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町田市立国際版画美術館「自然という書物 15〜19世紀のナチュラルヒストリー&アート」展など

2023.03.30, 04.08 訪問

はぁ〜〜もう学生料金で入れないし平日行くことなんてまず無理だし、失ったものの大きさをひしひしと感じていますが、相変わらずミュージアムに行くことは好きです。今回は2つの展示について書きます


東京国立近代美術館「東京国立近代美術館70周年記念展 重要文化財の秘密」

出口にある大きなパネル。

その名の通り、重要文化財だけを展示している展覧会です。この展覧会では、明治時代以降に指定された絵画・彫刻・工芸の重要文化財68件のうち、展示替えをしながら全部で51点が展示されます、すごい。そして、この会期に一斉に出せるようにそれぞれの展示物の展示時期等を調整したその苦労もしのばれます

重要文化財に指定されたということはすなわち素晴らしい作品であるということなので、それぞれの作品を眺めるのはもちろん楽しいです。横山大観の『生々流転』がこんなに長い作品だとは知らなかったし(40mくらいある)、それを最初から最後まで眺めることができたのは得難い経験だったと思います。しかし、この展覧会の一番面白いところは、展示解説にあると、私は考えています。重要文化財に指定されるにあたり何が評価されたのか、その評価軸が時代を下ってどのように変化したのかは、単に作品を制作年代順に並べるだけでは見えてこないし、まして近代美術の素人たる私には、評価軸の変化を、作品を見るだけで読み取ることはできません。これらの点を個々の作品の解説文や年表によって示してあり、私の中に、重要文化財の新たな見方を獲得することができたと思います

これだけ面白かっただけに、学生料金で入れるうちに入らなかったのが悔やまれますね……


町田市立国際版画美術館「自然という書物 15〜19世紀のナチュラルヒストリー&アート」展

美術館の敷地の入り口にある案内。

版画専門の美術館があるのは初めて知りました。今回私が訪れたのは、単に版画が見たかったからではなく、そこで行われているこの展覧会の内容にとても興味が惹かれたからです。というのも、私は物や図版(これらは言葉のみで完全に表すことが不可能だからこそ用いられるものです)を説明する言葉に関心があり、大学院で研究をしていたのですが、この展覧会では、私の関心の別の側面ともいえる、図版が扱われているからです

フェッランテ・インペラート(著)『博物宝典』より
ミュージアムの歴史について学んだことのある人なら一度は目にしたことがあるはずの絵
写真撮影が可能な作品です。初めて実物を見ました。大きすぎず小さすぎず、という感じです

この展覧会は、15世紀から19世紀に作成された版画から、自然というものがどういうふうに描かれているか、描かれ方がどのように変化していくかを見ていくものです。展示物の数が凄まじく(200点くらい展示してあるらしい)、見ていて飽きません。時代ごとに見ていくと、最初はそれなりに大きな割合を果たしていた想像の役割が、科学の発展(観察方法の発達と言っても良いかもしれません。もちろんそれに伴う分類の精緻化も重要な役割を果たしています)によって、だんだんと縮小していき、また、それまでとは異なる形で自然を描くことに貢献するようになる様子が読み取れます。木版画から金属板を用いた版画が主流になっていったことも、観察したものを緻密に表現する点で大きな役割を果たしているでしょう

…などと偉そうに言いましたが、訪れたときにたまたま開催していた、担当の学芸員さんによる解説のおかげでより理解できた、と言うべきですね。私自身、大学院生時代に、自然に対するまなざしの変化については(自分の研究の下支えになる知識として)少し勉強していたのですが、とても十分と言えるものではなかったので、今回お話を聞くことができて本当に良かったし、何より面白かったです。芸術の領域と科学の領域をつなぐものとしての絵画(版画)という視点は、目から鱗でした。また、この展示の本題とは外れる展示解説についての質問にも答えてくださってありがとうございました(ご本人に届くかはわかりませんが)

これもまた、これだけ面白かっただけに、学生料金で入れるうちに入らなかったのでが悔やまれますね……


実は、同じところに掲載する展覧会は文字数が大きく偏らないように書く、というルールを設けて今まで書いていたのですが、国際版画美術館の展示があまりに私にとってどストライクだったのでたくさん書きました…これは東京都近代美術館の展示が面白くなかったことを表すわけでは全くないことはご承知ください

まだ社会人になってほんの少ししか経っておらず、研修も終わっていない状況です。これから本格的に働くとなった時に果たして私にどれくらいの余裕があるのか、まだ見えない状況に戦々恐々としていますが、わからないことに対して今から不安になっていてもしょうがないので、気楽に構えていきたいと思います

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