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本の紹介『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』


長久手市の行政書士、酒井洋一です。

普段は相続・遺言のお手伝いや不動産のお仕事をしています。

noteでは、専門的なコラムや僕が普段考えていること、趣味のことなどを綴っています。



オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る / オードリー・タン

新型コロナウィルスが世界を席巻した2020年。
台湾政府のマスク在庫管理システムなどを作り上げ、台湾での感染拡大を封じた立役者の一人です。

2020年発行の本なので、話題のデジタルやAIに絡めてタイトルを決めたんだと思うんですが、この本の本質はそっちじゃない気がします。
オードリー・タン氏の思想はひとことで言って「公益の最大化」だと思うんです。
これこそが彼/彼女の本質という感じがしました。

先ほどのマスク在庫管理システムについてもそう。
キャッシュレス決済(記名式Suicaのようなもの)で管理することで、誰がどれだけマスクを受け取ったかが分かるシステムなんですが、これをデジタルで素早く行ったから成功したのではないんです。
オードリー・タン氏は、デジタルデバイスを使いこなすのが得意ではない人たち(例えばお年寄りなど)が不安なくマスクを受け取れるようにという配慮から、健康保険証を提示すればコンビニなどでマスクが受け取れる仕組みを構築しました。
それからもっと早く便利に使いたいという声に対応しキャッシュレス決済システムも利用可能と進化したのです。

この順序が重要。

まず社会的弱者やこれまで通りの方法を取りたい人といった、変化に対応しづらい人たちから手厚く対応し、そのあとに、必要な人に向けてそれ以上の利便性を追求・提供する。
一部の最先端の人だけが利益を享受できて、使いこなせない人との格差が広がるというのは公益という点では大きなマイナスとなります。

大切なことは広くたくさんの人が使えるようになること。
使えるようになった人は隣の人に教えることができます。
人々の行動を政府が信用し、また人々も政府を信用し、相互に発展していくための順序。
オードリー・タン氏はあらゆる政策においてこの順序を徹底しています。
誰ひとり取り残さない、といった信念が行動に表れていて素晴らしい人だなと思いました。

またこの信念・順序を貫き通すために、オードリー・タン氏は対話を徹底しています。
政府内で決めて動くのではなく、あくまで国民のために動く。
そのためには国民との対話から見えてくる課題が大事で、またその課題に柔軟に素早く対応するだけの政府内の調整も、普段からの対話がカギとなっているようです。

そうやってみていくと、デジタル技術やAIが社会を変革するのではなく、変革を起こすのはどこまでいっても「人」なんですね。
デジタル技術やAIというのは人の仕事を奪うといった「人間と対等となりうる存在」ではなく、人の手助けをする「アシスタント」だと捉えるのがいいようです。

この公益という視点は大切にしたいと思いました。
滅私奉公とはまた違うんですよね。
「人のために何ができるか」だけではなく、それが「自分と周りの人々を幸せにできているか」を考えて行動する。
それが公益なんだと思います。

つい忘れがちな、とても大切な視点を学ぶことができました。
これが書かれたのがコロナ禍初期の混乱のさなかというのも驚きです。
ここまで冷静に、これだけ多くのことを信念を崩さずに行えること自体が素晴らしいと思います。
人はまだまだできることがあるなと感じさせてくれる素晴らしい本でした。
全文に渡りオードリー・タン氏の人柄が滲み出たような読みやすい文体で心地よい読後感でしたよ。



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