映画を観て 聴いて 読んだ日々

映画館で観る事を前提にしなければ 今ほど映画を観るハードルが低くなかった頃 つまり 家庭用のビデオが まだ普及していなかった頃 観たい映画があったとしても テレビ映画劇場で 放送するのを待つか どこかの映画館でやっているのを探すか しかなかった 
私の場合 映画に行く パンフレットを買って読む サントラを買って聴く がセットになっている事が多かった(すべてが じゃないけど)
つまり 映画を観る パンフレットを読む サントラを買って聴く ここではじめて ひとつの映画との関わりが完結する そういうものだった
映画に接触する作業は それだけではない
その当時 特に好きだったのは 淀川長治の『ラジオ名画劇場』である
古今の名作を 微に細にわたり 語ってくれる 例えば 『エクソシスト』だと
『悪魔に取り憑かれたこの少女が ここではとても言えない事を始めるんですね』と言っておいて
『十字架で自分のお股を グチャグチャ・・・』
と ちゃんと説明してくれるのだ
また 映画音楽を扱ったラジオ番組もあり それもよく聞いたし 録音しておいて聴き返す ということもした
ここまでは 映画を聴く という行為だ
『キネマ旬報』を毎号買っていた
紙メディアの雑誌の良いところは よく言われる事なんだが 目当てと違う情報も取り込んでしまう ということだ
古今の洋画 邦画 ロマンポルノまで 様々な映画や 俳優 監督に至るまでの情報が 入ってくる
映画評論の本も好きだった
植草甚一の ヒッチコック フィルム・ノワール などを扱った本や 『キネマ旬報』で連載していた イラストレイターの和田誠の『お楽しみはこれからだ』の単行本は 4巻ぐらいまでは持っていたし 和田誠タッチのフランク・シナトラの似顔絵は 今でもソラで描ける
さらに 情報誌として『ぴあ』が有名だが 関西在住だった私は もっぱら『プレイガイドジャーナル』(通称ぷがじゃ)を愛読していた
つまり 何が言いたいかというと 映画を観るという行為の周辺に 様々な 聴く 読む という行為があったということだ
今は ネットで映画を見られるし DVDのソフトも 充実している
映画館は 値段も高いし ちょっと行けないなあと思うが 観たい映画があれば すぐにチェックできるところは 昔とは全く違う
だが 一本の映画を観るための熱量は 昔の方が高かった気がする








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