細見茂65歳、勤続47年にして初めての遅刻|超短編小説
「頭あげてください」
若干30歳にして、従業員70人を越えたこの工場をまとめ上げるサトシ坊ちゃんは落ち着いた口調で、先刻から床に目を落とす私に仰った。
「情けない…本当に、本当にすみませんでした」
「そんな大袈裟な。しかし細見さんが遅刻して来られるなんて本当に珍しいですね。僕が先代からこの工場を受け継いだ後では初めてじゃないですか?」
「…はい。18の時に先代に拾われ、65になった今日まで遅刻をした事は一度もございませんでした。勤続47年無遅刻、この細見恥ずかしながら