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【戯曲】ひとつまみの調味料

好きと嫌い。
嫌いな世界。
好きだった貴方

脚本 サイトウナツキ
絵 山梨

※このお話では、セクシャルマイノリティやうつ病などの精神的な苦しみについて触れています。お気を悪くされた方がいらっしゃれば、大変申し訳ございません。
ただ、私はそれらに対する理解や認識、当事者からの主張を聞くだけでなく
少しでも”受け入れられる”世界になればと思います。

登場人物

 古正(フルマサ)リョウ
彼女
 佐藤(サトウ)ナオ
友達
 塩田(シオタ)

 佐藤(サトウ)マナ
医者
 板野(イタノ)コイ
看護士
 佐藤(サトウ)マナ
後輩A
 花薄荷ジュンペイ(ハナハッカ)「オレガノ・ペイジュラス・ナディア」
後輩B 
 八角セイジ(ハッカク) 「スターアニス・セイジ」

シーン0

ズッタカズッタ
ズッタカズッタ
ズッタカズッタ
ズッタカズタズタ
ズッタカズッタ
ズッタカズッタ
ズッタカズッタ
ズッタカズタズタ
ズッタカズッタ
ズッタカズッタ
ズッタカズッタ
ズッタカズタズタ
ズッタカズッタ
ズッタカズッタ
ズッタカズッタ
ズッタカズタズタ

部屋の真ん中奥。
壁にもたれかかる僕。
鳴り響くBGM。
この曲は僕がかけたんだっけ。
塩ひとつまみと水をたらふく飲み。

言葉が流れる。

「多様性による個人主義の助長」

「もう少し周りの眼とか気にしたらどうですかね。自分のためにもなると思いますよ。」

「あんたみてやっぱりって思ったよ。ひとってそんな変わんないんだって。」

「もともと動物って生きられる期間が決まってるらしいよ。
人間はそれを無理やり伸ばしてるだけ。だからのばされてびよんびよんになってるとこぐらいは楽しんでも地獄には堕ちないよ。」

「好きとか嫌いとかさ、正直どうでもよくね。」

「自分の好きなものくらい脳みそスカスカでもわかってほしいよな」

「お前は偉いよな。お前は、ちゃんと溶け込めてて偉いな」

暗転

シーン1

明転

医者「ちょ、ええ、どうしよう、ああ、あの、大丈夫ですか。大丈夫ですか」
僕「ああ、え、」
医者「おお、よかったァ」

看護婦は一安心で腰が抜ける
看護「いてて」

医者「えっーと、ひとまず座れますか、こっち、驚くのも無理はないとは思いますけど、まあ、あのね、はい落ち着いて聞いていただければと思います」
僕「すみません」
医者「えーっと、どうしようかな、まあいいか、はい。最初からまた話しますね。」

医者と看護士は姿勢を正す。
医者「もう一度、単刀直入にお伝えしますね。」

医者「ガンです。」

医者「これが診断書です。骨髄異形成症候群と呼ばれる、まあ簡単に言えば血液のガンです。現状かなり進行しています。」
僕「はあ」
医者「ちなみに治療法はあります。抗がん剤によって未熟ながん細胞を少しづつ減らしていく治療法や、造血幹細胞移植といって全身に放射線を照射して異常な血液細胞を破壊し、そのあと正常な血幹細胞を移植することで造血機能を回復させるといったものです。ただ、現状は抗がん剤治療しか私からはオススメできません。」

僕はイマイチ今のこの状況がわからない。

医者「あの、まあ、こんなこと医者の口からは言いづらいんですが、先ほどの造血幹細胞移植には古正さんの血に近いドナーが必要なんですけど、最近はドナー登録に協力いただける方がめっきり少なくなってしまったんです。なので、時間もかかってしまいますし、それまでに進行してしまっては元も子もないので。まあ、私が直接聞いたわけではないんですけど、多様性が個人主義を助長してるって」
看護「先生」
医者「ああ、すみません。忘れてください。まあ冗談ですよ。ああ、えーっとお水でも飲みますか。しばらく検査してて疲れたでしょう。ああ、っとお水汲んで来てくれるかな。」
看護士、一礼してお水を汲みに部屋を出ようとする。

僕「あの、余命、あと何年ですかね」
医者「余命ですね」
僕「僕、あと何年、生きなきゃいけないですかね」
医者「(深呼吸をしながら)もって半年。今のまま何もしなければ、1か月も持ちません。」
僕「そうですか」

僕は虚無感を感じながら、部屋を出ようとする。
看護士は僕を止めようとする。
医者は看護士を制止して、
医者「古正さん。今じゃなくていいので、選んでいただければと思います。これから先のことを。」
看護士「先生」
医者「あまりこの立場から言えることではないですが、多分今の世の中にあなたは少し生き辛い」

医者「タバコと携帯、忘れてますよ。」
僕「すみません」
医者「とりあえず、来週またお話しましょう。」

僕は医者に一瞥をして診察室を去る。

看護士「先生。なんであの患者さんだけ、あんな言い方したんですか。」
医者「うーん。」
看護士「なんですか、そのうんともううんともとれるような言い方。さすがにあれはあんまりだと思います。いくらなんでもあんな、」
医者「うん、でも、そうだな、長年の勘かな」
看護士「なんですか、勘って」
医者「さ、そろそろおひるごはんかな。食べないと食べないと」
看護士「先生。」
医者「あ、あとあれね。後で電話してあげてね。あとーえっとそういえば、さっき、あのー、あれ、研修生が記録見てほしいって言ってなかったっけ。見てあげてよ。」
看護士「まあ、それは見ますけど」
医者「はい、じゃあ、お昼ご飯食べにいこうか。まな・板・ちゃん」
看護士「それまじセクハラですから」

シーン2

彼女「はい、はい。そうですか。わかりました。はい。じゃあまたお願いします。」
僕「ただいま」
彼女「おかえり」

彼女「どうだった?」
僕「うん」
彼女「今日ちょっとシフト変われなくて、出勤しちゃうんだけど」
僕「うん」
彼女「冷蔵庫になんか適当にあるから、なんか食べなね」
僕「うん」
彼女「あと会社にはちゃんと連絡しておくんだよ」
僕「…うん」

彼女「じゃあ、私行くね」
僕「うん」
彼女「明日は一緒に夜ご飯食べようね」
僕「うん」

彼女「いってきます」
僕「いってらっしゃい」

僕は一人ぼっちの空間を全身で感じる。
暗い。寒い。雑音がうるさい。

僕は冷蔵庫を開いてビールとり、飲み干す。

僕「あ゛~よかった~」

僕「もしもし。すみません、古正です。はい、そうですね。はい、はい。なので、ちょっとしばらくはお休みいただきたいです。はい。すみません。あとで申請は出しておきます。はい。すみません。じゃあ、いったん失礼します。ああ、はい、それははいもちろん。はい、なので、ちょっと一旦失礼します。はい、はい失礼します。」

冷蔵庫の夜ご飯はオムライス。
レジ袋を取り出しオムライスを袋へ入れる。
袋を持って外へ出る。

コンビニへ行って、お弁当とチューハイ
ホットスナックを買いに行く。

レジ袋を引っさげて横断歩道。
信号待ちのタバコ。

友達「ちょっと、お兄さん。ここタバコだめだめ、向こうの喫煙所、いっ。ってあれ、古正?」
僕「え、あーっと、すみません」
友達「ちょ、ちょっとあれ、古正だよね、俺俺、塩田。高校の時3年時同じクラスだった。俺」
僕「塩田。え!塩田?」
友達「(咳払い)吸ってカッコよくなるかどうかは知らない」
僕「確実に生きづらくはなるだろう。久しぶり」
友達「超久しぶり、何年?5年?6年?もっと?」
僕「えーっとわかんない。でも久しぶり」
友達「久しぶり、てかやっぱだいぶ変わったね。」
僕「そう?でも、塩田もだいぶ変わったね、ていうか、懐かしい暗殺教室」
友達「それな、同期とかだれも暗殺教室知らないからさ、今の今まで忘れてたけど、めちゃくちゃ思い出したわ。」
僕「僕も色々思い出した」
友達「うん、何?」
僕「何って何」

友達「え、何してんのこんなとこで、何大学出てニート?(笑)」
僕「ああ、ちょっとね、そっちこそ何それ」
友達「みてわかるだろ、警察官だよ。警察官」
僕「似合わないね」
友達「いや、おい、これでも超一人前なんだからな、これでも」
僕「これでもね」
友達「これでも、つかタバコ吸ってんじゃん」
僕「ああ、うん、タバコ。でもアイコスだよ」
友達「タバコ吸わないって言ってたじゃん。」
僕「うん」
友達「ああ、ごめん」
僕「言ってたね、よく覚えてるね。」
友達「いや、覚えてるでしょ」
僕「僕はもう忘れてた」
友達「そう、か」
僕「ごめん」
友達「まあ、こんなこと言うのもあれだけど、体に悪いよ。吸うのやめなよ」
僕「まあ、色々あってさ。」
友達「なんだよ色々って」
僕「色々は色々」
友達「あ、ここで聞くようなことでもないか。」
僕「てか、お弁当その量何?」
友達「いやそう俺、あ、やべ、思い出した。ごめんちょっと先行くわ。俺先輩にぱしられてんの。」
僕「変わんないね」
友達「馬鹿にしてるな?」
僕「ううん、ごめんね」
友達「ああ、いや、全然。あ、てか明日夜空いてる?」
僕「夜?」
友達「20時とか?もうちょいすぎるかな」
僕「空いてるかな」
友達「お、じゃあ明日飯行こうよ。場所適当に選んどくからさ」
僕「うん、いいよ」
友達「じゃ、とりあえず先行くわ」
僕「じゃあね」
友達「あ、電話番号変わってないから!じゃ」

僕「携帯変えちゃったよ」

部屋に戻り突っ伏す僕。

僕「塩田か、塩田懐かしいなあ」

友達「古正」
僕「何」
友達「暗殺教室の映画見た?」
僕「実写のやつだっけ」
友達「そう」
僕「見てないよ」
友達「俺見た」
僕「どうだった」
友達「渚が渚じゃなかった」
僕「どういうこと」
友達「なんか渚が知らないアイドルだった」
僕「あれ、アイドル出てるんだっけ」
友達「そうだよ、確か名前忘れちゃったけど」
僕「じゃあ全然見に行かなくて良いやつじゃん」
友達「うん、あれ見るならムカデ人間見た方がいい」
僕「ムカデ人間3は見たわ」
友達「1と2は」
僕「見てない」
友達「何それ」
僕「なんか凄かったよ」
友達「何が」
僕「お金のかけ方が」
友達「ムカデ人間にお金かける要素ある?」
僕「意外とね、ヘリ使ったり、演者だけで何十人もいてさ、なんか思ってたマッドサイエンティスト感なかったわ」

友達は僕にキスをする。

僕「明日なんの映画見ようか」
友達「今決める?」
僕「今決める」
友達「明日ゲオ行ってから悩もうよ」
僕「いいよ」
友達「だから今日は一緒にダラダラしよ」
僕「だね」

シーン3

彼女「ただいま」
僕「おかえり」
彼女「会社には連絡した?」
僕「うん」
彼女「そう」
僕「あのさ」

彼女「ちょっと私疲れちゃったから、シャワー浴びて少し横になってくるね」
僕「うん」
彼女「おやすみ」
僕「おやすみ」

僕はいつもより少し見た目に気を使わないといけない気がして、鏡を見る。
髭や髪の毛、服についた埃や塵を払って。
喉を鳴らす。浮き出る喉仏。

妹「お姉ちゃん、来たよ。何で返事返してくんないの、今度からもう来ないよ」
僕「」
妹「あ、どうも、お邪魔して、ます」
僕「」
妹「あの、お姉ちゃん」
僕「あ、昨日夜勤で、疲れたから横になるって」
妹「そうですか」
僕「元気?」
妹「元気ですよ」
僕「そう、ならよかった」
妹「でもここ来ると少し」
僕「え」
妹「いつですか」
僕「何が」
妹「いつになったらお姉ちゃんと別れてくれますか」
僕「いつ、わかんないかも」
妹「はァ、まあもういいですよ」
僕「ごめんなさい」
妹「もう少し周りの眼とか気にしたらどうですかね。なんか自分のためにもなると思いますよ。じゃあこれお姉ちゃんに渡しといてください。」

妹は僕に袋いっぱいに詰まったみかんを渡した。
その時少しお互いの指が触れてしまった。

妹「ひッ」
僕「あ、あァえっとごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいフゥフゥフゥ」
彼女「何どうしたの」
妹「お姉ちゃん、とりあえず頼まれてたのはちゃんと届けたから私帰るね、じゃ」
僕「フゥフゥフゥ」
彼女「どうしたの、大丈夫大丈夫だよ。」

彼女は優しくでもなんだか面倒くさそうに僕の背中を撫でた。

僕「ちょっと、くす、薬薬」
彼女「ああ、薬えっと、あそうだこの前飲んじゃったので最後だ」
僕「フゥフゥフゥ」
彼女「ごめん、今から買ってくるね」
僕「いや、フゥ、大丈夫、フゥフゥ大丈夫だから」
彼女「大丈夫って」
僕「大丈夫大丈夫大丈夫、自分で買ってくるから」

僕「じゃあおやすみ」
彼女「おやすみ?」

シーン4

僕「フゥ、フゥーフゥ」

僕は荒い呼吸を無理やり正すように深呼吸した。
大量の酸素を一気に身体にいれたからなのか、立ちくらみ、立っていることが辛くなってきた。

友達「ちょっと大丈夫ですか」
僕「フゥ大丈夫です、すみませ」
僕「塩田」
友達「おお、古正」
友達「とりあえず大丈夫か、その辺で腰下ろすか」
僕「うん」

そこにいたのは大きな釜を持った塩田だった。

友達「ちょっと水とか買ってくるからちょっとまってて」
僕「ああ、フゥ、うん」
僕は塩田の釜が少し気になり、持ち上げる。
思っていたよりも重く、しっかりとして居て冷たい。
そして何処か気持ちがいい。

友達は水とカフェオレを持って僕が大きな釜を抱きながら座る姿を写真に収めた。


友達「それ、今日使おうと思って実家から持ってきた」
僕「あ、ごめん」
友達「いいよ、持っといてよ重いし」
僕「ああうん」
友達「はい、水」
僕「ありがとう」
友達「あカフェオレのほうが良かった?」
僕「ううん、お水が良かったありがとう。」
友達「やっぱり、体調悪い?」
僕「あァ、まあ、うん」
友達「じゃあ今日やめとく?」
僕「いや、今日はもう大丈夫、お釜冷たくて気持ちいいからなんとかなった」
友達「言いたくない?」
僕「いや言いたくないというか」
友達「言いたくないなら大丈夫」
僕「いや、えっと僕、早くてあと1ヶ月で死ぬ」
友達「え?」
僕「血液のガンらしくて、手術とかしても難しそうで」
友達「うん?うん」
僕「だからそれでなんかたまに動悸とかおかしくなるからそれで、でも本当に大丈夫だから今日は」
友達「そう、か?うん、分かったとりあえず分かった。じゃあ今日はウチで少しご飯食べて少しお話しよう今までのこと」
僕「分かった」
友達「はい、俺のLINE」
僕「電話番号僕知ってるよ」
友達「いや、古正電話変えたでしょ、さっき電話かけてウチの住所とか教えようと思ったんだけどさ、知らないおっさん出てきてまじくそ焦ったから」
僕「ああ、ごめん、ごめん」
友達「だからこれで連絡するから、迷子になったら教えて」

僕「ありがとう」
彼女「マサくん、」
僕「あれ」
彼女「いくら待っても帰ってこないから心配したよ、薬買えた?」
僕「うん、買えた、うん」

彼女は友達に少し苦笑いの会釈をした。

僕「ごめん、じゃあえっとちょっと家帰って準備とかするから一旦一旦は帰る。」
友達「ん、分かったじゃあね」
僕「はい、お釜」
友達「ちょっとあったかい」
僕「じゃ」
友達「じゃニンニン!」

僕は彼女と家に帰った。
後ろにいる塩田の顔をもう少し見たかったけど、
並んで歩く彼女の首から下が少しいつもより早くて
もしかしたらもう塩田は帰っているかもとか思って
どうしても振り返って「バイバイ」を言ってはいけない気がした。

シーン5

彼女「靴脱げる?とりあえずはい、薬飲みな」
僕「うん」

僕は薬を飲む。
薬が喉につっかえてしまいそうで怖くて
水をたらふく飲む。

彼女「さっきの人、知り合い?」

僕は聞かれるなんて思ってなくて、
思わず水を吹き出しそうになってしまった。

彼女「なにその顔」
僕「ごめん」
彼女「ちょっとこぼれてるよ」
僕「ごめん」

彼女は僕にハンカチを渡してくれた。

僕「あの、高校の時の友達?というか、友達」
彼女「そうなんだ」
僕「うん」

彼女「今日ね、シチューだから。」
僕「ん?」
彼女「今日夜ご飯シチュー。ごはんかけながら久しぶりに一緒にたべよ」
僕「ああ」

僕「ごめん。今日、外でご飯食べてくる。」
彼女「そう」
僕「ごめん」
彼女「ちなみに誰と?」
僕「さっきの友達と」
彼女「そっか、じゃあ先食べてるね。」
僕「うんごめんね」
彼女「うん、大丈夫いっておいで」
僕「ありがとう」
彼女「シチュー、一日置いといた方がおいしい、と思うから」

僕「ごめん」
彼女「久しぶりに会うんだから、ちゃんと準備しないとね」
僕「うん」
彼女「ほら、準備してきな」
僕「うん」

僕は彼女の少し寂しそうな声を尻目に部屋を出た。

後輩A「ちょっと、ぼーっとしてないでさっさと片付けなさい」
彼女「あ、はい、すみません」

彼女はシチューのはいったお皿を丁寧に片づけてしまう。

後輩A「ちょっと、今ピークなんだからぼさっとしないで」
彼女「すみません」
後輩A「ん?ちょっとアンタ、凄いクマどうしたの最近寝れてないの?なんかあった?」
彼女「え、そんな酷いですか」
後輩A「酷いなんてもんじゃないわよ、ちょっとセイジ?セイジ!」
後輩B「スターアニスって呼んでよね、それだと六角じゃないの、ねェ。でなによ。」
後輩A「スターアニスって呼びづらいのよ、もうちょっとあれ貸してあげてよ、あれ」
後輩B「あれ?あらやだ凄いクマ、ちょっと待ってなさい」

スターアニス・セイジこと八角セイジは彼女のクマににコンシーラーを塗り、クマが目立たないようにポンポンと塗った。

後輩B「ちょっとこっち向いて、うん、いいじゃない、まあ近寄ったら分かっちゃうけど今今はこれでいいでしょね」
後輩A「そうね、はい」
後輩B「終わったらクマに効く薬分けてあげるからもうちょっとの辛抱ね」
彼女「はい、すみませんありがとうございます」
後輩A「ちょっとそんな顔しないで、あんた顔は良いんだから」
彼女「へへへ」
後輩B「なーに笑ってんのよ、憎たらしい奴」
後輩A「はい、今日はこれがピークだから、乗り越えていくわよ〜」
後輩B「や〜!」
彼女「やー!」

シーン6

友達「まだご飯あるけど、おかわりイリマスカ?」
僕「ううん、もう大丈夫」
友達「そっか、じゃあご馳走様でした」
僕「ご馳走様でした」

友達「やっぱりお釜で炊いたご飯は違うでしょ」
僕「お米が立ってるね」
友達「でしょう」

僕「食器はどうしよう」
友達「ああ、いいよそのままで」
僕「ああわかったありがとう」

友達「お酒とか飲んじゃう?」
僕「うん」
友達「普段お酒とか飲むの?」
僕「あんまりかな」
友達「そっか、じゃあほろ酔いとかにしとく?」
僕「そっちの方が助かる」
友達「じゃあはい」
僕「それ、7%だけど大丈夫」
友達「大丈夫。もう毎日飲んでるから」
僕「大丈夫じゃないじゃん」
友達「いやほんと、この前健康診断でビールはやめましょうって言われてからビールだけは飲んでない」
僕「そういう問題?」
友達「だから大丈夫、はいカンパイ」

久しぶりに再会した僕と友達は
あの時から時間が止まっているようで
お酒を一緒に飲むのは少しだけ罪悪感があるような気がした。

友達「顔赤」
僕「そう?」
友達「ほら、見てみ」

僕は携帯のカメラを起動して、
内カメラで自分の顔を見た。

僕「変わってないじゃん」
友達「いや赤いよ、こことか」

お酒の力じゃないのに
少しあの時を思い出して
恥ずかしくなった。

友達「なんか、ごめん」
僕「いや全然」

友達「さっきの女の人、」
僕「ああ、えっと」

僕「付き合ってるんだ、よね。2年前くらいから。」
友達「そうなんだ」
僕「大学の時の、えっとゼミで同じで、そこから」

友達「そっか」

僕「そっちは彼女とかいないの」
友達「うーん」
僕「何」
友達「いないよ」

僕「そっか、寂しいね」

友達「そっちが言うんだ」
僕「え」

友達「結婚とか考えてるの」
僕「いや、まだそこまで」
友達「そっか」

僕「もし結婚したら、どうする」
友達「どうって」
僕「いや、何でもない」

友達「もう今日は帰ろうか」
僕「え」
友達「時間もそこそこ遅いし」
僕「あァ、うん」

友達「またいつでも連絡して」
僕「ああ、うん、わかったじゃあ」

友達「今度、ムカデ人間2みよう」

僕「うん、連絡する」

シーン7

後輩A「ふ~、じゃあもう一旦落ち着いたし、今日は上がりで」
彼女「はい、お疲れ様でした。」
後輩A「今日は賄い食べてく?」
彼女「いいんですか」
後輩A「あたしがいつだめっていったのよ、セイジ~」
後輩B「だから、スターアニスっていってって、はい賄いね」

後輩B「本日の賄いは~じゃん、スターアニス特製チャーハンシチューで~す」
彼女「炒飯にシチュー」
後輩B「何、文句でもある?」
彼女「いや、別に」
後輩A「文句ありありじゃない、なんで炒飯にシチュー合わせちゃうのよ」
後輩B「しょうがないじゃない、炒飯とシチューが余ってたんだから」

彼女「おいしい」
後輩B「でしょう」
後輩A「ホントに?あらやだ、いけちゃうじゃない」
後輩B「ほらァ、あとはいこれクマに効く薬1日3回1錠づつね」
彼女「これ、彼氏が飲んでる薬といっしょです」
後輩B「あら彼氏もクマ目立つ人?」
彼女「いや、そういうわけじゃ。これどこでもらいました?」
後輩B「もらったっていうか、そこのドラッグストアで買ったのよ、ちょっと高いけど」
彼女「ドラッグストアですか、精神科で処方されたやつじゃなくて?」
後輩A「喋れるなら私食べちゃうけど」
彼女「食べます」

彼女はバクバクと炒飯シチューを食べ進める。
後輩B「ちょっと」
後輩A「あんたそんな食い意地張るタイプだったの」
後輩B「口ベタベタじゃないの」

後輩Bは彼女に紙ナプキンを渡す。

後輩A「で、どうしたの」
後輩B「悩みとか、あるんじゃないの」

彼女「悩み」
後輩A「言えることでいいから」
彼女「でも」

後輩Bは炒飯シチューを彼女の口へ突っ込む。

後輩B「言えないなら今はたくさん食べちゃいなさい」
後輩A「タモリさんも言ってたわよ、人間はね食べなきゃいけないんですよ、寝てるときも人間は動いてるから、回復にならないって」

彼女「あの」

彼女「タモリさんって誰ですか」

後輩A「笑って?」
後輩B「いいとも~」
後輩A「あんたがいってどうすんのよ」
後輩B「すんません」

後輩A「ギャップオブジェネレーション~」

彼女「ちょっと私のお話聞いてもらってもいいですか」
後輩AB「いいとも~」

シーン8

看護「これはここで、よし終わった~」

看護「そういえば」
看護士は何冊かのクリアファイルを眺めていた。

医者「じゃあ、もう今日は退勤で大丈夫だからね」
看護「はい。あコーヒー入れておきました」
医者「ありがとう〜なにか探し物?」

医者は看護士がいれたコーヒーを不味そうに飲む。

看護「え、いえ。」
医者「何々、お胸が大きくなるための秘訣とか?」
看護「いや、ほんとにもうそろそろダメですよ」
医者「何が」
看護「私の我慢と世間の圧力が」
医者「いやァんごめんごめん、で何探してるの」

看護「いや、この前の古正さんのことでちょっと」
医者「ああ、古正さんね、どうしたの古正さんなにか言ってた?」
看護「いや別に何も言われてないですけど、なんかうつ病の患者さんの周りにいる人はどうすればいいんだろうとか思って、ていうかなんでこの前あんなこと言ったんですか。」
医者「この前、あ〜あれね」
看護「あれなんでなんですか、」
医者「いやあ、なんでと言われましても」
看護「あの時は回復の兆候も見えてたのに、あんな言い方しちゃったら、ますます」
医者「うちは何の専門だっけ」
看護「患者さんの精神とか、心療内科なので、」
医者「うーん、それだともう少しかかりそうだね」
看護「何がですか」
医者「今日ご飯食べにいこうか」
看護「今からだと、吉野家とかになるんですか」
医者「いやいや、吉野家はもうちょっとしんどいよ、内臓が」
看護「こんな時間にまだ空いてるとこなんて」
医者「いいからとりあえず、行きましょう~」
看護「はい」
医者「そこはいいとも~でしょうに」
看護「なんですかそれ」
医者「知らないんだ~おじさんショック」

シーン9

後輩A「そんなことがあったのね」
彼女「だから、私はもう」
後輩A「ちょっと、セイジ」
後輩B「何よ」

後輩Aは後輩Bに何か一発ギャグをさせる

彼女「面白くないです」
後輩B「やだ、失礼な子」

医者「ナディアちゃん」
後輩A「ちょっと鯉さん、もう店閉めちゃったわよ」
医者「いや~ごめんね、ごめんね」
後輩B「いやU字工事か」
彼女「いらっしゃいませ?ってマナ」

看護「やっぱりしまってるじゃないですか、お姉ちゃん」
医者「大丈夫大丈夫、ナディアちゃん優しいから」
後輩B「小島よしお」
後輩A「もういつものことだからなれちゃったけど、何?うち今なんもないよ」

医者「うーん」
彼女「これ、食べます?」
医者「何それ」
彼女「アニスさん特製の炒飯シチューです」
看護「炒飯にシチュー」
後輩B「旨いわよ~」

医者「じゃあちょびっともらおうかな」
看護「食べるんですか」
医者「うん、おいしい」
後輩B「でしょう」
看護「いや、私はいいです」
後輩B「なんでよ、おいしいのに」

後輩A「んで、なによ鯉さん」
医者「いやね、ちょっと聞きたいことあって」

医者「来月ナディアちゃん死ぬよって言われたら、どうする?」
後輩B「何それ縁起でもない」
後輩A「うーん」

後輩A「あたしは結構楽になるかも」
後輩B「えェ」
後輩A「まあそりゃもうセイジとか鯉さん、そんであんたとも会えることなくなるって思ったら悲しいし、寂しいよ。でも、もう今まで感じてた気遣いとか心配とかもうしなくていいんだ~って感じるし、ほら、もう頭の可笑しい客とか相手にしなくていいって思ったらなんか楽じゃない?」

後輩B「そうだけどさ」
後輩A「でももちろん、あんたたちともう会えないのは寂しい。でもそれよりちょっとだけそっちの方が大きいってこと」
医者「だって、まな板ちゃん」
看護「うーん」

医者「だから、僕らの仕事は人の気持ちがとか精神がとかではなくて、その人にとって今が一番生きやすいなって感じてもらうことなんだよ。多くの人はそれをいつでもどこでも感じ取れるんだけど、そうじゃない人もいるからさ」
後輩B「なるほど?」
後輩A「セイジは今楽しい?」
後輩B「楽しいっていうか、なんか楽」
後輩A「ならそれでいい。私らの仕事もそう、この店来て居心地いいなとか、楽だなって感じてもらうこと。料理は二の次なのよ」

医者「まあ、人はさ、いつか死んじゃうから」
後輩A「死んだら骨だけ」
医者「ちなみに、もともと動物って生きられる期間が決まってるらしいよ。
人間はそれを無理やり伸ばしてるだけ。医学とか、食べ物とかで。だからゴムみたいにのばされてびよんびよんになってるとこぐらいは楽しんでも地獄には堕ちないよ。」
後輩A「まあ伸び切って切れちゃったら元も子もないけどね」
医者「それのちょうどいいとこ、探したいね」
後輩A「だね」

看護「なんか、まだわかんないです」
後輩A「勘の悪いガキだね」
医者「まあまあ。今度会った時に聞いてみようか」
看護「はい、」

医者「じゃあ、ごめんね、今度はちゃんとお店開いてるときにくるから」
後輩A「ぜひそうして」
看護「お姉ちゃん」

看護「今度ちょっと話したいかも」
彼女「うんいいよ」

医者「じゃニンニン、ほら」
看護「え?ニンニン?」
後輩AB「ニンニン!またきてね~」

後輩A「じゃあ、はいこれ食べちゃって。洗うのはまた来てからでいいから」
彼女「はい」
後輩B「ちゃんと、男とちゃんと話してくるんだよ」
彼女「はい」

後輩A「じゃあ先あがんな、あとはうちらでやっといちゃうから」
後輩B「ええ~あたしも?」
後輩A「なによ、文句ある?」
後輩B「ないけど~」

彼女「お先に失礼します。」

シーン10

インターホンが鳴る。

友達「はい」
僕「ごめん、急に」
友達「何、どうし、ナベ?」
僕「この前、ごちそうしてくれたから、お返し」
友達「ありがとう、だけど」

僕「あとこれ」

友達「ムカデ人間2、ほんとに借りてきたんだ」
僕「約束したでしょ」

友達「そうだね」

僕「そういえば、野菜あんまり好きじゃなかったよね」
友達「ああ、うん」

友達「ごめん、俺」
僕「だから、今日は見て、お肉と魚しかいれてないんだ」
友達「ごめん、うち、レコーダーないんだ。」
僕「そうなんだ」
友達「あと、野菜は食べられるようになったんだ、だから、なんか今日は野菜の気分かも」
僕「え」
友達「ごめん」
僕「そっか、こっちこそごめん」
友達「ごめん、ごめん」

僕「えっと、今日はじゃあ、帰るね。」
友達「うん」

帰ろうとする僕を止める友達だった人。

友達「ごめん」

友達だった人は僕を押し倒した。
僕は抵抗しようとしたけど、
それ以上に友達だった人の力は強かった。

シーン11

「ごめん、少し帰るの遅くなる」
「分かった、夜ご飯は食べる?」
「うん」
「じゃあ作って待ってるね。今日はお鍋だよ」

アイコスを吸おうとする僕。

友達「タバコ」
僕「ごめん」

2人ではどうしようも出来ない空気が流れる。

友達「俺、今でも思い出すんだ。」

友達「あの時古正に言われたこと」

僕「そんなこと思い出さないで今」

友達「でもやっぱ言えなかったな〜、ほかの友達にも家族にも」
僕「アルコは知ってるじゃん」
友達「アルコは犬だからわかんないよ」
僕「そうだね」

友達「俺さ、まだ」
僕「待って」

僕「その先は、その」
友達「何」
僕「それ以上聞くのはなんか」

僕「なんか色々なんか壊れちゃいそうで」

友達「好きとか嫌いとかさ、正直どうでもよくね。」

僕「え」

友達「やっぱり世間体って大事だよな〜。どんだけ自分が受け入れてても、世間が許してくれなきゃ意味無いもんな。なんかありがとう、あの時ちゃんと言ってくれて『ゲイはこれからしんどいから』って『ちゃんと周りに迎合して生きていかないと』って言ってくれて。そりゃそうだよな。うんそりゃそうだよ。ゲイなんだから、俺はさ。あ〜なんかスッキリしてきたかも、でもお前は偉いよな。お前は、ちゃんと溶け込めてて偉いな」

僕はビンタをした。

僕「溶け込めてるわけないじゃん」

僕は足早に部屋を出ていった。

友達は虚無に晒された部屋で1人咽び泣く。

「お母さん。お父さん。生まれてきてしまってごめんなさい。孫の顔を見せられなくてごめんなさい。普通じゃなくてごめんなさい。」

暗転

シーン12

明転
彼女「はい」
妹「お姉ちゃんがいれたコーヒーってさなんでいつもこんな美味しいの」
彼女「なんで?そんな変わる?」
妹「変わるよ、私が入れたらいっつも不味いの」
彼女「コーヒーマズイってなによ」
妹「なんか苦すぎる?っていうか雑って感じ。だしいっつも不味そうな顔されるの」
彼女「何それ、あれじゃないの愛が足りないんじゃないの」
妹「愛ってなに〜誰が教えて〜」
彼女「あいみょん聴きな、それかaiko」
妹「え〜、じゃあ私もキャンピングカーでケーキ食べようかな」
彼女「やってみる?」

彼女と妹は久しぶりの2人の空間を楽しんでいる。
妹は床に落ちているうつ病に関する本を見つけ、
話を切り出す。

妹「お姉ちゃん」
彼女「何」
妹「お姉ちゃんは別れようとは思わないの」
彼女「どうして」
妹「いやさ、普通にさ、うつ病抱えてる彼氏嫌じゃない?ていうかしんどくない?」
彼女「うーん」
妹「なんかあの人見てるとさ、お姉ちゃんもうちょっと楽に生きてていいんじゃないかなって」
彼女「そうかな」
妹「そうだよ、まあ精神科で働いてる私が言うのもなんだけどさ、患者さんだから接せられるところはあるんだけどでももし将来って考えたら自分の彼氏がうつ病なのちょっと抱えきれないって言うか」
彼女「そうだよね、ごめんね」

妹「なんでお姉ちゃんが謝るの」
彼女「ううん、私が悪いの、ごめんね」

彼女「でも私はまだ、うん。別れるとか分かんないな。マナに愛がわかんないのと同じくらい。」

彼女「でもこの前お医者さんとお店きたじゃない、その時思ったんだ。終わりが分かってるって気が楽だなって。分かってる終わりってちょっと救われるなって。だから別れることも考えたんだけど、でもやっぱり別れたあとが私わかんなくて、自分がどう思うとか、どう感じるとか。そう、だから、まだ見えない終わりだから私は怖いし、まだ別れたくないんだ」

妹「それが、今どれだけ辛くても?」
彼女「うん」
妹「そっか、分かった」
彼女「ごめんね、変な心配かけちゃって」
妹「ううん、私こそごめん」
彼女「もし、少しずつ受け入れられそうになってきたらあの人のことも私と同じくらいちゃんと見てあげてね」
妹「うん」

トイレが流れる音がする。

僕「あ」
妹「居たの!?」
僕「ごめんなさい」
妹「いや、別に怒ってないんだけど」
僕「あァ、それもごめんなさい」

彼女「長かったね」
僕「うん、久しぶりに出た」

彼女「久しぶりってどのくらい?」
僕「2週間くらいかな」
妹「2週間!?」
僕「ずっと食べてなかったから」
彼女「私が見てない間何食べて生きてたの」
僕「塩と水、あと薬」
妹「塩と水?!よく生きてたね」

妹「ごめん、黙ってます、はい。」

僕「うん、生きてた、生きてちゃった」

僕「あのさ」
彼女「あのね」

僕「先良いよ」
彼女「ううん、大丈夫」
僕「先に聞きたい」

彼女「わかった」

彼女「私たち、もうそろそろ別れる?」

僕「別れ、たいよね。そうだよね」

彼女「ううん、別れたいわけじゃない。でも別れた方がいいかなって思った。だから、マサくんはどう思ってるかなって」
僕「僕は」

僕は涙が急に溢れ出した。
ここ1年くらい何も感じなかったはずの心が急に試されているようで、色んな感情が生まれて零れていくようだった。

僕「僕は別れたくない。独りになりたくない、し、生きてていいって思われてたい。もう自分のことを見失いたくない。」

彼女「そっか」

僕「ごめんなさい、僕、僕、あの、小さい時からあの、男の人が気になっててその、ずっと好きで、でもやっぱり周りが怖くて、どう思われてるんだろうとか冷たい目線がやっぱりあって、僕、その色物みたいな扱われ方されたくなくて、だから、ナオちゃんと無理にでも付き合えば、なんか変わるかなって、普通になれるかなって思ったんだけど、でもわかんないままで、しんどくて、ずっと独りに感じてて、でも嫌な顔せずに一緒にいてくれて、それも無下にしちゃってる僕も居て、あの本当にごめん、ごめんなさい。ごめんなさい」

彼女「久しぶりに名前呼んでくれたね、ありがとう」

僕「それでね」

僕「僕、ホントは男の子が好きなんだ。ずっと言わなくてごめん」

当事者たちにとっては重く苦しい空間に感じられる。

彼女「あなたはどうしてほしい」

僕「僕は、それでも変わらず一緒にいてほしい」

彼女「うん、わかった。わかったとしか今は言えないんだけど」
僕「うん」

僕「でも、全然、あれだったら、その」
彼女「そんなことないよ」

彼女「でも、今度約束ぶっちしたら、怒ります」

僕「うん、ごめん」

妹のおなかがなる。

妹「ごめん、おなかすいちゃった、みたい」
彼女「じゃあ一緒に夜ご飯、買いに行こう」
僕「うん」



おわり

あらすじ:自身がゲイであることを周囲には隠しながら生きる僕(古正)は突然余命一ヶ月であると宣告される。しかしながら、僕はこの余命宣告が生きづらい世の中からの解放のように感じていた。そこに突如現れるかつて友達になったはずの男(塩田)が現れる。
少しづつ少しづつ、僕の心は「また」変わっていく。

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