2022/07/19(火)

ビービーとアラームが一斉に鳴った。何が起こったのかと思ったら、避難指示・警報のアラートだった。

風がない午後、ただ真っ直ぐに降る雨を窓ガラス越しに眺める。そこまで凶暴にはどうしても見えない。摘んだ鉄球を砂場に向かって落とす。何千個も。そんな感じの静かで、しかし重たい雨だ。

「静かなのが一番恐ろしいわ。」

と、彼女が言った。

「そういうのに限って、とんでもないことをしでかしたり、あるいは頭の中はそんなことで常にパンパンなのよ。」

「そんなことって?」

「ん、それは言えないわ。」

今日みたいに雨が静かに、しかし終わりなく降る午後だった。大学4年生の終わり頃。僕は大学院へ行こうかとうだうだ迷っていて、彼女は簡単に就職先を決めてしまっていて、若いというだけでそれが許されていたバランスだった。

それから年月は過ぎた。もう、過ぎて過ぎて、過ぎた。

鉄球がどこにも寄り道せずに真っ直ぐ砂場に落ちる、そのスピードで僕の時間は僕を今日のここへと運んできた。

「雨だなぁ。」

と、一人呟いた。冷房を入れれば寒いし、切れば暑かった。

アラートがまた鳴る。丈夫な建物の中に避難してください。

静かに嵩を増す雨と、人知れず増幅する恐怖。

「雨だなぁ。」

としか、なぜか言えなかった。

・・・

今日も夜が来ました。

Good night.




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