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話題のモキュメンタリー「近畿地方のある場所について」が怖すぎる。

 はてブでバズっていた「近畿地方のある場所について」を読んだ。
 週刊誌の切り抜きや実際の事件の報道、ネットの書き込みなどを現実のモノのように見せて怪異を描くモキュメンタリーだ。

 滅茶苦茶怖くて面白かった。
 ホラーと最も相性がいい、一見何の意味がわからない「情報の断片」をつなぎ合わせることで全体像がぼんやりと見えてくる手法を取っている。
 最初はぼんやりと「つながっているといえばいるような?」程度で訳がわからない。
 それが情報を積み重ねることで、どんどんつながりが太くなっていく。
「明確になっていく」のではなく、太くなっていく。
 話が進んでも進んでも問題の核心はぼやけたままだ。ただ情報が積み重なっていき、積み重なるにつれて「これはヤバい」という感覚が増幅していく。
 話の中でも語り手が「これはヤバいかも」と何度か思うが、その「何かヤバい」という感じがはっきりわかる。

「何かはわからないけれど、これは触れてはいけないものだ」
 畏怖系ホラー(造語)は、「自分(人間)には手に負えないものだ」という感覚をいかに出すかが重要だと思うけど、その「匂わせ方」が滅茶苦茶上手い。

「近畿地方のある場所について」を読んで、モキュメンタリーは「細部のリアリティにしつこいほどこだわって徹底的に作り込むこと」が凄く大事なんだなと感じた。
「情報をお持ちの方はご連絡ください」というキャッチフレーズも作品の一部になっている。
「某月刊誌別冊 2017年7月発行掲載 短編『おかしな書き込み』2023年1月28日」などの話数タイトルも、現実と錯覚しそうな付け方だ。

と、冷静に書いている風だけれど、昨日の夜は途中で怖くなって読むのを止めた。
 一人暮らしだったら、ヤバかった。実家に帰っていたかもしれん。
 ちなみに昨晩のギブアップポイントは、肉じゃがの味がしなかった辺りだ。
 朝になってすぐに続きを読み出して、掲示板の「ありがとうございます」でまた震えた。
 本当に自分が掲示板を見ている感覚になって、その自分の感覚からこのスレがどこかに実在するんじゃないかという気持ちになる。

今スレ見返してたんだけど、このAyIg8wLmaってやつなんかおかしくないか?
凸先指定したのもこいつだし、なぜか侵入場所知ってるし、ヤバいものがある場所も軍曹が見つけるよりも前に書き込んでるし

(引用元:「近畿地方のある場所について」背筋)

 見たら震えるとわかっていても、スレを見返してしまう。

 書籍で発売して「実際の週刊誌の記事」の写真や、子供がいなくなった状況の地図、ダムとマンションと山の関係の地形図を入れて欲しい。(電書だとリアリティが若干薄れるから、本で欲しい)
 PVを見た限りは書籍化しても絶対に売れると思う。少なくとも自分は買う。
 でも買っても家に置けないかもしれない。
「残穢」を家に置いておけないという人がいたが、その気持ちがようやくわかった。

「近畿地方のある場所について」の中で、「気づいたということを向こうに気付かせては駄目だ」という話や「息子が心霊スポットに行ったらその母親が憑かれてしまった現象」が出てくる。
「残穢」でも書かれていたが、「強い怪談は、聞いても話しても……つまり触れるだけで祟られる」。
 怪異とは「縁」であり、「縁」は恐ろしいものだ。特に意思の疎通が出来ない相手の場合は。

 自分はこういうモキュメンタリーが大好きなので、今後もどんどん出てきて欲しい。
 とりあえず「近畿地方のある場所について」の続きが楽しみだ。
 スマホで読むと目が持たないので、本を出してくれ~。(二回目)

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