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異世界故事① 「ドワーフの力比べ」

 とある人間の国に盾と矛を売る人がいました。自分が売る盾を自慢して「私のこの盾の堅固なことときたら、どんなに鋭利な刃物でも突き通すことはできません。」また自分が売る矛を自慢して「私のこの矛の鋭利なことと言ったらどんな堅固なものでも貫き通してしまいます」と言いました。それを聞いたドワーフが「おい、その矛で盾を突いたらどうなるんだ?」と尋ねると、その人は何も言うことができなくなってしまいました。しかし、偶々通りがかったドワーフが「いや俺の刀鍛冶のスキルがあればそんな盾なんて穴ぼこだらけだ」と自慢げに言うと、その話を聞いたドワーフが「いやいや、俺の防具鍛冶のスキルをもってすれば、こんな矛なんて砕けてしまうぜ」と張り合って言いました。一触即発、喧嘩になってしまうところに盾と矛を売る人が命懸けで仲裁をして「ではお互いにこの盾と矛を使って自慢の武器防具を作って下さい」とドワーフ達に渡しました。ドワーフ達はこれが俺の最強武器、防具を自慢したい為に、喧嘩したことを忘れてお互いに夢中になって研鑽し、最強の武器防具を世に送り出していった事から、ドワーフの間でこのお話は『ドワーフの力比べ』(切磋琢磨)といい、人間の国でこのお話は『商人の機転』(漁夫の利)というお話として語り継がれています。

異明書房刊『異世界故事辞典』より

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