「美味しいものをより安く」だけが正解ではない

この業界に入った10年前。
「他の飲食店に食べに行く必要はないんや!自分の店に来てくれたお客さんに、良い商品と良いサービスを提供して、満足してもらったら、それで繁盛するんや」と言っていた。
そして「美味しいものをより安く提供することがお客さんが求めていることや」と信じていた。

今、僕は、ほぼ毎日外食をしている。
エンゲル係数が相当高いと思うが、これは投資だと思っている。
色々飲食店を見て感性や引き出しを養うことが自分の仕事やと思っている。

現在は10年前と言っていることが180度変わった。
自分が経営する会社のスタッフには、できる限り、外食はしたほうがいいと
すすめている。

外食を続けていくと、
1万円支払っても、安いと感じる飲食店
2千円支払って、高いと感じる飲食店

を意識することが多くなった。

いわゆる食材原価のコスパが良い、悪いの話に限らない。
それぞれのお客さんが飲食店に求めるニーズと、料理・サービス・空間。
全てに対するお店の総合力が合致するかどうか、という話である。
そして、お客さんのニーズはひとくくりには決してできないほど、多様化、細分化している。

「美味しい料理をできるだけ、安く提供することを目指すこと」だけが正解ではないということを、今の自分は強く意識している。

極端な例だが、ホリエモンこと、堀江貴文さんがプロデュース?
したラーメン屋さんのラーメンは1万円の価格。
これが3,000円や5,000円の価格だったら、あれほど話題にもならなかったと思う。あの店にいくお客さんは、「1万円のラーメンを食べるというワクワク感」も含めた価値に代金を支払っている。
そして、それに価値があると思う人もいるからリピーターもいる。

次に知人経営者が実際体験した話。
一流ホテルのフレンチレストランで経験を積んだ料理人がローカルな地元に帰って、「フレンチを大衆食に」をコンセプトに、独立。

コース料理の単価は5,000円と8,000円。
ドリンクはワインボトルのラインナップはあるものの、2,000円でビールや
酎ハイなどの飲み放題を用意していた。
それが、ローカルな地元客には喜ばれるだろうと思った。

しかし、お店は流行らず、閉店を考えるまでに。
その後、先輩経営者のアドバイスを受けて、
コースの単価を8,000円、13,000円に設定。
飲み放題もやめた。

値上げの際には、食材原価はほぼ変わっていない。
その代わり、メニューに、店主や食材のこだわりを前面に押し出した。

その結果、売上は向上。

現在も、そのお店は営業を続けている。
フレンチを楽しみにくるお客さんは、たま~にする贅沢を求める。
贅沢を求めるなら、より安さを!求めているわけではない。
ほぼ同じメニューでも、5,000円のフレンチは安すぎて怪しい?
8,000円なら適正と感じるんやろね。

僕が経営する客単価2,500円~3,000円の大衆酒場の例。
スピードメニュー1番人気は、
「セロリ嫌いも感動!?国産セロリのレモン漬け 380円」。

以前は、「セロリのレモン漬け280円」というメニューだった。

元々国産セロリを使っていたし、一定数のファンがいたが、メニュー表記を変更して、100円値上げした今のほうが、注文される数は多くなっている。

僕の好きな表現で、
「お金を払うことは、お金と価値の交換するということ」というのがある。

価値というものは、人それぞれ、場面場面で違うということを、飲食店経営者は意識する必要がある。

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