見出し画像

【選手名鑑Vol.2 井上翔太】 「まだ追いつける」 ー全治10ヶ月の大怪我から悲願のAチーム入り。3年の彼が見据える未来とはー


2020年2月29日 リーグ戦メンバー発表当日。
ヘッドコーチの口からロングミッドフィルダーとして2名の選手の名前が挙げられた。

そのうちの一人が今回の主役、3年 井上翔太
全国強化指定選手である4年高貝亮太に続いての選出だった。



現在、ラクロス協会での委員会活動や経営学部の学生としても活躍している彼は、どのようにして成長してきたのか。なぜAチーム入りを果たすことが出来たのか。彼の過去に迫った。
-----------------------------------------------------------------------------

サッカーからラクロスへの転向、 井上を襲った悲劇

高校時代、サッカー部の中枢として活躍していた彼が大学で選んんだのはサッカー部ではなくラクロス部だった。

サッカーでは彼のセンスや才能を十分に発揮出来ていたように見えたが、それは自分が納得できるものではなかった。一方で大学で1から始められるラクロスに興味を示した。

この選択は、後に彼の才能を開花させることになる。



サッカーで培った経験は、戦術理解、体力、ポジショニング、体の使い方などラクロスの様々な面において応用することが出来、井上は当初から他の同期プレーヤーと比べ、頭一つ抜けていた。



彼のラクロス生活は一見順調なように見えたが、2018年6月、彼の身に悲劇が起きた。
初めての学年試合であるサマーに向けての練習中、突如右足に激痛が走り、コートに崩れ落ちた。


診断名は 「前十字靭帯損傷」
復帰までに10ヶ月を要する大怪我だった。

まだ幸いチームは実践的な練習ではなく、基礎的な練習が多かったたえ焦りは感じていなかった。その上、同期やラクロスというスポーツが好きだった為、彼の中に「辞める」という文字は無かった。

入院中、多くの部員が井上を励ましに病院を訪れた。

画像1

*左から現4年佐久山、井上、現4年高貝


「早く復帰しなよ。」
冗談でありながらも、仲間のこの言葉には何度も感動させられたという。

中でも印象に残っているのが、当時3つ上の川島市太郎さんに言われた言葉だった。

「ボウヤ二世になれよ。」

”ボウヤ” すなわち現在のライバルでもある高貝亮太のように上手くなれ、という励みの言葉だった。高貝は高校時代、同じサッカー部の先輩であり、共に公式戦を戦ってきた仲間であった。彼も1年の同じ時期に井上と同じ前十字靭帯を怪我しており、苦い想いを経験していたのだった。


だが落ち込む彼を一番に支えたのは、間違いなく同期の存在だった。そんな同期達に退院祝いとして連れて行ってもらった寿司屋は今でも忘れられない思い出として残っている。

同期の成長

11ヶ月後。苦しいリハビリ生活を耐え抜き、ようやくグラウンドに帰ってきた井上であったが、そこで思いがけない光景を目の当たりにする。2度目の学年試合であるウィンターを終えた同期達が、自分の入院前とは比べ物にならない程の成長を遂げていた。自分一人が置いていかれる感覚に陥った。


早く完全復帰したいという気持ちの反面、怪我再発への不安、周りの成長に対しての焦りから、思うように上手くいかない日々が続いた。


それでも彼は一度もラクロスを辞めようとは思わなかったという。

「SAINTSが好きだったし、純粋にラクロスというスポーツにも興味があった。だから組織には残りたかった。」

「それにまだ怪我の時期が早かったから、みんなに追いつけると思っていた。」

と続けた。


自分の成長

井上は学年を一つ上げ、Bリーグに出場する機会が訪れた。だが出場機会はあったものの、同期のDFである池田、早川、横田の活躍が目立っており、自分が他より劣っていることがはっきりと分かった。

このまま他の選手と同じように練習しても現状は変えられない。
そう考えた井上は改心した。


まずは体づくりからだった。今まで週に数回しかやらなかった筋トレを4回に増やし、空いた時間はとことんジムに費やした。

技術面の強化の為、壁当てを中心に週4〜5回は自主練をするようになった。加えて、ロングを自由に扱えるようになる為にチェック練習を毎日行う生活を続けた。

この努力が現在の井上の立ち位置を決めることになる。

彼のプレーの特徴である、パスカットから繰り広げられる「カウンター」が自主練の成果として実り、Aチーム入りを果たすことが出来た。

Aチームに入った事により同じ土俵に立った今、目標としていた高貝は憧れからライバルへと変わり、彼の目標である「自分の活躍によりチームを勝利に導く」ための第一歩となった。


「高貝さんは日本代表を経験している選手であり、全てを超えるのは難しい。だから自分は高貝さんには無い強みで勝負をして越そうと思っている。」


フィールド外の活躍

井上の活躍は、フィールド内だけでは収まらなかった。

チームコンサルティング班の班長という役割、学生連盟 東日本支部の広報の委員長を経験することによって、目標や目的から逆算する力を身につけて将来AIにとって変わられないような人材になることが彼の目指す将来像である。

目標や目的から逆算する力を、様々な活動を通して身につけるのだと熱く語った。 
-----------------------------------------------------------------------------

井上にとってラクロスとは

「あなたにとってラクロスとは?」

「うーん難しいですね。

確かに自分は1年間怪我していたけど、高貝さんも怪我をしていたんです。それでも日本代表に選ばれているって凄いですよね。

委員会活動でも同じことが言えて、自分よりも多忙な駿太さん(後藤駿太 現4年FO)がAチームで活躍出来ている。


だから、自分の考える言い訳の材料のところには、常にその言い訳を乗り越えた先輩がいるから言い訳することが出来ない。


つまり僕にとってラクロスとは、

「初めて挫折を経験したスポーツであり、
言い訳のきかないスポーツなんです。



どんなに辛い状況でも決して言い訳をしない。
井上の強さはそこにあるのかもしれない。



高貝を追い抜くため、
自らの活躍でチームを勝利に導くため、
自分への言い訳を無くすため、




今日も彼は、クロスを握り練習に励むに違いない。

どんな選手になるのか期待で胸が膨らむ。

画像2

執筆:2年伊藤、2年園井

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?