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【小説】 亮介さんとあおいさんとぼくと  17/30

《7 あおいさんとぼくと》

ぼくとあおいさんをむすびつけている五條。
どこの田舎でもいわれることだが、アピールポイントは自然が豊かであること。

ただ、自然が豊かとアピールするには自然さは物足りないかもしれない。ぼくのすんでいた地域は、僻地とよべるほどの田舎でもない。れっきとした田舎のみなさんには申し訳ない。郊外とよぶにふさわしくスーパーやドラッグストアやファミレスが立ち並んでいる。


2010年の年末、あおいさんといっしょに、電車でかえることにした。三田駅から、福知山線の丹波路快速にのって、大阪駅にでる。大阪駅から環状線にのりかえて、新今宮駅まで出て大和路線で高田駅まで行き、また和歌山線にのりかえる。

そこから、あおいさんは、北宇智駅へ。ぼくは五條駅へ。そんなはずだった。

しかしその日、あおいさんは、ぼくの実家によって泊まっていった。以前に亮介さんと三人でドライブをしたときに、いっしょに泊まっていったことがあった。

そのときに、うちの両親も亮介さんとあおいさんのことを気に入ってくれていた。ちなみに、その時の亮介さんとあおいさんの関係は、どっちつかずの関係だったから、仲のよい三人組としておじゃました。


今回は、年末の帰省という事情もあって、亮介さんは岐阜に帰るので、二人だけだった。家族もそのことについてはとくに触れることもなく、我々を受け入れてくれた。ただ父親の「あおいちゃんが彼女だったらいいのにね」というひとことは、ぼくをなんともいえない気持ちにさせた。


翌朝、すこし散歩をするために、近くの公園に出かけた。

「わたしのことどうおもってる?」

「よくしてもらってる先輩だとおもってます」

「さすが優等生、いい回答だね。じゃあ質問をかえましょう。わたしは、どんな女性にみえますか?」

「亮介さんの元カノ」

「そういう答えがほしいわけじゃないの」

「え?」

「まあいいわ。あなたの気持ちはよくわかっているつもりだから。さて、ヒントです。わたしは今、なんだか疲れて少し眠いです。ですが、まだおうちには帰りたくありません。では、ここから導き出される結論を述べよ」

「え?えーと、まだ朝ですけど、もしかして、もしかしますか?」

「もしかするかどうかは、うーん、なんだろう、うまく説明はできないけれど、となりにいてほしいというか・・・めんどくさいわ。いいわ。もしかすることにするわ」

「え、あっ、えーと、了解しました。じゃあ、お決まりのやついわせてもらいますね。『じゃあ、すこしあそこで、休憩していこうか』」

「わざとらしい言い方ね。ふーん、きみは、そうやって女の子を連れ込むのね。なんで最後のところだけタメ語なんだろうね」

「だまってついてきてくださいよ」

そうしてセオリー通り、そこからあるいて、五分ほどでいけるメルヘンチックなお宿に彼女をお連れした。


ーーー次のお話ーーー

ーーー1つ前のお話ーーー



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