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イノベーター理論とエビデンス【3】


イノベーター理論とエビデンス【2】の続きです。


最初になぜイノベーター理論を出したかには3つの意味があるとお話ししました。その2つは前述のとおり、

1、イノベーター理論がエビデンスにも適用できるだろうということ
2、「反証主義」があるから

で、今回は2に関してです。


これは、

イノベーター理論の概念を使えば、例えば自分の常識を覆すようなエビデンスを読み感銘を受けたとしても、そのエビデンスが日の浅い「イノベーター」であることに気が付けるなら、慎重にそのエビデンスを見るべきだろうということが分かります。

なぜなら、まだ反証自体あまりされていなく、自分では気づけないような思ってもみない「穴」が隠されているかもしれないからです。


逆にラガードにまで浸透しているのであれば、先ほどのイノベーターとは視点を変えてみるべきでしょう。

なぜならエビデンスを普段読まない人でも知っているくらいに、私たちの日常生活に知識としても技術としても浸透しているかもしれないからです。

もちろん、あらゆるエビデンスは鵜呑みにせず違う側面からは疑うべきです。定説が覆るということは有り得ますし、常識を疑うことを忘れてはならないからです。

またラガードが多くあるとき、もしかしたらパラダイムシフトの示唆させているのかもしれませんね。


「自分の中の反証主義を見失わないための一つの使い方として、イノベーター理論を使う」。これが2点目の理由です。



少し違う視点からエビデンスについて考察をしてみます。
全身麻酔をイメージしてみてみましょう。


全身麻酔という言葉や意味は「ラガード(=医療に興味のない人たち)」まで広く浸透していると言えます。

しかし現在でも作用機序(それが働く仕組み)や原理はしっかりと解明されておらず、経験則で扱っているのが現状です。

ではエビデンスは取れていないのでしょうか?


イノエビ【1】でもお話ししましたが、あくまでもエビデンスは「偶然を科学」したものです。

エビデンスはその性質として、計測できないものに関しては計測ができません。しかし計測できるものに関しては「なぜそれが起こるか」は分からなくてもデータが取れます。

つまり「なぜ起こるかは分からないけどデータは取れている=エビデンスは存在する」ことになります。(そして考察が入る)

「エビデンスが取れている=原理が解明している」と考えがちですが、必ずしも原理を完璧に解明しているわけではなく、実際に行ったときに予想外の “化学反応” が起こる可能性を含め、期待している効果が出るかどうかを統計的に確かめているといえます。

あくまで統計である以上、規模を大きくすれば正規分布に当てはまります。これは中央値から離れたものに関しては良くも悪くもエビデンス通りの効果になりづらい可能性を示唆させます。


また、エビデンスを取る実験の場は限られた世界である「箱庭」であることも忘れがちかもしれません。

これは、「動物園の中にいるイルカを365日調査したからといって、自然の中にいるイルカの一年を通した生態の全てを解明したことにならない」ということです。

さらに、たとえ自然の中のイルカの調査だとしても、イルカが366日目に想像もできない行動をする可能性は誰も否定もできません。

ですので全身麻酔に関して言えば、様々なエビデンスがありデータが取れていても、安易には使いたくないし、できることならかけるべきではない、と考えている人も存在するのです。


ちなみにこのイルカの話、前回のイノエビ【2】の「太陽が毎日昇ることは実証主義の観察によって法則化することはできない」ことと同じ内容ですよね。

しかし今では「太陽が毎日昇る」ことに関して、誰もが「太陽は毎日昇る」のかを理解することができます。

これは一重に、太陽を中心にした地球の公転と自転、地軸の発見によるもので、法則化というよりも、理論や器具の発達から、限りなくシンプルに原理が解明されたからと言えます。


このいわゆる「地動説」は今日では一般常識です。
500年ほど昔にコペルニクスが、当時の「天動説」という従来の常識を覆す考えを、観測方法や計算も載せ「天体の回転について」という本にして出版しました。

その当時はあまり表沙汰にならなかったようでしたが、半世紀ほど後にそれを支持したガリレオガリレイは無期刑、ジョルダーノブルーノは処刑されるほどに、パラダイムに沿っていなかった。

パラダイムシフトとは、一般には理解されない天才が起点になる表れでもあると思います。

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染谷 清行

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