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「同期」という特殊で強固な関係性について

会社員になると「同期」と呼ばれる、同じ年に入社した社員の横のつながりができる。
それは特殊な関係性で、「友人」と近いようでどこかそれだけではなく、「ライバル」として比較されることは多いが、また、どこかそれだけではないのだ。

私の場合は新卒で入社した会社で、院卒と学部卒を合わせて15人の同期と出会った。
その会社から転職をして3年半ほどになるが、今でも定期的に連絡を取り合い、たまに飲みに行ったりもしている。
中でもそのうちの3人は、あえてそういう言い方をするなら、自信を持って友人だと言い切ることができる関係だ。

私たち同期がお互いを認識したのは、入社前年の10月1日に実施された内定式だった。
同じ選考で面接と適性検査を通過してきたのはどんな奴らなのかと、会社側に用意された自己紹介やグループワークなどの交流を通して探っていくと、やれ京大の院卒だとか、はたまた、元々その会社でバイトをしていて人脈ができているだとか、自分より優秀で何段か先を行っているような人間ばかりで焦った記憶がある。
内定式が終わった後は会社の前に自然と集まって、探り探りでLINEを交換し合い、そのまま飲みに行った奴らもいた。
私はなんだか気後れしてしまって、ありもしない研究室の用事を口実に帰ったのだが、その後すぐに招待された内定者のLINEグループが、ほとんど動いていないことに安心していた。

年度末に入社準備が本格化すると、情報交換のためにいくらかLINEのやり取りも発生していたが、私たちが再会をしたのは入社式前々日の3月30日の夜だった。
誰だったかの発案で、入社式の前にお互いのことを知っておこうと飲み会が組まれたのだ。
半年ぶりの再会に緊張しながら集合場所に向かうと、記憶よりも少し人数が減っていて、「内定を辞退した奴がいたんだな」と思うと同時に「このメンバーで確定か。こいつらが俺の同期か。」と思った。
(実際には1人だけ連絡漏れで来てないやつがいて、そいつが上述の友人になるのだから、人生というのは何が起こるか分からない。)

飲み会はほぼ初対面の集まりにしては大いに盛り上がり、私も少し無理をして酒を飲んで、どうにか存在をアピールしようと張り切った。
結局2軒目のカラオケでひとしきり歌って解散をすることにはなったが、その頃には歳の差も関係なく打ち解けて、全員が対等でそれを確かめるようにタメ口になっていた。
実際、2日後に迫る入社式への不安はおおよそ払拭されていたのだから、取り組みとしては大成功だった。

4月1日の入社以降も、新入社員研修の後や休日に、飲みに行ったり同じ社宅に住む誰かの部屋に入り浸ったり、今にして思えば異常なほど、とにかくお互いにできるだけ一緒に行動をしようとしていた記憶がある。

残念ながら働き方の整った職場ではなかったので、採用面接で語った熱意とは裏腹に、今では私を含めて半数以上が転職をしてしまった。
しかし、同じ会社ではなくなったからといって、それほど疎遠になるわけでもないのだ。

当時を振り返ってみると、みんな怖かったんだなと思う。
高学歴で頭の良さそうなやつも、コミュニケーション能力が高くて集団の中心にいるようなやつも、なんとなく気が合わなそうなやつも、みんな不安だったのだ。
曝け出すこともできずに余裕がある振りをして、暗黙のうちに「俺たち仲間だよな?これから一緒に頑張っていくんだよな?」と行動で確かめ合うしかなかった。
それでも私たちは、学生から社会人になるという人生で最も大きな環境の変化に、一丸となって立ち向かっていったのだ。

だからこそ短い期間で、「友達」でもなく「ライバル」でもない、「同期」という特殊で強固な関係性を作り上げることができたのだ。
そして所属する会社は変わっても、社会人である限り、やはり私たちが仲間であることには変わりはないのだ。

これから社会人になる方は、きっと今とても不安だと思う。
自分が周りより劣っているのではないか、組織に馴染めないのではないか、そんな考えが過ぎることもあるかもしれない。
でも、みんなそうなのだ。周りの凄そうなやつらもみんな不安なのだ。
だからもしよければ、同期に連絡をしてみたらどうだろうか。
「飲みに行かない?」
これだけできっと、あなたの社会人生活が少しだけ良いものになるに違いない。

#会社員でよかったこと

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