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オステオパシーは1874年にアメリカのミズーリ州の医師、A.Tスティル博士が発表した医学です。


スティルは医師でありながら三人の子を髄膜炎で亡くし、当時の西洋医学は時には有害でもあるのではないか、と落胆しました。事実、その時代は水銀などを薬として処方していたこともあったようです。


スティルはその後、研究をしていく中で「解剖学的な身体の変化が病気を引き起こしている」という見地から、多くの人体解剖、研究を行い、骨格や筋肉の仕組みが適切であるならば健康を維持することができる、という結論にたどり着きます。


これを現代ふうに表現するならば、「身体が適切に動いているとき、ホメオスタシスは最大になる」といえるでしょう。


ホメオスタシスとは自己恒常性のことで、運動をしても、雪の中にいても、体温をコンマ単位で保ってくれるような一連の機能のことで、発熱したときに最終的に体温が平熱に戻るのも、怪我をしたときに治癒する過程も、この機能が働いています。


このホメオスタシス、自然治癒力という偉大な機能を生物は生まれながらに自動で「プリインストール」されていて、バックグラウンドで働き続け身体を守り、有事の際にも身体を治癒させていきます。


ではなぜスティル博士はこの機能を最大限発揮するために、骨格や筋肉が適切に機能している必要がある、と考えたのでしょうか?


キーとなるワードは「循環」です。


人の身体は70兆個ともいわれる生き物=細胞で成り立っています。その細胞たちは血液や体液によって栄養を運び、ホルモンなどの伝達物質を運び、老廃物を運び、それらを処理して排泄していきます。


また神経も軸索という「ケーブル」を神経伝達物質が伝わり、情報を交換します。


細胞も生き物ですから、体液が物資を運んでくれない以上、上手に働くことができません。


最悪、壊死=細胞は死んでしまいます。


この循環は物理的に起こっていることですので、身体のゆがみや緊張があると流れをせき止められ、うまく循環ができません。


神経も、ケーブルが押しつぶされてしまってはちゃんとした情報の送受信が行えません。


これらのことは免疫力の低下や内臓機能の低下、神経機能の低下、自然治癒力の低下といった深刻な機能障害を与えます。


ゆえに、「解剖学的な身体の変化が病気を引き起こしている = 骨格や筋肉の仕組みが適切であるならば、健康を維持できる」へと、つながります。


事実、1918年に世界中でインフルエンザが猛威をふるったとき、オステオパシー手技療法を受けていた者たちの生存率が著しく高かったというエピソードがあります。


オステオパシーとは、解剖学や生理学、病理学を基盤とした考え方を使い、骨格や筋肉をあるべき姿にし、身体本来の機能=自然治癒力を発揮する状態にする、という考え方のことをいいます。


ちなみに現在のオステオパシーは骨格や筋肉だけではなく、身体のあらゆる組織へアプローチしていきますが、これらのことはヨガやピラティス、太極拳を始めとした健康運動法はなぜ効果が出るのか?といった答えにも繋がってくるでしょう。



染谷 清行

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