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イノベーター理論とエビデンス【4】


イノベーター理論とエビデンス【3】の続きです。


イノベーター理論を出した最後の一つの意味は、「自分のポジションを確認し、エビデンス以上の視野を持つため」です。


エビデンスも統計学も重要です。

直観で心臓は摘出するべきではないですし、天動説の教理のままでは科学は発展することはできなかったでしょう。

しかし前世代から今世代、そして次世代へとシフトしていく中で、より良いアプローチのためにはエビデンスを鵜呑みにするのではなく、そのエビデンスが見せてくれた視点を超える必要があります。

そのためにはエビデンスの知識に加えて、自分のポジションと相手のポジションを確認するために使うイノベーター理論、それと実際の経験や知識、クライアントの意向と、このバランスが重要です。


実際の経験や知識は対人関係の中に生まれます。そして自分のポジションと相手のポジションは、相対的であり常に変化します。

例えばとんでもないことを言っている方と出会った時、本当にとんでもないことを言っているだけなのかもしれませんが、その方は本当はイノベーター(=革新者)に成り得る存在かもしれません。

エビデンスを過剰に重視しすぎる時の自分はアーリーマジョリティかレイトマジョリティに属していると考えても良いかもしれません。

自分にとって常識であることを話している時でも、聞き手にとってはあなたのことをイノベーターだと思うかもしれません。


イノベーター理論のタイプ分類で自分がどこに位置し相手が位置しているかは、誰と何を話しているかでも入れ替わるでしょうし、日々のセッションの中であっても、その週、その日、その時間、そのセット、その瞬間ごとに入れ替わることも在り得えます。

(※もちろん実際はイノベーター理論だけで語れるものではありません)


クライアントの意向について考えてみましょう。この意向とは「声」と読み替えても良いと思います。

エビデンスの効果も正規分布に当てはまるケースがあると考えられます。


これをトレーニング分野で考えてみると、

エビデンスに出ていることだけを行ったとき、良くも悪くも正規分布の中央に寄って行ってしまう可能性が生じます。

そのクライアントのマイナス面やカバー面が正規分布の中央に寄って行ったとき、クライアントは「パフォーマンスが上がった」ことを体感するでしょう。

しかし正規分布で上位1%に入るような希有なスキルを型にハメてしまったとき、それは中央に寄って行ってしまうかもしれません。

クライアントの意向、つまり生の声を聴きながらトレーニングを考えることは重要だと考えます。

何事にも良い面と悪い面があるように、エビデンスであれば当てはめることで殺してしまう才能があることを私たちは再認識すべきで、クライアントの身体の状態や特徴が病理的なのか生理的なのかを正しく理解する必要があります。

これは特に「運動領域のオステオパシー」を考えるうえで非常に大事な概念になります。

これらのことを見極めるためには多くの知識とともに、現場での経験が必要で、この経験値はエビデンスを鵜呑みにして右から左に流しているだけでは得られないことでもあるでしょう。

膨大な臨床の経験はもちろん、人とのコミュニケーション能力や、数学や文学、教養、成功、挫折。

その指導の対象が人の身体や心であるのならば、共通概念として解剖学、生理学、病理学、心理学があらゆる基礎になり、自分のその実体験や広い意味での教養も重要になるでしょう。


「パラダイムシフトとは、一般には理解されない天才が起点になる表れでもあると思う」と前回に書きましたが、その天才を飼殺してしまっているのは私たち一人ひとりの常識なのかもしれません。

しかし世界も私たちも、文明レベルや文化レベルが向上しています。

であるなら、宗教と地動説の歴史のようなことを繰り返させずに、これから上手にバランスの取れる社会にしていけるのだと思います。


人類は火を起点に文明を築いたともいわれています。
その火を含め、どんなものも使い方次第であらゆる表情が生まれます。

エビデンスやデータや数字は非常に重要です。

そして現場で働く私たちは、その紙に書かれているデータや数字とその裏側までを理解したら、そこから顔を上げ視野を広げて、目の前のクライアントを見ることが重要なのです。


そのためにイノベーター理論を使う。
できればもっと根本にある自分自身のフィロソフィーを再認識する。
クライアントのフィロソフィーを掘り起こす。

あなたはなぜ火を欲しているのでしょう。

今回のブログが、「あなたの火の使い方」を考えるきっかけになっていただければ幸いです。



染谷 清行

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