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これはいろいろ反則「アポシック・インフェルノ2016」

メラメラ燃えさかる炎の中に「A」の文字。そんな個性的なエチケットのこちらのワイン。カリフォルニアのレッドブレンドです。レッドブレンド、最近ワインショップの店頭で目にすることも多いです。

カベルネやメルローのような国際品種や、ジンファンデルやプティヴェルドといったアメリカ品種の黒ブドウをブレンドして、それぞれの個性を引き立たせつつ、豊満なまでに熟した果実感と甘みさえ感じるような味わいを生み出し、そして価格はリーズナブル。定義というにはざっくりしてますが、例えるならばBBQに似合いそうな陽気なワインといった印象を受けます。

こちらはジンファンデル主体でシラー、カベルネ、メルロー、プティシラー等をブレンドしているようです。勿論ヴィンテージによりブレンドは変わります。とにかくジンファンデルの個性が際立ったアメリカらしいブレンドですが、同じE&Jガロワイナリーの「アポシック・レッド」と共に「アメリカで一番売れているワインブランド」とのことです。

絶大な影響力を誇るワイン評論家ロバート・パーカー氏が「カリフォルニアワインの中で最高の掘り出し物の一つ」と称賛したとか。

「アポシック・レッド」の中でも限定生産されているのが「アポシック・インフェルノ」。何が違うのかというと、こちらはウイスキー樽で60日間の熟成を加えています。ウイスキーを何年も熟成させた樽です。そこにワインを入れてしまうのだから型破りの反則技です。ウイスキーの熟成香がじわりと染み入った赤ワイン。どんな味わいでしょうか。

そしてもうひとつ反則ポイントが。ラベルに書いてあるのは「ALC16%」。ワインに詳しい方ならあれっと思うかもしれません。ブドウに含まれる糖は酵母によって分解され、アルコールが生成されます。度数はブドウの糖度に比例します。糖度が低ければ糖を使い果たした時点で発酵は終了。糖度が高ければ酵母は力尽きるまで発酵を進めるため度数は高くなります。酵母が頑張って頑張ってもう無理!となる地点がおよそ15%。そのため、一般的な白、赤ワインは11~15%のものが殆どです。

それなのに堂々と16%を掲げるこのワイン。もちろんリキュール添加などしていません。詳しいことはわかりませんが、余程ブドウの糖度が高いのか、それともウイスキー樽に染み付いたアルコールが溶け込んだのか。いずれにしても飲み過ぎ注意、と心して抜栓。

ああ、やっぱり反則ですよあなた。開けた途端に漂う樽香。グラスに注ぐと爆発的ともいえるようなバニラの香り。やや遅れてキャラメルや焦がしたスパイスの香り。もちろんジンファンデルの甘い果実味も前面に押し出されていて、なんてグラマラスなんだろう。ちょっとした背徳感すら感じる味わいながらも、意外に余韻はスッキリしていました。

合わせる食事は少し選ぶかもしれません。むしろ燻製ナッツやくせのあるチーズが良さそう。我が家ではあえて食後に、ウォッシュチーズと合わせたらいつの間にか1本開けてしまいました。16%に少々ビビるも嫌な酔い方は無し。

今回飲んだものは買ってから1年以上は経っていましたが、色味にも退色は見られず、いい飲み頃だったのではないかと思います。現行ヴィンテージはまた違ったブレンドのようですが、いつかまた友人とのワイン会が出来るようになったら持ち込んでみたい面白い1本です。


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