#42 本番までのリアルな練習日記【後編】

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※ここでの「ノート更新」とは手書きノートのことです。

小さなコンサートまでの練習日記をつづっていくシリーズ、今日から後編です。

ずいぶん長くなりましたので、【前/後編】に分けました。このnoteは【後編】です。

【前編】はこちら↓

おもな練習曲目は次のとおりです。

メンデルスゾーン:無言歌集より「春の歌」
ラフマニノフ:前奏曲 Op.3-2 「鐘」
プーランク:即興曲 第15番 「エディット・ピアフをたたえて」
ショパン:ワルツ 第5番 変イ長調 Op.42
ショパン:バラード 第1番 ト短調 Op.23
(約30分)

たまに悩み解消や息抜きにほかの曲を弾くこともあります!それでは、23日分の日記から。

(後半は、新型コロナウイルスの関係で心境も日に日に変わり、練習内容だけでなく胸の内も語っています。またコンサートは広く告知・集客せず、家族、ごく近くの身内の方のみになりました。)

【3月23日】後半の指針を立てる一日

今日はめずらしく夫婦ふたりとも空く時間があったので、パートナーに頼んで通し練習を聴いてもらうことにしていた。

●パートナーからのワンポイントアドバイス

それぞれ、一言ずつコメントをもらった。以下の通り。

・メンデルスゾーン…ドイツ音楽であるということを再確認したほうがいい

・ラフマニノフ…響きの多い曲だが、たまに「生の音」が入ってもいいんじゃないか

・プーランク…軽さやグロテスクさの研究の余地あり。きれいなだけではない

・ショパン(ワルツ)…音形によるテンポ感の微妙な違いがほしい。左手にもう少し個性ほしい

・ショパン(バラード)…ワルツの直後に聴くと「舞曲」っぽく聞こえてしまいそうになる。6拍子の大形式であることを再確認すべし。

…やはり自分では見えていないポイントを指摘してもらえて、とても貴重な機会となり助かった。

●アドバイスと、自分の感触をふまえて

・メンデルスゾーン…ペダルを再考。ノンペダルでカッチリめに練習した上で、もう一度流れる。メンデルスゾーンらしい端正さを大事にする。

左手のアルペジオは展開形によってずいぶん印象が違うので(例:ミラドミと、ラドミラノ違い)、その響きを味わって弾く。

出だしの自分の中の「緊張感」と「ゆるみ感」のバランス、ブレンド具合をいろいろ試してみる。

・ラフマニノフ…曲調的に「音」に神経や感性の多くを使いそうになるが、やはりこの曲はその先をいかに創れるかが重要。

とくに今回は小さなサロン(部屋)で弾くので、キャンバスの大きさ、平面ではなく奥まで見えてくる遠近感、なにもない「間」など、大きなホールとはまったく違う部分もあるし、それをわかった上で弾かないと自分本意な演奏になる。

ホールの響きに包んでもらえない分、難しいことや工夫しなければならないこともある。

もう少し、多面的に見て練習することにする。

・プーランク…濃いような薄いような、なんともわからない曲だが「濃いような薄いような」というそのままで良いのかもしれない。どちらか明確な答えを得て、ひとつに決めて弾く必要はないのかなと思えてきた。

グロテスクさというのはたしかに近代フランス音楽ではとても重要な要素なので、ツンとした冷たさのようなものもどこか香ると良いかと思う。

やっぱり「音」が重要になる。

それと歌唱的なメロディをいつも同じように歌わないで、移ろいゆく気分によって少しずつ変わっていく歌を、そっとその空間に届けるような

そんな感じで弾いてみよう。

・ワルツ第5番(ショパン)…大胆に弾きたい。それは決まっている。大胆に、優雅に、おしゃれに。あとは自分の中に問題がある。

一番の問題は、「一瞬冷静になってしまう」こと。つまりすべての音、音楽が有機的につながっていないということである。どこかで区切ってしまう。

「ハイ、おわり」「ふう、ここまで終わった」「そして、次」こんなナレーションが聞こえてきそうな演奏になってしまいそう。

そうではなくて、ある一部分が終わったらふっと次のモチーフが自然に呼び込まれる。ある場所では、バァっとひらけていって、次の小節はその延長線上にある。

部分ごとの練習や取り組みだけでなく、いかにそれらを1つのストーリーにつなげていくか。

解決すべき問題がわりとハッキリしているので、それをただただ行う。

はじめの音に魅了されて、気づいたら最後の音までただ引き込まれていた…

そんな演奏がいい。

(これはどの曲でも言えることかな!)

・バラード第1番(ショパン)…一番の問題は、アドレナリンの量を自分でコントロールできないこと。いや、量をコントロールするなんて到底むずかしい。

アドレナリンの量に応じた自分の受け皿がうまく機能していない。

なにか、気持ちや思いが高まると、自分の中のバランスが狂ってしまったり、どこかで苦しくなって精神的な息継ぎをしてしまう。

たしかに、集中の糸をずっと一本張っていると、苦しくなったり、呼吸や体のバランスに影響を及ぼすこともある。聴いている人も苦しいかもしれない。

でもだからといって、そこでぱっと糸を切っていいはずはない。

体の意識、呼吸、バランス、思考の使い方と配分、あらゆることをもっと適切に保ってこそ、高い集中力やアドレナリンに対応できるのだろう。

基本的な練習というよりも「本番」に適した練習が、あと数日必要そうだ。

●まとめ…いろいろと学びや新たな発見が多かった。これまでとは違う視点であと数日やっていくことにする。

【3月24日】新しいことは少なく、基本に返ったり、大事なことをぐるぐるやったりした日

●ひとこと…最近は、「通し・練習の指針確認」→「ゆるりと練習」のサイクルを一日おきに繰り返している感じ。

昨日確認したことを、細かくやってみた。

それにしても、以前ほど「毎日ひたすら練習」というのができなくなってきた…何歳までピアノを弾けるかわからないけど、自分と仲良くしながら長年弾いていきたい。

メンデルスゾーン「春の歌」…ペダルを減らし、ちょっとパキッとしたイメージで弾いてみた。最終的にはまた柔らかく弾くと思うが、ときどき「自分が進んでいる方向と逆のことをする」というのはけっこう有効だと思う。

もう一度、和声分析をしっかり行う。メンデルスゾーンは基本に近いというか、近親調をひととおり巡回している感じなので、意外性が少ないかわりに、ていねいに足並みをそろえていかないと雑になったり不自然になったりしそう。

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