多層ガラス絵の不動明王完成。
奥の層には縄文の火焔紋様を配しました。
火をまなざす太古の人々は、そこに何を見ていたのだろうか。生かされている自分たちの命と、その糧として燃えゆく命。その相互の繋がりが熱の中溶け合い、分かち難く結びついている不思議ではなかったろうか。
厳しく煩悩を断ちながら、その行いが即ち人々を悟りに導くという不動尊。その容赦のない苛烈さは、多くの仏像の中でも一際目立つものですが、それでも民衆に「お不動さま」としてここまで広く親しまれ時代を越え広まりました。そのシンボルが原初的なリアリティに沿ったものだったことも、その一因であるかもしれません。そんな不動尊の像を多層ガラス絵で描くにあたり、火焔型土器の炎は自分にとってとても相応しいものに思えました。
黄金の身体。その話はこちら。
この作品はコミッションワーク(注文制作)です。
このような、広く庶民に愛された「お不動様」を描くきっかけをいただけたのは、自分にとって大変幸運でした。元々自分自身がガラス絵をはじめた当初、よく見ていた密教絵画、中でも黄不動には強く惹きつけられるものを感じていたので、「多層ガラス絵で現代の黄不動を。」と言われた時、そこに奇妙な運命すら感じました。多層ガラス絵という技法が導いてくれたご縁でもあります。
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