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サイコロ塾レッスンレポート:ウミガメの島編

こんにちは。

8月のサイコロ塾は「運を味方につけよう」というテーマでボードゲームをプレイしています。「運がいい」「運が悪い」それぞれ思いつくところは色々とあると思いますが、ゲームというランダム性のある仕組みの中で、どのようにその「運」と付き合って判断していくか、といったことをウミガメの島を遊びながら考えていきました。

今回詳しいルール説明はnoteの中に書いていないため、ぜひ上記のリンクをご覧ください。

それでは今回もレポートスタートです!


1、「運」について

レッスンを始めるにあたり、子どもたちに「運が良いと思ったこと」と「運が悪いと思ったこと」をそれぞれ挙げてもらいました。

運が良いと思ったこと
・「宝くじ」に当たる
・(閉店間際の)豊島園に行けた
・オリンピックの券が当たった
・あとちょっとで誕生日
運が悪いと思ったこと
・「あたり」が出ない
・信号の赤が何度も続く
・ジャンケンに負ける
・録ろうと思っていたTV番組を録るのに容量が足りない
・イベント申し込みに落選した

ふむふむ、「なるほど」「確かに!」と思う事象がある一方で、「あれ、これは運かな?」と思うものが混じっていませんか。子どもたちが挙げてくれた事柄は、確かに「運」が介入する事象も多くあったのですが、そもそも「運」が入り込む前段階の行動の積み重ねの結果ということもあるように思われました。

世の中の事象は全てが必然ということはできませんが、ある程度「運」と思われるような事象も、よくよく考えてみるとその前のいくつかの事象の組み合わせ、連続体から起こっていたり、あるいはもっと大きな事象の一部だったりということがあります。

今回、「ウミガメの島」のプレイの中では、「運に介入すること」(正確には運そのものに何かしらアクションをしているわけではありませんが)を体験してもらうことを目指しました。


2、ウミガメの島のルールを読もう!

今回から少しだけルール読みの方法を変えてみました。1度全員が一通りルールを読みます。この時間は前回までと同じで、自分なりに理解できないところや疑問点などを見つけるための作業なのですが、このあと、それぞれの子どもに担当箇所を設けてルールを読んでもらうことにしました。

つまり、担当箇所について責任を持ってルールを理解し、ゲームを成り立たせるということです。このようにした理由として、前回までの子どもたちの様子を見ていて、ルール全体を把握する記憶容量がまだ十分でないように思われたからです。もちろん、子どもの中には読んで理解することが得意な子どももいて、そのような子どもは流れが理解できるのですが、多くの子どもが読んでいる途中で、前に書かれた内容が頭から抜けてしまって、集中力が続いていない様子でした。

ボードゲームは、実際に目の前のモノを動かしながら説明を聞いたり、見たりすることで、意外と文章にすると複雑そうなルールが理解できるということがあります。Learning by Doing。やってみることで学ぶのが早いのはもちろんなのですが、あくまで「ルールを読み解く」ことを目標として設定するため、子どもたちそれぞれの負荷が少なくなるように設計してみました。

実はこの方法は、「ジグソー法」というアクティブ・ラーニングで使用される手法を部分的に用いています。元々のジグソー法とは少し狙い(今回の場合、学習者の負荷を減らすため)がずれますが、今後のルール読みでも続けて実践していければと思います。

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写真は、「準備」の部分だけを担当して読んでもらい、実際に準備をしてもらっているところです。いつもは、後半を読むことを諦めてしまっているので、担当箇所に責任を持ってもらうことで少しは奏功したかなと思います。

さて、この方法を取ってなおウミガメの島のルールには理解がしにくい箇所があります。それが、1つ目のサイコロを振ったあと、「任意で続けてサイコロを振っても良い」というルールです。このルールの理解の何が難しいかというと、一連の文章の中に、プレイヤーの選択によって場合分けが生じてしまうというところにあります。

note用_ウミガメの島ruleスライド2.1

書き下したルールでは、意図的にあまり図(分岐矢印など)を用いないようにしています。そのため子どもたちは、全ての文章が一連の流れで語られているものとして理解していきます。ところが上のルールでは、全てを一連の流れとして読んでしまうと、ルールの理解が途端にできなくなってしまうのです。③と④ではサイコロを振らなかったら、それぞれその後の手続きには進まないのですが、なかなか子どもたちが理解することが難しかったようです。実際、この部分を担当した子どもは、「③の途中からわからん」と言っていました。

これは、ルールライティングのまずさでもあるなと思い反省しました(③と④については「振らなかった場合、⑥の手順に進む」と明示すべきでした)。一方で、子どもたちがこのような「文章全体の構造」を理解していく、いわゆる「読み」の技術のようなものの習得に対しても、ボードゲームのルール読みは有効に働く可能性を再認識しました。場合分けによる分岐が頻繁に登場する媒体を、文章として書かれているもので理解していくことは難しいことですが、ぜひ今後も鍛えていければと思います。


3、ウミガメの島をプレイ!

さて、ウミガメの島のプレイの肝はどこかと言われると、再度言うまでもなく、先ほどルールを理解するのに苦労を要した「サイコロの振り直しをするかどうか?」というところにあります。

ウミガメの島におけるサイコロを振る際の重要なルールとして、次の2点があります。


・「サイコロの出た目の合計×振ったサイコロの個数分」だけカメを進めることができる
・振ったサイコロの出た目の合計が8以上になってしまうと、振り出し(イカダ)に戻される

この2つのルールを踏まえた上で、子どもたちは1つ目のサイコロを振って出た目によって、2つ目のサイコロを振るかどうか選択が迫られます。

ある子どもがサイコロを振った際、2の目が出ました。その子どもは、間髪を入れず、その後のサイコロを振ることを見送りました。「ちょっと待って」(つい、言葉が出ました)。みなさんならどう考えますか?「2の目ということは、2つ目のサイコロを振る場合、6が出ない限りは振り出しに戻されることはないから・・・」と自然に考えたのではないでしょうか。

もちろん、それまでのプレイで子どもたちなりに「1つ目のサイコロで1の目が出た時は、次に何が出ても足して7までしかならないから安全」ということや、「4や5が出た時は、次のサイコロの目がほとんどない」ということを理解できていましたので、この選択は少し奇妙に見えました。

しかし、よくよく状況を見てみると、サイコロを振った子どものカメはゴール目前。1以上でも出れば、たまごカードをGETできる状態だったのです。よくよく聞いてみると、これまで何度か振り出しに戻される経験をしたこともあり、確実にカードを取ることを選んだのでした。

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いきなり、少し特徴的だったプレイ内の様子を紹介しましたが、先に述べたように1つのサイコロを振るたびに子どもたちに、「あといくつで8になっちゃうかな?」「8以上にならないためには何と何と何だったら大丈夫?」「その数字は全部でいくつの目があるうちの何個分?」というように声かけをすることで「場合の数」「確率」に関して、体感的に子どもたちに理解を進めるようにしました。

子どもたちも、毎回聞かれたり、実際サイコロの挙動を目にすることで、なんとなく、「今は振った方が良さそう」「今回は振ってはいけない」ということが身についていっていたように思います。まだまだ「確率」という言葉までは知らないまでも、体感的に「運を味方にする」=「運に介入する」ということが理解できたと思います。


4、行動の連続体、選択の結果としての「運」の作用

レッスンの最後に簡単に、どういうときには2個目のサイコロを振る方が良くて、どういうときには振らない方が良いかを子どもたちに尋ねました。

もちろん、それまでの合計が「1」や「6」のときには、取るべき行動は明白です。しかし、「3」や「4」のときとなると迷うところです。実際、子どもたちの意見も「振る」「振らない」で分かれることになりました。

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こういうときにこそ、Agency=行為者性が発揮されます。行為者性を発揮してなお結果は「運」のみが知るということももちろんありますが、少なくとも選択をする場面において、さまざまな状況に対する判断が必要になってきます。(実はその状況すら、(運ではなく)それまでの行動の連続の結果でもあるのですが。)前段で紹介したプレイ場面のように、ゴールが目前に迫っているときだったら?あるいは、もともと振り出しのところにいてノーリスクでカメを進められる場面だったら?誰かのカメの上に乗っているときだったら?

いずれにしても「運を味方につける」、実は「運」が起こす結果には自分たちが少し介入できる余地があるということがゲームプレイを通して子どもたちに感じてもらえていたらと思います。


次回予告

今回はウミガメの島を「運」をテーマにプレイしました。ウミガメの島を「運」を演出する方法としてサイコロが使われていましたが、また違ったものとしてカードの山札を使ったゲームをプレイします。

次回プレイするのは、「インカの黄金」です。プレイヤーのすることこそ、たった2つの選択肢から1つを選ぶというだけですが、そこには確率を加味した上で状況における判断が求められるゲームです。

それでは次回もどうぞお楽しみに!

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