西海子(さいかち)

無断転載は禁止です。 投稿されているお話の朗読をご希望の方は、当方までご一報(Twit…

西海子(さいかち)

無断転載は禁止です。 投稿されているお話の朗読をご希望の方は、当方までご一報(TwitterのDMが開放してあります)の上で行ってください。

記事一覧

#ドリーム怪談 投稿作「彗(ほうき)のユキオガミ」

 外套を着込み、一面の雪の原を弟の手を引いて歩いていた。 「あにさま……さむい……」  弟・美雪は集落の宮司に着せられた着物に草履姿なので、さぞや寒かろう。だが、…

#ドリーム怪談 投稿作「入ってもいい山」

 家の前は山、ちょっと歩いて行くと、また別の山。  僕はそんなちょっとした田舎に住んでいた。  春休み、親戚がうちに集まっていた。いとこ達も一緒だ。  ゲームして…

3

#ドリーム怪談 投稿作「七歳までは」

 子供は“七歳までは神のうち”と言うのは民俗学ではよく聞く話ではないでしょうか?  諸説ありますが、昔は幼子が七歳まで生きるのは大変なことであり、まだ神様の領域…

4

【創作怪談】死神の指先

 部活の居残り練習で遅くなり、辺りはもう真っ暗だった。  家へと急ぐ俺は、チカチカと切れかけている街灯に「さっさと直してくれればいいのに」と思いながら、暗い道を…

#ドリーム怪談 投稿作「お堀端の待ち人」

 お城の周り、お堀端通りを通る時、目を引くものがある。  朱塗りの橋の傍らに立つ女性だ。  落ち着いた雰囲気の振袖を纏った彼女は、何故か雨の日にだけ橋の傍らで傘を…

#ドリーム怪談 投稿作「神域に待つ鬼」

 S県にある、とある集落に名もなき比売神をお祀りする神社がございます。  かつて、人々の信仰は篤く、神社には盛んに寄進が行われて、それに応えるように集落は良く栄…

#ドリーム怪談 投稿作「いないって言わないで」

 学校というのは、ある意味で閉鎖環境だ。  だからこそ、怖い話、七不思議、怪談……そういうものが娯楽として消費される。  でもそういうのはただのお遊び、誰でも嘘だ…

#ドリーム怪談 投稿作「彗(ほうき)のユキオガミ」

 外套を着込み、一面の雪の原を弟の手を引いて歩いていた。
「あにさま……さむい……」
 弟・美雪は集落の宮司に着せられた着物に草履姿なので、さぞや寒かろう。だが、私は心を鬼にして小さな声で言った。
「辛抱しなさい、お前はこれから神様にお仕えしに行くのだから」
 私の声に弟は少し俯いて、震える体で必死に雪原を歩んでいった。
 ――今年は冬の訪れを前に雪が降り始め、夏の長雨もあって冬を越せるだけの作物

もっとみる

#ドリーム怪談 投稿作「入ってもいい山」

 家の前は山、ちょっと歩いて行くと、また別の山。
 僕はそんなちょっとした田舎に住んでいた。
 春休み、親戚がうちに集まっていた。いとこ達も一緒だ。
 ゲームして、菓子を食べて、だらだらと過ごしていたけど、やっぱりそんなのにも飽きてきて、僕達は山に遊びに行く事にした。
 その山は、入ってもいい山だ。
 入ったからって誰に怒られるわけでもないし、山の中に古びた神社だの寺だの祠だのがあるわけでもない。

もっとみる

#ドリーム怪談 投稿作「七歳までは」

 子供は“七歳までは神のうち”と言うのは民俗学ではよく聞く話ではないでしょうか?
 諸説ありますが、昔は幼子が七歳まで生きるのは大変なことであり、まだ神様の領域にいる為に容易く死して神様の元に帰ってしまう、というある種の諦観なども含まれていたのでございましょう。
 数えで七歳を超えると人間として生きていく事になる、というのも、そこまで生きられたら一安心、働き手としても数えられるという事でもあったの

もっとみる

【創作怪談】死神の指先

 部活の居残り練習で遅くなり、辺りはもう真っ暗だった。
 家へと急ぐ俺は、チカチカと切れかけている街灯に「さっさと直してくれればいいのに」と思いながら、暗い道を少し早足で歩いて行く。
 ふと、最近、部活内で話題に上がった変な話が脳裏を過る。
「バスケ部のやつ、また怪我したんだってさ」
「またかよ? 一週間前にも一人、怪我したって聞いたぜ?」
「それがさ、怪我する前にそいつらが言ってたらしいんだけど

もっとみる

#ドリーム怪談 投稿作「お堀端の待ち人」

 お城の周り、お堀端通りを通る時、目を引くものがある。
 朱塗りの橋の傍らに立つ女性だ。
 落ち着いた雰囲気の振袖を纏った彼女は、何故か雨の日にだけ橋の傍らで傘を差して佇んでいる。
 差している傘は、着物に合わせたのだろうか、和傘だ。現在では雨の日にはほとんど使わないというから、余計に彼女の姿は目につく。
 降りしきる雨の中、物憂げに立つ彼女。
 晴れた日には姿を見せることがない彼女。
 雨のお堀

もっとみる

#ドリーム怪談 投稿作「神域に待つ鬼」

 S県にある、とある集落に名もなき比売神をお祀りする神社がございます。
 かつて、人々の信仰は篤く、神社には盛んに寄進が行われて、それに応えるように集落は良く栄えておりました。
 そんな集落にある時、山から鬼が現れ、牛馬を襲い、人を殺め、散々に荒らしまわったのでございます。
 宮司は神社にどっかと居座った鬼に懇願いたしました。
「どうかお見逃し下さい。これ以上は私どもも立ちゆきませぬ」
 鬼はそれ

もっとみる

#ドリーム怪談 投稿作「いないって言わないで」

 学校というのは、ある意味で閉鎖環境だ。
 だからこそ、怖い話、七不思議、怪談……そういうものが娯楽として消費される。
 でもそういうのはただのお遊び、誰でも嘘だってわかってて、だからこそお話として楽しめるもの。
 私はそういうのに興味はない。何の害もないものだって分かってるから。
 授業中、私は一番後ろの廊下側の席で、ドアに設えられた小さな窓から廊下を眺めている。
 ――いる。
 またいる。
 

もっとみる