見出し画像

「闇を照らす」天野倉一郎

闇を照らす《樹海ライトアッププロジェクト》に寄せて
天野倉一郎

世の中にはソーシャルゲームの10連ガチャを回して目当てのデータを追い求める人たちがいる。
TCGのカードを箱単位で買って、鋏でパック開封を楽しむ人たちもいる。
そしてそれらの様子を撮影して視聴者に追体験させる動画すら出回っている。

みんなそのモノが欲しいのではなく、そのモノを手繰り寄せた瞬間の脳の沸騰を追い求めているんだろう。
(脳汁がドバドバと表現する人もいる)
闇から手繰り寄せる楽しさとでも言うべきか。
不鮮明でよくわからない闇に光を当てて中身を確かめる様は、文字通り「面白い」のだ。

最近ふと思うことがある。
若い人ほどその周囲に闇が溢れていて、都度分け入っては新たな発見で心を揺さぶることができる。
一方で「何も知らない状態でもう一度体験してみたい」とこぼす大人は、都心の夜のように街灯が林立しており、見える景色はもはや想像の余地が乏しい。

だからこそ私は今、青木ヶ原樹海のような暗い原始林に興味を抱かずにはいられない。
暗い昏い場所に光を当てて境界線を探る。
どこまでが天でどこからが地になるか。
どこまでが実像でどこからが虚像にあたるのか。

曖昧で良くわからないものを確定させたい衝動と、目の前の現実を正確に捉えようとする意識を半々に持ちながら取り組みたいと考えている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?