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ゲームで学び、ゲームを学ぶ(8)-「2対2」の「2本目以内返球」ゲームで何を、どうやって学ぶか-

 前回の記事では「2対2」の特徴を「1対1」のゲームとの比較から説明しました。また「2対2」の1本目返球のゲームを通じて「ゲーム様相」の変遷(攻撃の工夫と守備の工夫が相互に解決しながらゲーム性が高まり、それに伴って必要な手段(技術)が身につく過程)を、攻防の処理のプロセスの視点から紹介しました。今回は、前回の記事で推奨していた「2本目以内返球」のゲームを「味方へパスできる」条件という特徴に焦点を当て、具体的な実践方法を紹介していきたいと思います。

「2本目以内返球」の特徴

 前回の「1本目返球」のゲームに加えて、味方コートで1度だけパスができる「2本目返球」の選択肢が追加されたゲームです。相手からの返球を、そのまま返球するだけではなく「連係プレー」(味方同士で組み立ててから返球すること)が可能になります。最少人数で「連係プレー」を学ぶことができる条件だからこそ、初心者導入の段階からゲームを通じて、様々な技能(「オン・ザ・ボール」および「オフ・ザ・ボール」)を学ぶことができます。学習効果を高めようとすれば「ラリーの要素」(特に、コートの広さ)を選手に応じて慎重に工夫する必要があります。そこで、コートの広さの考え方を、少し詳しく説明していきたいと思います。

「連係プレーを活かす」

(1)コートの広さ

 ゲームの難易度を左右する大きな要素は「コートの広さ」です。特に「連係プレー」の成立は「パス」の成立を意味し、「パス」が成立しやすい基準を考慮しなければいけません。これは他種目でも同じです。サッカー、バスケットボール、野球などにおいても、パスが成立できない・しづらいコートの広さ・プレーヤー同士の距離だと、戦術学習になりません。同様に、バレーボールでもコートが広いほど、選手がボールをつなぐ距離が長くなります。比較的長い距離のあるパスは、体力的な要素、技能的な要素が必要になり、ある程度の時間がかかるものです。そのため、比較的簡単にパスが成立する距離(1、2m程度)を念頭にコートの広さを設定すれば、前提としてラリーが成立することが必要である「戦術アプローチ」が実現できます。

 少し狭い印象かもしれませんが、個人的には「3m×6m」のコートから始めてみるのが良いと思っています。そうすると、守るべきコートが小さいために「動いてプレー」ではなく、あまり「動かずにプレー」できることにつながります。そうすることで、まずは「オン・ザ・ボール」(ボール操作技能)に集中させることが良いと思います。コートが広くなると、初めから移動を伴ったプレーが求められます。将来的には移動を伴うプレーも必要になりますが、最初の頃はボールが簡単に届く範囲で、ゲームができることが大事です。

 また、パスが成立するために必要な距離が短いので、ボールを一旦持つようにして無理やり遠い距離を飛ばすプレーをみかけたことがありません。この2年間の大学授業関係で、初心者レベルの男女あわせて約200名見てましたが、このコート設定ではボールを持つことなく、弾いて飛ばすオーバーハンド・パスが一般的です。私が見た限りでは、全員がボールを持つことなく、弾いてコントロールしていました。

(2)ボールの速度

 また、初心者段階では、ボール速度が高くなりすぎるとすぐにラリーの中断になります。この場合、ネットの高さに加えて、エンドラインまでの距離を工夫する必要があります。なぜなら、エンドラインまでの距離が長ければ長いほど、強打が打ち込みやすくなるからです。つまり、コートの広さ自体が、ゲーム中のボール速度に大きく影響することも理解しておく必要があります。

 さらに、2本目以内返球なので「連係プレー」で攻撃は可能ですが、通常の3本目返球に比べると、1本目に上がったボールを2本目で返球する必要があり、有効な攻撃があまりできません。したがって、決定打になるような返球がなかなか打てないので、自然とボール速度が遅くなり、初心者でもコントロールできる程度のボールの応酬になり、結果的に「ラリー」が成立しやすい状況になります

(3)ボールの接触回数

 コートが小さいほど、1回1回のボールの移動距離が小さくなり、ボールの接触回数が自然と多くなります。例えば、2本以内返球の条件で、1人あたりの面積を同じにして「2対2」(4.5m×8m)と「4対4」(6m×12m)で比較すると、ボール1個につき「4人」か「8人」の違いがあります。そのため、単純に「2対2」の方が、ボールの接触回数は2倍になると思われがちですが、実際にはボールの接触回数は2倍以上になります。なぜなら、コートが広くなると、パスの1回におけるボールの移動距離が大きくなり、ボールが移動している時間が相対的に多くなるからです。

 また、パス距離が大きくなると、パス自体の難易度も高くなるので(パスする方も、パスを受ける方も)、パスが続く確率も下がり、さらにはボールデッド(ボールを拾っている状態)の時間が増えると想像できます。導入段階では、たくさんボールに触れてプレーできる環境を整えること、その点を最優先することが大切です。

▶︎縄田亮太のプロフィール

バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。