メランコリック

『メランコリック』は感傷マゾの対義語

note主催の『メランコリック』試写会に参加しました。
この記事は田中征爾監督『メランコリック』の感想です。

ネタバレありの感想です。ご注意ください。

『メランコリック』は本日8月3日よりUPLINK他で封切り!


2019年は無感情がデフォルトな時代

2019年はどんな時代ですか?
厳しすぎる現実、決して明るいとは言い切れない未来像。
誰もが傷つかないように心を閉ざした時代。

俺はそう思います。

たぶんイヤイヤ心を閉ざしてるわけじゃないです。
傷つきたくないから普段は心を閉ざした方が楽、みたいな。
それくらいのマインドです。

普段から心を閉ざしていても大丈夫な時代になったとも言えます。
アニメやソシャゲやYouTuberが心を代弁してくれるから。
いいねとリツイートは感情です。


エモは無感情が感情になること

無感情が感情になることをエモと言います。


突然ですが、RADWIMPSの曲はエモいです。
「心の高ぶり」「感情的」がキーワードだと思います。


ほかにもエモは感傷だとも言いますね。
こっちは「リラックス」や「切なさ」がキーワードです。

エモは無感情が感情になることなので、
行き着く感情がポジティブでもネガティブでもいいのです。


2つの「無感情に戻る」

無感情が感情になることをエモと言いました。
では、感情が無感情になることは?

これは単純に「無感情になる」で良いでしょう。
「現実」に鬱々として心を閉ざすことです。
大人への通過儀礼として誰もがやってきました。

だけど、エモいシーンに触れて思わず感情になる時があります。
そこから「無感情に戻る」のです。
「無感情になる」と「無感情に戻る」は違います

「無感情に戻る」は、
ポジティブなところから戻る場合とネガティブなところから戻る場合で、
ものの感じ方に異なる作用が働きます。

それぞれのところから戻る心の動きには名前があります。


ポジティブなところから無感情に戻る「感傷マゾ」

まず、ポジティブなところから無感情に戻る場合です。
これを「感傷マゾ」と言います。

『感傷マゾvol.01』からの引用です。

感傷マゾとは、
存在しなかった青春への祈りです。

引用元:https://booth.pm/ja/items/1388853

ここに書かれている感傷を求め続けるゾンビは、
ポジティブな青春を思い浮かべて感情になります。

ゾンビはアニメやマンガでしか青春を知らないから、
無感情に戻る時はいつも現実に引き戻され、心が沈みます。

現実を突きつけられたり青春の象徴から否定されたりして無感情を自覚し、
沈んでいく心の動きに快感を覚える
ことを感傷マゾと呼んでいます。

なお、感傷マゾが現実を肯定するために使われることはありません。


ネガティブなところから無感情に戻る「メランコリック」

そして、ネガティブなところから無感情に戻る場合です。
これを「メランコリック」と言うのだと思いました。

前情報が長すぎる? ごめんな、俺はめんどくさいオタクなんだ。

メランコリックの簡単なあらすじを話すと、うだつの上がらない日々を送る青年が、社会から外れているけど刺激的な仕事を通じて、刺激的な仕事を続けて社会から外れるか仕事をやめてうだつの上がらない日々に戻るか、という選択をする、という物語です。

うだつの上がらない日々は憂鬱で、刺激的なものを求めてしまう心理があります。
それが「無感情」の正体です。
心を閉ざしても感情を求めるのは憂鬱だから。

『メランコリック』は刺激的な仕事を通じ、感情になります。
しかし、その感情はネガティブなものでした。
感情になれたことで主人公は日々の生活が彩られていきます。

物語後半で主人公は彩られた生活を手放し、感情になれる刺激的な仕事をやめ、『メランコリック』のうだつの上がらない日々に戻る決断をします。
それは現実の肯定に他ならないと思います。


現実を前向きに見つめられるようになる映画

本作は主人公を通して刺激か憂鬱かという命題を体験します。
その選択が正しかったのだと俺は思いません。
同時に間違っていたのだとも思いません。

ただ、見終えた後は現実を前向きに見つめることができました

試写会はVtuber仲間のTELL君と外苑前のピースオブケイク本社に見に行って、その帰り道は感想に花が咲きました。

俺は早く帰りたくなかったのです。
だから渋谷まで歩こうと言い出しました。

なのに表参道で土砂降りの雨に遭遇。
仕方なく近くのマクドナルドに避難しました。

そこで雨が弱まるのを待ちながら、映画のことを話してました。
この記事はその感想会のまとめです。

うだつの上がらない日々に俺たちはいるけれど、
たしかにこういう時間が大切なのかもしれないなあ、と再発見しました。


謝辞

この記事は以下の試写会で見た『メランコリック』の感想エントリです。

試写会を開催したnoteのピースオブケイク様、試写会をしてくださったOneGoose様、ありがとうございました!