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ゲームで学び、ゲームを学ぶ(7)-「2対2」の「1本目返球」ゲームで何を、どうやって学ぶか-

前回は「2対2」のゲームの特徴について説明しましたが、今回は「2対2」ゲームの学習内容について、「1本目返球」ゲームから説明していきたいと思います。

返球条件を変える

 複数人のチーム同士でゲームをする場合、「返球条件」によって、学習できる内容が変わってきます。「返球条件」は1本目返球、2本目以内返球、3本目以内返球の3条件に加え、2本目限定返球、3本目限定返球を加えて5通りです。難易度は相手の返球次第なので一律には言えませんが、本数が増えるほど「判断負荷」が高くなる(判断要素が増える)ので、その点で複雑になります。「2対2」の「1本目返球」ゲームで何を、どうやって学ぶかを、戦術学習の観点から具体的に見ていきます。

何を、どうやって学ぶ?

 1回目返球のゲームであっても、必然的に「守る」(守備戦術)・「攻める」(攻撃戦術)を学んでいるのは、前回で触れました。「戦術学習」を見ていくにはどのような「ゲーム様相」(どのようなパターンでラリーの勝負が決まる傾向にあるか)を把握した上で、その「ゲーム様相」で優勢になる戦術があり、それに必要な技能が身につくものです。

 そこで、木本ほか(2015)が「戦術学習」に着目し、バレーボールと同じ「ネット型教材」を使った授業実践(「2対2」の「1本目返球」ゲーム)を報告したものがあるので、内容を紹介しながら「ゲーム様相」の意味や「戦術学習」のプロセスをイメージしてもらえればと思います。ポイントは、プレーヤーの視点に立つことです。

ゲーム様相

(1)ラリーの継続処理

 最初の段階は得点の意識よりもとにかくボールを落とさないように思考し、ボールを返球している段階です。この段階では「ゲーム」経験から「前後」「左右」「斜め」に分かれてコートを守るという戦術が表れます。これは一番単純な「フォーメーション」と言えます。つまり、導入段階では「守備戦術」が問われている「ゲーム様相」ということになります

 このとき「守備戦術」に必要な技術は「1本目」で相手コートに返球する、つまり「課題」は「ネットの突破」、あくまでも「ネットを超す」ということです。相手コートに返球できるだけでも、それは失点の回避になり、かつ得点になる「ゲーム様相」になります。その必要な目的を達成するための手段として、この段階では様々な手段を用いた「1本目返球」を学ぶことになります。しかし、意識的な返球ではなく、反射的(無意識的)なボレーが多い「ゲーム様相」であり、結果的に「ラリーの継続処理」をしている段階です。

(2)意図的な中断

 「ラリーの継続処理」で自然にラリーが継続し始めると「ラリーの中断」の手段、すなわち少しでも相手がとりにくいボールを返球しようという「意図的な中断」を狙った返球が増えます。つまり「攻撃戦術」が問われる「ゲーム様相」に発展したことを示しています。このとき「攻撃戦術」に必要なのは、意図的なボレー(コントロール)です。ゲームの中で自然発生的に「片手・両手」「高い・低い」「前・横・後ろ」「ジャンプ」の色々な組み合わせのボレーが出現します。特に、ネット近くでのボレーが得点をとるには有効であると気づき、ネット近くに詰めることが多くなります。

(3)劣勢情況からの回復

 攻撃戦術としての「意図的な中断」が多くなると、ラリーが比較的早く途切れるようになります(攻撃優勢)。つまり、守備戦術が問われる「ゲーム様相」に発展したことを示しています。このとき「守備戦術」に必要なのは、役割分担を含むポジショニング(フォーメーション)になります。ネット近くでのボレーが有効であれば、そうさせないためにネット近くに返球しない意図的なボレーが必要になります。これは、劣勢情況になった場合にどれだけ回復できるか、つまり、ラリーを継続処理するために、如何にネットから離れた位置にボールを一旦ボレーして、立て直せるかが必要になります

 このように(1)(2)(3)の攻防の処理のプロセス、つまり「戦術学習」を通じて「ゲーム様相」が進化していくもので、それは「技能」が高まっていることを意味しています。つまり「戦術アプローチ」を実践していくには「ゲーム様相」を把握することも大切になってきます。

【参考文献】木本ほか(2015)ラリーに着目したネット型ゲームの単元開発,日本体育学会第66回大会.

▶︎縄田亮太のプロフィール

バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。