組ずつ増えていくようだ。
まるで魔法のようだが、人のお腹の中にもうひとり人がいるという日常とはかけ離れた状況なのだから、何が起こっても不思議ではない。

ちなみに、子連れの目撃場所は様々で、電車や駅のホーム、デパート、ファミレスなど、いたるところで確認することができ、その構成も両親がいたり父親か母親だけであったり、はたまた子供も一人であったり兄弟姉妹がいたりなどそれぞれだ。

増え続ける子連れたちが、いったいどこからきているのかが気になった私は、とある一組に尋ねてみることにした。
「すみません。そちらのお子さんは首が座っているようにお見受けするので、少なくとも生後4か月ほどではないかと思うのですが、あなた方は今までいったいどこにいらしたんですか?」
しかし、尋ねようとした矢先に子供が泣き始め、他の子連れも何やら忙しそうであったので、声をかけるのも気が引けてしまった。

理屈はわからないが、少なくとも私たち夫婦の行動によって世の中に子連れが増えていることは間違いないのだし、日本の少子高齢化対策は私の手と妻の大きくなり続けるお腹にかかっているといっても過言ではないだろう。

そんなある日、ベビーザらスに行って子供服の物色や抱っこ紐の試着をし、いつものように妻のお腹を撫でてから寝ると、次の日から子連れたちが使っているベビーカーや抱っこ紐のブランドが分かるようになっていた。
どうやらお腹の魔法がレベルアップして、ついに私自身にも影響が出始めたらしい。
このままだともしかしたら、私や妻の親兄弟にまで効果が広がってしまうかもしれないが、特に実害はないので我慢してもらおう。

それに子連れが増えることもベビー用品のブランドが分かるようになることも、決して嫌なことではない。
なにしろ育児というのは初めてなので、周りにお手本がいるというのは大変ありがたいことであるし、今から数ヶ月後の自分として親近感を持ってみると、子連れたちの一挙手一投足のなんと微笑ましいことか。

これからも世の中の子連れを増やして観察しながら、不安と期待に満ちた妻と2人の最後の数ヵ月を楽しんでいきたいと思う。

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