2022/07/16(土)
「保存もできてそのまま食卓にも出せる、耐熱ガラス容器が欲しいの。」
「うん、いいと思うよ。」
「ネットで買おうと思うんだけど。今すぐにでも欲しいんだけど。」
「うん。」
「でも、実際見てみた方がいいかな。」
「うん、そう思うよ。」
だから僕らは自転車に乗って量販店へと向かった。昨日よりずっと涼しい。
煌々と白い光が灯る店内をぐるぐる回り、そのコーナーに辿り着くと、
「んー、こういう感じね。」
と、彼女はしゃがんで動かなくなった。
大中小の耐熱ガラス容器をかちゃかちゃと組み合わせる。立ったまま僕はエスカレーターから降りて来た人の乗って行く人を見た。彼らはきっともう二度とすれ違うことはないだろう。いや、この街ではあるかもしれない。でもお互いを覚えていないのであれば、それはないということだ。
「ねぇ、どう思う?」
「んー、でもこの組み合わせでしか売ってないんだよね?」
「ここではね。やっぱネットで買った方がいいかしら。」
僕が人生のある場面で比喩的エスカレーターを降りた時、彼女はそのフロアにいたんだ。そして、こうして買い物をしたんだ。
無数の人波の中で、すれ違うということに対抗したのだ。
「うん、でも今日こうやって手に取って見られて良かったんじゃないかな。」
「そうね。そういうことにしましょう。」
そういうことにしよう。
そういうことに。
・・・
今日も夜が来ました。
Good night.
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