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各発達段階におけるトレーニングの在り方(STAGE7:Training to Win)#15

「バレーボーラーの一貫育成メソッド」 制作の第15回です。

前章ではLTADモデルの発達段階におけるトレーニングの在り方『Learning to Win(勝利することを学ぶ)』について8項目に沿って解説をしてきました。本章では『STAGE7:Training to Win(勝利することを訓練する)』について解説をしていきたいと思います。

STAGE7:Training to Win(勝利することを訓練する)

まずは、LTADモデルにおける第七ステージである『Training to Win』について考えていきましょう。"Training to Win" とは日本語に訳すならば「勝利することを訓練する」となります。

第七ステージを一言で表現するならば、競技スポーツとしての最終ステージであると言えます。つまり、プレーヤーの競技人生におけるパフォーマンスのピークは第七ステージにあると言えるわけです。

このステージにおけるアスリートは前ステージと同様に自身のすべてのエネルギーやリソースを競技に注ぎこみます。そして、コンディションやプレースキル、そしてパフォーマンスを最大化させ、競技人生における最高水準のプレーをすることによって勝利を目指します前ステージ以上に勝利に対するコミットは強くなると言えるでしょう。

また、このステージは先述した通り、競技スポーツとしての最終ステージでもあります。そのため、このステージの終盤では競技スポーツを引退した後のセカンドキャリアや生活スタイルについて考え、引退後の人生の準備を進めることも非常に大切です。具体的には、競技スポーツに取り組んだ経験を社会へ還元することや引退後の自身の生活を充実させる活動などについて考え、前もって準備を進めていくことなどが挙げれます。

それでは、次からは8つの項目に沿って第七ステージ『Training to Win』を深掘りしていきましょう。

VOLLEYBALL FOR LIFE: LONG-TERM ATHLETE DEVELOPMENT FOR VOLLEYBALL IN CANADA p13

Overall Goal(総合的ゴール)

Optimize performance for peaking at selective competitive events
(厳選された重要な試合でピークを迎えるためにパフォーマンスを最適化する)

第七ステージはこれまでのステージと比較し、試合で勝利することの優先度が最高潮に達します。そのため、特に重要な試合に合わせて自身のピークパフォーマンスを発揮できるように調整することが第七ステージのゴールとして設定されてるのです。

Chronological Ages(暦年齢)

Indoor Volleyball ・Males:26~34±  Females:25~32±
(インドアバレー ・男性:26〜34歳前後   女性:25〜32歳前後)
Beach Volleyball ・Males:26~34±  Females:25~32±
(ビーチバレー ・男性:26〜34歳前後   女性:25〜32歳前後)

これまでの暦年齢の目安と比較してみると、第七ステージでは暦年齢の幅が広がっているということに気が付きます。現実のプロの世界を見ていても分かるように、30歳を超えたプレーヤーがトップカテゴリーにおいて20歳前半のプレーヤーのパフォーマンスに全く引けを取らないパフォーマンスを発揮して第一線で活躍している姿を見れば納得いく話だと思います。

一般的に30歳を超えると身体機能の低下は避けられませんが、トレーニングを重ねることでその低下を緩やかにし、試合経験を重ねることでさらにプレーを熟達させていくことができます。こうしたことから、30歳を超えても第一線でプレーすることができるのだと言えるのではないでしょうか。

Focus(焦点)

Professionalization(プロフェッショナルになる)

第七ステージではプレーヤーがプロフェッショナルになることに焦点が当てられています。プロフェッショナルとは言うなれば専門熟練者です。バレーボールプレーヤーに当てはめて考えるのであれば、プレーヤー自身のポジションやプレーロールに関する専門家であると同時にそれらに熟練している人であるということ、それがプロフェッショナルなプレーヤーであるということになるでしょう。

Skill Development(スキル発達)

Achieved only by the best athletes in the world.  The movements can be performed according to the ideal model, and the athlete has developed a personal style that is efficient.  Personal interpretation of movements or personal movements can be combined into unique patterns in response to specific competitive situations.
(世界最高峰のアスリートのみが到達できる。プレー動作は理想的なモデルに沿って行われ、選手は効率的な個人的スタイルを確立している。プレー動作の個人的な解釈や個人的なプレー動作を、特定の競争的な状況での独自のパターンに組み合わせることができる。)

第七ステージでは、プレーヤーのプレースタイルは完全に確立され、常に理想的なプレー動作によって高いパフォーマンスを発揮することができます。また、1点を争うような場面でプレーヤーが自己解決を求められる厳しい状況においても、独自の解決方法を見出してプレーすることができるようになります。

第七ステージでは、第六ステージ同様にゲームライクトレーニングの比率を高く設定し、常に様々な負荷(精神的・肉体的・認知的など)を調整しながらかけていくことが必要です。第七ステージにおけるプレーヤーはそれぞれが個人定なスタイルを確立していますがチームとしてはそれだけでは不十分だと言えます。それぞれの個人的なスタイルがチームとして融合し、相乗効果を生み出すようにしていくことが大切になっていきます。

また、このステージでは短期間でプレーヤーの入れ替えが多く起こったり、チーム作りに要する時間が十分でなかったりすることがあります。そのため、コーチは初期の段階でチームのゲームモデル、そしてプレーガイドラインを簡潔にプレーヤーに共有しておくことが大事だと言えるでしょう。プレースタイルがしっかりと確立したプレーヤー同士がお互いに結びつき、チームとしての自己組織化を進めていくには、ある程度明示化されたゲームモデル・プレーガイドラインがあることは助けになるはずです。

Goal(ゴール)

・ Further development of technical and tactical abilities or playing skills(技術的・戦術的能力、プレースキルのさらなる向上)
・Modeling all possible aspects of training and performance(トレーニングとパフォーマンスのあらゆる側面のモデル化)
・Planned breaks(計画的な休養)
・Maximization of ancillary capacities(付随的要素の最大化)

第六ステージとすべて同様のゴールとなります。第七ステージでは、プレーヤーはこれらのゴールに向かってさらに向上を目指していきます

Discipline Integration(専門分野の統合)

Indoor and beach competitors exist in separate development pathways
(インドアとビーチの競技者はそれぞれ向上を目指して、別々の道を進む)

第六ステージと同様、第七ステージでもインドアとビーチの競技者はそれぞれ向上を目指して別々の道を進んでいくという考え方です。

Periodization(期分け)

Double, triple or multiple periodization
(二つ、三つもしくは複数の期分け)

第七ステージでは、厳選された重要な試合にピークパフォーマンスを合わせることが総合的ゴールで示されています。そのため、トレーニングの期分けについてもこれまで以上に繊細に行われることがあります

Training to Competition Ratios(トレーニングと試合の比率)

70:30

第六ステージ同様の比率となります。

(続く)

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バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。