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Bonus Track 01: 古山拓さんとの長めのアフタートーク

Radio3 2023.8.21+8.28放送
Guest Talk 01: 古山拓 [画家]収録後のアフタートーク

酒井:おつかれさまでした。
もう少し雑談しましょう。古山さんとのトークで24時間番組できそうです。

古山:できる!できます!多分!

酒井:ドローイングで作る絵本、コンセプトにとても共感しました。

古山:実は、原案は僕なんですよ。

酒井:なんと!そうなんですかー

古山:もう10年ぐらいかなあ。アイデアを温めていたのです。機会があって、児童文学作家のくすのきしげのりさんにお話ししてみたら「それいいね!」って話に。自分の中でまとまっていなかったものが、一気に進みました。

酒井:吐き出せないままのモヤモヤというか、創造への問いって、どこかに常時ありますよね。いま僕が見ている空の色って、みんなにはどんな色に見えてるんだろう?とか、ふと思うんですよね。青く見える人もいれば、 緑っぽく見える人もいる。空のグラデーションもどこを切り取るか、一人ひとり違う。

古山:外国を旅していると影に色が入ってくるのを感じます。ここの街の影はピンク色だなぁとか、紫色にも見えるぞとか。そんなこと言って周りに驚かれる時もあります。人それぞれ、色の見え方は違うのだと。

酒井:その時々の気持ちによって、感じる色も変わりますね。

古山:そうそうそうそう。絶対それはあると思います。
例えば、買ったタイミングで読んだ感覚と、それから1ヶ月後に読んだ時、1年後に読んだ時では、たぶん違った木に見えてくるのではないかと。疲れた時に読むのと、楽しい気持ちの時に読むのでも、印象は全然違ってくる気がする。

酒井:ある方に、バイブル的な名著ほど定期的に読み返した方がよいとアドバイスを頂きました。時とともに自分がしっかりと変わっていれば、毎度の響き方が違っているはず。その響き方の違いを楽しみなさいと。

古山:そうですね。だから、絵も、多分、今と5年後と10年後では、きっと違う色、 同じ僕でも描くと思う。青い空を描く日もあれば、ちょっと黄緑の日もあるかもしれない。じゃあ、その違いは何なんだって振り返る。面白いですね。

酒井:僕は最近「森」ってキーワードも響いていています。「森」は人の思い通りにならないじゃないですか。これも聞いた話ですが、「思い通りにならないもの」を身の回りに置くと良いという話。人間の思い通りにならないもの、計画できないものごととの出会いこそ「学びの機会」だと。植物とか、子どもとか、野菜とか、なんで枯れちゃうんだよとか、なんでここで泣くんだよとか、形が揃わないよとか。あたりまえの「自然体」なんですけど、あたりまえの不便益から離れてきた現代だからこそ、思い通りにならない環境から「心の揺さぶり」を頂き、感情豊かになる。

話をまとめちゃうと「創造とは森を歩くようなことである」みたいなこと。僕は森の奥深いダンジョンから抜け出せないですが、、、。

古山:僕のカミさんがね、森の中で色々やってるわけですよ。庭を作ってみたり、畑作ってみたり。でもやっぱり甘くないわけですよ。可哀そうなぐらい。でも、たまに良いものが生まれた時、それは感動。

酒井:素人が野菜を育ててもスーパーマーケットのように均一サイズにはならない。毎回カレーライスの味が変わってしまう。そこを魅力と感じたい。

古山:森の中に、安定はないです。

酒井:その時々の心情を楽しむっていうことは、一期一会に自分から生まれてくるアウトプットを俯瞰して楽しむような境地。

古山:思い通りにはならないことといえば、今回の絵本で使ってる鉛筆がステッドラーの図太い8B鉛筆なんです。ある意味、書きにくい部分があるわけですよ。細かい描写には向かない。自由を奪う鉛筆でチャレンジしたのです。書きやすい鉛筆ですと、つい、説明したくなっちゃうんですね。だから、書きにくいもので自分の気持ち描いていく。木炭も試したんだけど、木炭は不自由すぎて、向かなかった。手足を縛ると面白い。

酒井:古山さん、数年後は別の表現手法を見つけていて、絵も描いていないかも(笑)

古山:なんかやりましょう(笑)

酒井:ドローイングは深い。

古山:そうですね、隠せない。すっぴんが出る。僕の現在地はこれですよと(笑)

酒井:昔からあるお題ですが、木を描くことは学びですよね。どのように描くか、どの順で形にするか、とか。木を描くためにやることは、シンプル。要するに、見えているものを嘘をつかずに描くってこと。だから、うまく描けないってことは、 嘘をついてるんですよ。

デッサンの授業を思い出します。「あそこにあるもの、あれを君は描けばいい」「でも君のは 違うよね」みたいなこと、何度も言われて。あそこにあるものを目の前のキャンバスに置くだけだからと言われていること、そう、理解はできているけれど、理解できているんです。でも、できない。。。「違うじゃん」って言われちゃう。「確かに違います。嘘つきました。ごめんなさい。」って毎回謝る。

それは真実が見えていないということ。だから、左に動く、右に動く、近づいてみる、遠く離れて見るとか、いろいろなセンサーを使って、目の前にあるものをスキャンしていく。自分の心情を入れないで、嘘をつかないで、ここにアウトプットする。

古山:ドローイングだけの絵本も、まず最初に取り組んだのはデッサン。森の木の一部を丁寧に書いてみたりとか、そんなことを一応して、感覚を染み込ませてからスタートしました。

酒井:ダビンチも極めるから人体解剖の領域まで踏み出すのと同じですね。

古山:例えばこれ、折れた木が主人公になっていくんですけど、この折れた口ってどうなってんのって、頭の中でこう想像しても記憶は曖昧。結局は森の中で幹を拾ってきてちゃんと書いてみたら、想像とはちょっと違っていたり。

酒井:森に行って大正解ですね。

古山:そうかもしれない。緑いっぱいの森に行ったら、じゃあこの緑を何色で表現するの。って話になってきて。そのうちこれ、緑じゃないよねって、そんな感じになってくるんです。無理です。緑の絵の具だけでこれ表現するのは。

酒井:森は学校ですね。

古山:打ちのめされてます。

酒井:面白い面白い。ありがとうございます。

古山:どうもありがとうございます。

冬のアトリエアルティオ (Photo:Taku Furuyama)

古山 拓さんのプロフィール
Taku Furuyama
岩手県生まれ。広告会社などを経て、水彩とイラストレーションのアトリエ「ランズエンド」を設立。広告や絵本、旅の透明水彩画の分野でご活躍されて、近年では宮城県川崎町の森にご自身のギャラリー「アトリエアルティオ」を開きながら、日々、絵と向き合っている。




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