2・5

境界線を隔てた先に
広がりすすむ独自の針
触れることは許されない
負を排除した甘美な虚構と
部外者の僕とをつなぐ接点は
愛と呼ぶべきものだろうか

そのものになりたかったわけじゃない
ただ美しくなりたかった
ただ近づきたかった
そこには性別の違いなどはるかに超えた
生命の理をくつがえす力が存在した
窓外に広がる理想郷と
籠りよどんだ現実が
混ざり溶けあい浸食し
輪郭を失った境界の果てで
僕はあたらしい世界をみるであろう

僕は神になりたかったのか
理に抗いたかったのか
覆したかったのか
否、僕はただ美しくなりたかった
ただ近づきたかった
窓に触れた指先が
焼けただれ溶け崩れていく
その先の幸福に触れられぬのなら
人をやめればいいのだろう
融解した現実を洗い流し
顕在しはじめた夢の甘みを優しく食む
まとった虚ろの美が醸し出す
はちみつのような香りを抱きしめながら
それと僕とは重なり合い
曖昧な輪郭のなか
一人静かに泣くのだろう
これまでに支払った代償と
その対価として得た己の美しさを想い

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