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オーバーハンドパスのハンドリングについて(2/3)-「キャッチ」の判定基準-

オーバーハンドパスのハンドリングについて(1/3)-「持つ」=「接触時間が長い」ではない- の続きです。

「キャッチ」の判定基準について

前回説明の通り、「持ちパス=キャッチの反則」を 「肘の2 way action」(ボールタッチ後に肘を曲げて伸ばす) で定義して判断するのが一番合理的だと考えていますが、ルールやその取り扱いでも 2 way action が問題にされてはいるものの、その定義は曖昧と言わざるを得ません。

2022年度6人制 審判実技マニュアル(JVA審判規則委員会 指導部)には、p18「ボールハンドリング」に
③最初にキャッチしてから投げるという2つのプレー動作を伴うプレーはキャッチの反則である。
と書かれています。

これは、FIVB国際バレーボール連盟のサイトに公開されているルールブックの、
9.3.3 CATCH: the ball is caught and/or thrown; it does not rebound from
the hit.
を反映しており、

同ガイドラインでは、
3. To better understand the text of Rule 9.2.2: A thrown ball involves two playing actions, first catching and then throwing the ball, while playing the ball means that the ball rebounds from the contact point.
と説明されています。

これらを見ると「2 way action」が問題にされていることは分かりますが、「最初にキャッチしてから」とは何か? 何をもって「キャッチしている」と定義し判断するのか? が書かれていないんですね。

「キャッチの反則とはどういうものか?」を決めているはずのところに「キャッチして」と書かれているわけで、「キャッチするとはキャッチして投げることである」ということになり、定義としては成り立たないと思います。

これと、
キャッチを「肘の2 way action」(ボールタッチ後に肘を曲げて伸ばす) で定義し判断する
との違いをご理解いただけるでしょうか?
こちらは、明確に「別の動作」として定義されています。

明確に「別の動作」として定義できないのは、「パス」と「キャッチ」を連続的なものととらえ、接触時間の長さの違い、つまり、「持って投げるを速くすればパスになる」という考えが根強いのかもしれません。しかし、「キャッチとは接触時間が長いことである」と定義すると、どこからを「長い」とするのか基準の設定がとても難しく、恣意的になり、結局「審判に取られなければ反則ではない」ということになってしまうのではないでしょうか?

もっと本来的な話をすると、前回の記事で、「筋腱複合体の力を弱めてバネを柔らかくするとボールの接触時間が長くなるが、肘の動きは 2 way action にはならない」と書いたように、「持って投げる」を速くやるよりも接触時間の長いパスはあり得るので、「接触時間の長さ」で判定することは不合理だと言えます。

「パス」と「キャッチ」を「別の動作」として定義することは可能なので、そうするべき、つまり「ボールに接触してから肘を曲げた場合(および手で完全に止めた場合)キャッチの反則とする」とした方が合理的です。それを人間の目で完全に判別できないとしても、明確な拠り所があるので、基準そのものがブレるということはないでしょう。

ここで、(および手で完全に止めた場合)を付け加えたように、「肘の2 way action」だけで定義できるかどうかについては、検討の余地があると考えています。

「接触時間」で定義する可能性

基本的に、「キャッチを接触時間の長さで判定するのは不合理である」と考えてはいますが、現在はチャレンジシステムがあるので「チャレンジシステムを使って**秒以上の接触が確認されたらキャッチと判定する」という方法はあるかもしれません。

これが実現すれば、意図的に持つことができる選手も「大事な場面で持ってしまうことのないように練習する」しかなくなり「持つことはトップレベルでは使えない技術」というのが明確になるでしょう。そうなれば、やがてはアンダーカテゴリーでも使われなっていくのではないでしょうか?
不合理ではありますが、一番現実的かもしれませんね。

オーバーハンドパスのハンドリングについて(3/3)-「トスを溜める」の中身- へ続きます。

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バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。