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分人主義を反映したマーケティング

先日、日経MJ(流通新聞)に掲載された
アサヒビールの松山社長の記事を読んでいたら、
『分人(ぶんじん)』というキーワードが
目に留まりました。

松山「1人が1ブランドしか飲まないという仮説もあるのですが、よくよくみると必ずしもそうでもない。一人ひとりがその時の感情やシーン、気持ちでいろんなものを飲み分けていくような時代になるのかなと思っています」

中村「これまでアイデンティティは一つという考え方が主流でしたが、最近は分ける人と書く『分人(ぶんじん)』、いろんな顔があるという考え方が広がってきていますからね」

日経MJ(流通新聞)2024年6月12日1面より

分人主義とは


分人主義とは小説家の平野啓一郎さんが
提唱された概念です。

「分人dividual」とは、「個人individual」に代わる新しい人間のモデルとして提唱された概念です。

「個人」は、分割することの出来ない一人の人間であり、その中心には、たった一つの「本当の自分」が存在し、さまざまな仮面(ペルソナ)を使い分けて、社会生活を営むものと考えられています。

これに対し、「分人」は、対人関係ごと、環境ごとに分化した、異なる人格のことです。中心に一つだけ「本当の自分」を認めるのではなく、それら複数の人格すべてを「本当の自分」だと捉えます。この考え方を「分人主義」と呼びます。

職場や学校、家庭でそれぞれの人間関係があり、ソーシャル・メディアのアカウントを持ち、背景の異なる様々な人に触れ、国内外を移動する私たちは、今日、幾つもの「分人」を生きています。

自分自身を、更には自分と他者との関係を、「分人主義」という観点から見つめ直すことで、自分を全肯定する難しさ、全否定してしまう苦しさから解放され、複雑化する先行き不透明な社会を生きるための具体的な足場を築くことが出来ます。

分人主義 OFFICIAL SITEより

分人主義の公式ホームページに
YouTube動画による解説もあるので、
ご興味のある方はご参考までに
https://dividualism.k-hirano.com/

「分人」とマーケティングの今後

マーケティングといえば、
「4P」(Product, Price ,Place,Promotion)が
有名ですが、その前に「STP」(Segmentation,Targeting,Positioning)を
しっかり検討することがより重要となります。

「4P」はあくまで手段(伝達方法)であり、
「STP」で誰にどんな価値を提供するのか
目標をしっかり定める必要があります。

「誰に」という最小単位が
「個人」から「分人」になると
想定される変数がさらに多くなります。

前述のビールでいうと、

  • 家の食卓で飲む

  • 会社や組織の仲間と飲みに行く

  • 旅行先で飲む

  • 友人とバカ騒ぎするときに飲む

  • 恋人やパートナーと外食時に飲む

それぞれ少しずつ違う人格で
異なる製品を選択している
可能性があります。

異なる人格別(分人別)の
「1回当たり行動時間」「行動頻度」
「対象商品の購買金額」「対象商品の購買頻度」
などを勘案したCRMの構築が
今後必須となるかもしれません。

おわりに

「分人」というキーワードは
マーケティングだけでなく、
組織戦略や人事戦略にも関連してくるので、
皆様も頭の片隅に置かれてはいかかでしょうか。

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